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小説うめこシリーズ

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ネタ元になった「うめこ@猛禽類の社畜 」さまより、公認をいただきましたので、ここに「うめこシリーズ」として、マガジンにし、もっと多くのうめこさんを知ってもらうように頑張ります。
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記事一覧

バイバイガール

うめこさんがいるから頑張れる。 あの日、雨の中行き場を失った僕を拾ってくれたのは、 うめこさんと言う人。 どうしたの? うん、どうしようもないんだ。 でも、この雨の中ここにいてもしょうがないでしょう? 行くところがないんだ。 仕方がないわね、家に来る? うん。 アパートの一室、きちんと片付いた部屋で、体をふいていると、 こんなモノしかないけど、たべる? うん。 ここから新しい日々が始まった。 相変わらず、うまくいかないことが多いけど、何とか生きている。 顔を見合して、

メイと呼ばせる女 外伝(1)

おひかえなすッて! 手前、生国と発しますは、 房総のさびれた漁村で生まれました。 房総、房総言いましても、恥ずかしながら小せい街と海山で育ち、 縁あって東京は新宿にたどり着きました。 柳川組の木村の兄貴に拾われ、 佐々木の兄貴の下で任侠を学んでいる 佐藤壮一と申しまㇲ。 自分、自慢じゃありませんが、頭には何もありません。 ただただ、木村の兄貴の任侠を目指していまㇲ。 人呼んで房総の壮一と申しまㇲ。 うーん、房総の壮一じゃ決まんねぇなぁ。 もっとカッコいい

他愛もない会話で今夜も

「珍しいジンが飲めるのよ。」と、 うめこさんから電話があったのが午後7時、 仕事も一段落して、帰ろうかとしている時だった。 場所は広島駅の近く、Craft Bar 196 と言うお店らしい。 きっと今夜も強いお酒を飲んでいるのだろう。 さっさと、机を片付けて広島駅に向かう。 扉を開けると、右手をひらひらと蝶のように振り 「ここよ、ここ。」 左手でグラスを持ち、並々とはいっているのはジンロックだろう。 「こんばんは、何を飲んでいるのですか?」 「えぇと、どこかの島のジン、

安い酒場のカウンターでブルースを

安い酒場のカウンターに突っ伏して、 思い出と言う酒に、終わった愛を流し込み、 真っ赤なブラッディマリーを飲み干すと、 「お客さん、お待ちなっていた方が来たようですよ。」 とバーテンダーが声をかける。 酔っぱらった頭で、振り返るとそこには、愛が立っていた。 遠い雷鳴の様に、悲しみに悲しみに打ちひしがれて、 うつむいた俺に、 「終わってないわ、終わりにしないで。」 そう言いそっと肩を抱きしめる。 酔っぱらった考えが口に出る、 「まるで、ブルースの様だ。」 「いいえ、これはロマンス

うめこ 18歳、夏(3)

そう言えばご飯を食べて歯磨きをしていないのを思い出し、 「歯を磨いて良いかしら?」と聞くと 「そうだね。僕も歯を磨くね。」と、二人並んで台所で歯磨き。 どきどきしながら、これから佐藤君と一つになると思うと、 好きという気持ちがあふれそう。 後ろで、ミニコンポから聞こえる音楽に、 「何と言う曲ですか?」 「これ、The Police と言うグループの Every Breath You Take と言う曲。」 「どんな意味なの?」 「僕はずっと君を見ているよって言う歌かな。」

うめこ 18歳、夏(2)

神社でのデートの後、クラブが終わり、皆が帰った学校の 部室で二人きりでたくさん話をしましたよね。 映画の話が多かった気がします。 必殺!とブレイクダンスのどちらが先に上映されるとか、 ぴあをめくっては、手が重なったり、 マッチと明菜の恋愛映画が来年早々には見れるらしいとか、 来年の話をしては、照れていたのを思い出します。 帰りには、手を繋いで駅まで肩を並べて歩きましたね。 そう言えば、プラネタリュムにも行きました。 暗い中、星を見上げて、キスしてくれたのが、 初めてのキスで

うめこ 18歳、夏(1)

高校を卒業して、東京の杉並区にある短期大学に  合格したうめこは地元から身の回りのものだけを持ち、  東京で住むところを探していた。  高校の先輩のつてで、東中野の風呂なしのアパートを見つけ、  早速、そこに住むことにした。   短大まで、電車と徒歩で約30分、安いだけが取り柄のアパート。  それでも、初めての一人暮らし、  希望に満ちた日々が始まる予感でいっぱい。  短大の授業は月・火・木・金曜日は 9:00 からで、 水曜日は10:40 から 1 時限だけと言う、 満員

Bar KT's TAVERN で飲みましょう

早稲田神社の夏越祭の前日、うめこさんに電話をする。   「Bar KT's TAVERN で飲みますので、会えませんか。」  お店に来る前に、早稲田神社に寄り厄落としをしてきたが、  染みついた厄が全て落ちたかわからない。  うめこさんに会うのだから、厄は無い方がいいに決まっている。  そんなことを思い厄落としをしたが、 煙火の火薬のにおいがついてしまった。  お店の扉を開けて、のぞき込む。 うめこさんが、呼ぶようにグラスを上げる。  隣に座って、 「何を飲んでいるのですか

メイと呼ばせる女(6)

池袋の斧頭幇の事務所の1階にある中華料理屋、  福建飯店で食事中の斧頭幇に新宿怒涛会のチンピラが  チャカを撃ち込んだ、とニュースが言っている。   それを見ていた組長が、  「また厄介ごとが増えた。」と言いながら、 新宿怒涛会に電話をする。  「おう、悪いな。 古賀の会頭を呼んでくれるか?」  電話の向こうで、おめえは誰だと怒鳴っている声が漏れ聞こえる。  「俺か? 柳川組の黒部だ。」  電話の向こうで、慌てている様子。  「おう、久しぶりだな、この間はうちの若頭が  おた

メイと呼ばせる女(5)

池袋北口のはずれ、迷路の様なションベン臭い路地の途中、   壊れて点滅する中華屋の看板のわきの階段を上がった 3階のどん詰まりにある福建省の黒社会、斧頭幇の事務所。 中国人に殴られてボロボロの龍が血を流して倒れている。 行先を無くした龍が、おねーちゃんをスカウトして 売ろうとしたら斧頭幇の関係した女性で、うちの事務所に 「你的小流氓招惹我们的女人! (おたくのチンピラがうちの女の子にちょっかいを出した!)」 と、電話があり、 多少中国語が分かる自分が話す。 「那个人是谁?(

誰かと飲みたい夜もある

一人、BAR BUTLER と言う、  ジャズバーでメーカーズマークをロックでグラスを傾けている。  流れているのは、Miles Davis の Walkin' だ。 扉の開く音がした。  扉の方を振り向くと、白いストールと、  漆黒のロングドレスの裾をなびかせ、ピンヒールを響かせて、  うめこさんが入ってきた。  「うめこさん、これから電話をしようとしていたのだけど。」 聞いているのか、聞いていないのか、 「あぁ、表は雪よ。  多分、電話がかかって来そうな気がして、出て来た

梅花、雨の中そぼろ濡れる

東莞市の夜の街、樟木頭鎮には有名なお寺も有名な公園もなく、 あるのは、裏さびれたカラオケとサウナだけ。 香港からのエロ親父から、お金を巻き上げて成り立つ街。 そんな小さなカラオケが乱立する中心部から少し外れた 川沿いにあるのが「ホテル ビーナス」、 一泊、130元、日本円にして1,700円程度の安宿、 主な客はカラオケでお持ち帰りした 小姐と寝るカラオケの客。 なので、昼間もそれなりに客はいる。 酒店「ホテル ビーナス」にほど近い、 この辺では中規模のカラオケ店である「天堂

課長 志摩うめこ 35才 (2)

広島の駅から、二人並んでバスの座席に座ると、  「大丈夫かなぁ?」  「えっ?」  「いや、お土産はうめこさんの言うように、  東京駅で買ったけど、喜んでもらえるだろうか?」  「大丈夫よ、うちの親はそれ好きだもの。」  「そうかなぁ、心配だなぁ。」  家の近くのバス停に着くまで、汗を拭きながら、  彼は何時までも心配だとつぶやいている。  彼の手を引いて、家の玄関まで来て、  「ちょっと待って。」と言い、ネクタイを締めなおして、  ぎゅっと手を握るのを合図の様に、  「ただ

ももこ、28歳の夏(1)

電話機をガラステーブルに置いて、善ちゃんの電話番号をプッシュする。 「あ、俺だ、俺、吉田だよ。 なぁ、昨夜、久々に大学の同期と集まって、 石神井公園の居酒屋で飲んだんだよな?」 「そうだよ、飲み足らないって言って、石神井の駅までの間で、 3軒梯子して、それから四人で新宿のパラダイスで飲んでいただろう?」 「いや、新宿の記憶が全くないなぁ。 それもだけど、ベッドに女が寝ているんだ?」 「はぁ?いい女か?」 ベッドの夏掛けがずれてすらりとした足があらわになる。 「なぁ、お前知らな