鍼って痛くないの?〜いたいのいたいの飛んでいけーが効く科学的理由〜
「鍼って怖いイメージあるよ、痛くないの?」と聞かれました。
分かります、刺すというイメージだけで恐怖心呼び起こす人もいるでしょう。
もちろん下手くそな鍼灸師がやると痛いですが、普通の鍼灸師は痛みを感じさせないですし、上手な先生だといつ刺したのか分からないぐらいです。
疼痛改善が強みの鍼灸師として、その仕組みを解説していきます。
人体の神経の種類のお話
体の各場所を働かせるための回路、神経。
この神経は大きく分けて三種類あります。
①自律神経
②運動神経
③感覚神経 の三種類です。
①自律神経
基本無感覚で意識にのぼらず、自律的に働く神経の総称。
内臓や心拍血圧、発汗のコントロールなど生命維持担当します。
交感神経と副交感神経の相互バランスで調整されており、季節の変わり目についていくのが苦手。
②運動神経
筋肉を動かす神経。
細かい動きが必要な筋肉程、沢山の神経が通い動かします。
使えばそれだけ発達して「運動神経がいい」状態に。
③感覚神経
痛覚(辛み、痒みもこちら担当)、温冷覚や触覚、マニアックなところでは関節角度から体の部位がどこにあるか判断する位置覚なんていうのも。
痛覚がある理由
痛いのは好ましくないことですが、
(これを書いてる私も今リアルタイムで帯状疱疹の痛みに苦しんでいます苦笑)
感覚神経の中では痛覚が一番分布数が多く、感覚鈍麻になりにくいです。
これは痛みを感じさせるような時は、出血や炎症など悪化させると生命の危機に繋がることが多いため、痛覚で対処を促して自己保存する大切な働きを担っています。
痛覚 VS 触覚!?
そんな大事な役割のある痛覚神経ですが、神経の太さでいうと触覚神経より細く、触覚のより強い刺激に上書きされやすい性質を持っています。
これはゲートコントロール理論(1965年)といいます。
誰に教わったでもなく私たちはお腹が痛いときや腰痛膝痛など、痛いところをさすります。
お母さんは子供が痛いと泣くときに、さすりながら痛覚を和らげつつ、「いたいのいたいの飛んでいけー!」と気を紛らわせ、半ば暗示をかけてあげることで子供の痛みを楽にしているのもこれです。
刺す前に触覚を刺激
鍼を刺す前のアクションとして、鍼灸師は必ず患部を指先で揉みほぐします。
その皮膚の過剰な緊張を取り除き、ゲートコントロール理論で痛覚を鈍らせて、鍼が入っていく痛みを和らげるためです。
これをしっかり行い、日本の鍼(和鍼)の特徴である鍼管でしっかり押さえて皮膚をたるませずピンと張らせた状態にすると、細い鍼でも力学的にも無理なくスムーズに入り痛みを感じさせないようになっています。
もちろん感受性の違いもあり、優しい刺激でもキツく感じるような方もいらっしゃいます。
その場合は鍼を刺すのでなく、撫でたり押したりする専用の鍼を使って刺激を与えます。
中国鍼は痛い!?
中国発祥の鍼灸ですが、日本の鍼と比べ中国鍼は痛いことが多いです。
それは中国鍼は鍼管を使わないため、皮膚に張りを出しづらく、その分刺す時に鍼に太さが必要となるためです。
鍼が太ければ痛覚への刺激も強くなるため、痛みも感じやすくなってしまいます。
また、民族性の性質もあると思います。
もちろん一概には言えませんが、全体的な特徴として日本人の方が感覚が細やかな傾向が強いです。
鍼灸師の教育として、より細やかな心配りや配慮をしながら施術することをスタンダードに学びますので、痛みを感じさせにくいのだと思います。
余談ですが、中国のお金のある方は日本人の鍼灸師を選ぶそうですよ。
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