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身体はすべてを分かってる

水を売りつけようとしている女に出会った。

都会の片隅のカフェは話題に事欠かない。喧騒からの隠れ家なんていう表現をよくみるけど、暗ければ暗いほど何かを隠せている。

出会ったというより、盗み見ていた。隣で2人の女性に対してハッキリ顔の美人が水の説明をしている。詳細はちょっとわからないけど、とにかく説明している。イタリアのどっかで取れた温泉水で、これさえあれば肌もピカピカ、掃除に使ってもピカピカ、ついでに体も心もピカピカ〜ってな感じで。言葉は巧みで、うまい具合に考える間を与えずに話まくる。「それにはなんかエビデンスみたいなものありますか?」という問いに、「ありません。感じていただくのが1番ですから。」

おいおいおい。

その美人は、その水で換気扇がピカピカになったのを見て、こんなに人って感動できるんだ!と思って使い始めたらしい。そんな換気扇ピカピカになる水、身体に取り込みたくないけどなぁ。

そう思いながらも聞いていると、話を聞いていたうちの1人が「それにしても10リットル一万五千円は高すぎるって。私はいらないから帰る」と言い出した。するともう1人は「うん、確かに高いけど...かなり良さそうだし、私は残るわ。」と言ったのである。その光景をニコニコ顔で見つめる水美人。そのとんでもない言葉に答えずに出て行く帰ることを選択した女。ああ本当のホラーを見た、と思った私もソソクサと店を出た。


こうやって揶揄するみたいに書いてしまったが、こういうものを真っ当から否定しようというのではない。本当にこれがいいなら取り入れればいい。ただ、「これさえやってればいい」は、人間の身体にはないのだ。これだけが確かな真実だった。

ずっと前から周りに偏った人しかいなかったのでいろんな例を見てきた。ある人は日本でヴィーガンという呼び名が出てくる前から卵さえ食べなかったし、ある人はコンビニのパスタサラダに入っているヒモみたいなキャベツでさえ嫌がって、肉と炭水化物で生きていた。ある人は、土に触れてる部分を食べる野菜(たまねぎとか、ニンジンとか)だけは食べられないというかなり変わった考えの人もいた。

アロマの世界に傾倒していたり、物にこだわったり、石を集めたり。そういう人もたくさんいた。

でも、どんな人も、自分の体に合っていると堂々としている人は何時だって健康でピカピカだった。ピカピカな人は、自分がどうやったら元気かを身体で覚えているような感じで、その人なりの食生活や習慣は元気を思い出させてくれるお守りみたいなものだった。だから、他の人が真似しても決して同じ結果にはならないし、それを知ってるから無理な勧誘もお勧めもして来ない。

私もこれに気付くまでは、誰か女優さんや周りの綺麗な人を真似してみたがことごとくうまくいかなかった。なので、しかたなく一つ一つ確認して試すことだけをした。科学のものも、ナチュラルなものも偏見なく、自分の身体に聞きまくった。結果、元気を思い出させてくれるものばかりが家にある。むくみを取るアロマオイルだってあるし、中国にしかない山椒の効いた辛いピーナッツだって欠かせない(たぶんすごい農薬だと思う。)食事バランスにしても、生野菜を食べて体を冷やすより、青汁やスムージーでサクッと取る方が体に向いている。毎日肉を食べないと元気でないし、ご飯は絶対に白米。入浴剤は塩とかのナチュラル派より、ゴリゴリの科学の発汗系。自然もサイエンスもごっちゃ混ぜ。でも全部身体に向いていると、一つ一つ確かめたものだし、なんだか現代人っぽいなぁと満足だ。そしてどんどん肌もピカピカに健康になっている。不思議。

「これさえあれば」は、やっぱりないのだ。

あの水を売られてる方の人にそれだけはコッソリと教えてくれば良かったかなぁ。

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ちぃころ
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