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PMF後のプロダクトと向き合った名も無き事業開発
CHILLNNの鈴木(@kazkndaz)です。
タイトルの通り、名も無き事業開発として、PMF後のtoB向けSaaSプロダクトに対してどんなアプローチを行ってきたのかをお話しします。
社内外で色々な動きをしてきたので、備忘録的にまとめさせてください。
割と長いのでご注意を!
この記事はこんな方におすすめ!
・事業グロースに関心がある方
・組織の仕組みづくりに関心がある方
・CHILLNNについて詳しく知りたい方
要約すると…
・CHILLNNはプロダクトとして別のフェーズに移行するターニングポイントであること(PMF→GTM/グロース)
・そのための一つのチャレンジとして「伴走型カスタマーサクセス」という新たな取り組み
・カスタマーサクセスの幅が広がる=プロダクトで関われる期間が長くなる
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鈴木 和師(すずき かずし)
2019年、株式会社水星(旧L&Gグローバルビジネス)に新卒入社。その後、自社運営ホテルでのホテリエを経て、宿泊施設向けSaaS「CHILLNN」の立ち上げに従事。
現在は事業・予算計画の策定やレベニューマネジメントを担当。
CHILLNNの現状
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CHIILLNNは宿泊事業者向けにホームページやSNSから自社集客の受け皿となる「直接予約エンジン」と呼ばれる領域のシステムを提供しております。
主に小中規模の宿泊事業者様にご利用いただいており、こだわりを強く持ち、あらゆる体験をお客様へ提供したいというオーナー様とお話しさせていただく機会が多くあります。
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では、現在のプロダクトがどういうフェーズかというと、よく「フィットジャーニー」というフレームワークで表されることが多いですが、以下の図の「フェーズ4:PMF」を達成し「フェーズ5:GTM」に移行していく状態と言えます。
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現在、利用施設の増加による線形成長とチャーンレートの2%以下の維持ができており、プロダクトが市場に受け入れられている状態と捉えております。
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今後、我々は長期的にtoB SaaSで構築した「こだわりを持つ宿泊施設」のネットワークを土台として、さらなるスケールを実現するための事業戦略を描いております。
そのためのスタートとなる2024年に向けて、新たな準備を進めており、その準備の一部分をお伝えできたらと思います!
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具体的に取り組んできた業務
SaaSは至ってシンプルです。
『できるだけ低コストで顧客獲得をし、どれだけ長く高く利用していただけるか。』
収益の健全性の計測指標として、以下が挙げられます。
LTV (Lifetime Value)
サービスの継続契約を通じて、顧客から企業にもたらせれる利益
CAC (Customer Acquisition Cost)
顧客一人あたりを獲得するためにかかったセールス及びマーケティング費用。
LTV / CAC
顧客一人あたり、または事業の最小単位(1ユニット)あたりの収益性を見る指標。
現在、私がメインで取り組んでいる業務は予実管理とオペレーション業務(マーケ、セールス、カスタマーサクセス)です。
今後、それらのベース業務に加えて、プロダクトの収益性の向上を見込めるよう、カスタマーサクセス文脈で新たな動きをしていきます。
アップセル/クロスセルメニューとして『伴走型カスタマーサクセス』を展開します!
これにより、より長いスパンでお宿さまのサポートが可能となり、LTVの向上と宿のライフステージに合わせて、幅広いサクセスの実現が可能となります。
アップセル/クロスセル 『伴走型カスタマーサクセス』
大きな背景として、CHILLNNはグループ会社である株式会社水星の運営するホテルと協力体制を敷きながら、日々開発しており、水星とナレッジシェアを行いながら、同じオフィスで活動しているという実態がございます。
特に、新たなホテル開発をはじめ、ブランドプロデュースをメインに行っているプロデュース事業部とはシナジーを生み出すことのできる関係性にあります。
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CHILLNNとプロデュース事業部は同クライアントに向けて、共同のPJTを推進することも多々ありますが、今後さらにプロデュース事業部と協力体制を敷くことでより深いサクセスとシナジーを生むことができると考えました。
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首尾一貫の伴走型カスタマーサクセス
構想段階から運営段階に渡って、事業者様のどんなフェーズからでもサポートに入れるよう、水星プロデュース事業部と協力体制を敷きながら、宿のライフサイクルに沿った首尾一貫のサポートメニューを構築します。
既にプロデュース事業部では、一貫性を持ったサポート体制を構築していたので、そこにCHILLNNが加わることで、運営開始後のオペレーション改善やデジタルマーケティング支援など、収益性の高い理想的な運営体制の構築に向けて伴走させていただくようなメニューの提供が可能となります。
やったこと① 「ビジョン→戦略」
まずはじめに、プロダクトのグロースマップを描くためにビジョンを策定しました。
今まで「ARRX億のプロダクトを作る」といった定量的な目標はありましたが、それが達成された先にどんな未来が待っていて、それを達成した結果の未来では誰が喜んでいるのか。
「この会社がこの世界に何をもたらすのか。」それは僕にとっては大きすぎたので、「このプロダクトはこの世界に何をもたらすのか。」というマーケットに対しての視点での言語化をしました。
以下、アウトプットまでにアクションしたざっくりとしたフローです。
マーケットビジョン⇒ターゲットの再解釈⇒ターゲット別のプロダクトビジョン×サクセス定義⇒予算計画という流れになります。
社内共有用のnotionのスクショなので、あまり綺麗ではなくすいません…。
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・INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント
・EMPOWERED 普通のチームが並外れた製品を生み出すプロダクトリーダーシップ
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既にSaaSを提供しているロイヤルカスタマーにヒアリングインタビューを実施
↓
ターゲットを再解釈し、より詳細にセグメンテーション
↓
評価要素を定義して、注力するターゲットの優先順位を確定
⇒ これにより「マーケ→セールス→CS」までのオペレーションに一貫性が生まれました。
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この新しいクロスセルメニューで2つの目的を達成します!
1顧客あたりの単価向上
1顧客の別のライフステージへのアクセス=サクセスの幅を増やす
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中期でみると、BtoCネットワークを構築および拡大する時、そこに並ぶホテルの開業時からのサポートが可能となるため、商品の質へのアプローチが可能となります。
(既に別軸でBtoCネットワークの構築のための動きもしております!)
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これらを構築した上で、アップセル/クロスセルメニュー『伴走型カスタマーサクセス』の必要性について、チームで共通見解を持ちながら、推進しております!
以下はおまけですが、ビジョンを策定したことで、予算計画に沿って採用戦略も立てることができました。
これにより、HRアクションも凄く明確になったので、同時並行で押し進めています!
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やったこと② 「ターゲットの見直し」
※上述したビジョン策定における『❸ターゲットの再解釈』に含まれる内容です。
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既にSaaSを提供しているロイヤルカスタマーにヒアリングインタビューを実施
↓
ターゲットを再解釈し、より詳細にセグメンテーション
↓
評価要素を定義して、注力するターゲットの優先順位を確定
⇒ これにより「マーケ→セールス→CS」までのオペレーションに一貫性が生まれました。
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CHILLNNは2020年4月のサービスのプレローンチからはじまり、約800施設のお宿さまにご利用いただいているシステムです。
現在ご利用いただいている施設様を対象に「収益性の高い理想的な運営体制」の実現において、必要な変数や優先順位は何か?」この問いに対して、事前に仮説構築を行い、明らかにするためのインタビューをCHILLNNご利用施設様に対して、実施しました。
主に以下の変数と運営形態や規模感によって優先順位が変わることが明らかになったため、それに合わせてサクセスメニューを構築しました。
稼働率
直接予約比率
リピート率
その他にも、クオリフィケーションと呼ばれる顧客の種類分けを利用施設とlead顧客を対象に行いました。それにより明らかになったことが以下です。
「こだわり」という共通項のもと、運営形態によって提供価値が異なること
利用施設の70%以上が10室以下のお宿さまであること
新規開業施設様が新規leadの50%を占めること
小規模事業者さまのほとんどが独自ネットワークを築いていること
これにより、CHILLNNが構築したネットワークとプロデュース事業部の一貫したサポートメニューを組み合わせれば、開業前の段階から幅広いタッチポイントでのサクセスを提供できることがわかりました。
やったこと③ 「効果検証」
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【一貫性のあるユニークなブランドの創り方 導入編】
効果検証とナレッジシェアを目的として、グループ運営ホテルの香林居の支配人とプロデュース事業部のプロデューサーをお招きし、共同ウェビナーを開催しました。
多くの方にご参加いただき、社内としても沢山の学びがあったイベントとなりました。
アーカイブ動画もございますので、ご興味ある方はお問い合わせくださいませ🙇♂️
kazushi.suzuki@chillnn.com
学んだもの/得たもの
立ち帰れる場所=ビジョンを持つことの重要性
今まであらゆる業務に取り組んできましたが、社内の判断軸はROI(=投資利益率)のみでした。
もちろん、最終的な評価はそうあるべきだとは思いますが、初期段階でやり切れないような業務が多々あったりと、事業の停滞にも繋がってしまっていた頃もありました。
そんなときに自分や組織を動かしてくれるようなガソリンが必要だったことに、ビジョンを言語化したことで気付きました。
加えて、ビジョンはプロダクトの在り方に筋を通してくれる優れものなので、全てのアクションを反省可能な状態にするための「戦略」が立てやすくなりました。
CHILLNNというプロダクトがこの業界によりよい影響を与え、自分自身の旅や周りの人の旅が豊かになれば嬉しい限りです。
あくまで土台はtoB向けSaaSであること
今回、ビジョンや戦略など上流の話が多くなってしまいましたが、CHILLNNの収益軸はあくまでtoB向けSaaSによる線形成長が土台となっています。
「どれだけこのプロダクトに満足いただけるか、そして長く使っていただけるか」そこへのコミットは絶対ですし、そうあり続けることが双方にとって健全であると考えています。
目の前のお客様のサクセスの大切さに事業開発的な業務を行うことで、改めて認識できました。
我々のValueのひとつに「Itarate」というものがあります。
「ひとつひとつ積み上げる」この至ってシンプルな考え方を初心として、大切にしていきたいと思います。
これからやっていきたいこと
双方(ゲスト・ホスト)が理想的な旅を実現するためにユニークな宿の経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を底上げするシステムへ
このビジョン達成のために以下の経営資源にも、アプローチができるような動きをしていきたいと考えています。
モノ:ハード、ソフトによる全ての体験カネ:ADR、利益率ヒト:賃金、ロイヤリティ(モノとカネによる副次的な要素?)
情報:アカデミーのようなコミュティ?、物件仕入れ?
僕はホテリエから始まったキャリアだったのもあり、ゲストさんもそうですが、関わらせていただいているオーナーさん然りこの世のホテルスタッフの皆さんを尊敬しています。
旅に関わるすべての人が豊かになるような未来の一助となれるような動きも、このCHILLNNを通してやり切ることが、先の目標です。
終わりに
タイトルにもある通り、私は名も無き事業開発です。
特にITのプロダクトに携わったキャリアは歩んできておりません。
ただ「社内外で構築したネットワーク」これはどんなスキルにも変え難い資産だなと常々思います。
「それをどう使えば、収益が最大化されるのか」
「それは会社や業界の未来にどのようなインパクトをもたらすのか」
この最適解を探すことがPMF後の事業開発の一つの在り方ではないかな。と考えています。
CHILLNNのこの新たな取り組みにより、より素敵な旅がこの世界に増えますように。
We're hiring!
より密度の高いカスタマーサクセスの体制を構築しているフェーズなので、ご興味ある方がいらっしゃれば、ぜひカジュアル面談でお話ししましょう!