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骨盤後傾-骨盤肢位による筋活動の変化を深く追求-

よくリハビリテーションでは骨盤後傾している患者をみます。
骨盤後傾していると何が良くないのでしょうか?

「臀筋や腹筋の収縮が入りにくい」
「腰椎の前弯が減少する」

これらがよく挙げられていますが本当にそうなのでしょうか。
また、骨盤後傾による影響はどれほどのものなのでしょうか。

今回このようなことが気になったので文献を探して調べてみました。



骨盤後傾が股関節外転筋の筋活動に与える影響

骨盤後傾により中臀筋の筋出力が低下し、歩行時の股関節側方不安定性に関与するのは、よく仮説として使われている印象があります。

しかし、骨盤後傾がどれくらい中臀筋に影響を及ぼしているのか、自信を持って言える人はそれほど多くない気がします。

まず股関節外転筋という大きな括りでみていきましょう。 

【方法】
対象は健常成人男性14名(平均年齢24.0±2.8歳)とした。測定肢位は安静背臥位を骨盤中間位とし、その肢位からの骨盤最大前傾位、最大後傾位の3条件とした。骨盤前傾には硬性スポンジを腰仙椎部に、後傾には仙尾椎部に挿入することで傾斜角度を調節した。それぞれの骨盤肢位において、一側下肢を股関節0度外転位から股関節外転の最大等尺性収縮を5秒間行わせ、そのときの発揮筋力および下肢と体幹筋の筋活動を測定した。

股関節外転運動時の筋力値は骨盤中間位で2.42±0.33Nm/kg、前傾位で2.13±0.27Nm/kg、後傾位で2.02±0.20Nm/kgであり、骨盤前傾位、後傾位いずれも中間位に比べ有意に小さい値を示した。

吉岡ら.骨盤肢位の違いが股関節外転運動における筋力および下肢と体幹の筋活動に与える影響.第45回日本理学療法学術大会 抄録

この報告から骨盤中間位は骨盤前傾位や後傾位よりも筋力値が高いことが分かります。このことから、訓練する際はなるべく中間位での訓練が良いことが分かります。

次は各筋の筋活動についてみていきましょう。


大腿直筋(RF)の筋活動

骨盤中間位:76.4±42%
骨盤前傾位:54.7±29.4%
骨盤後傾位:70.0±37.5%

吉岡ら.骨盤肢位の違いが股関節外転運動における筋力および下肢と体幹の筋活動に与える影響.第45回日本理学療法学術大会 抄録

やはり骨盤中間位で大腿直筋の筋活動が一番高いことを示しています。次いで、後傾位、前傾位の順となっています。

骨盤前傾位で筋活動が低下している要因として、骨盤前傾位では大腿直筋は短縮位となるためだと考えられます。


大腿筋膜張筋(TFL)の筋活動

骨盤中間位:99.2±36.8%
骨盤前傾位:84.6±36.8%
骨盤後傾位:96.7±44.2%

吉岡ら.骨盤肢位の違いが股関節外転運動における筋力および下肢と体幹の筋活動に与える影響.第45回日本理学療法学術大会 抄録

こちらも骨盤前傾位で筋活動が低下しています。大腿筋膜張筋が短縮しているためだと考えられます。


中殿筋(Gm)中部線維の筋活動

骨盤中間位:64.2±15.8%
骨盤前傾位:66.7±15.2%
骨盤後傾位:53.9±19.4%

吉岡ら.骨盤肢位の違いが股関節外転運動における筋力および下肢と体幹の筋活動に与える影響.第45回日本理学療法学術大会 抄録

中殿筋では骨盤前傾位で一番活動量が高く、骨盤後傾位で筋活動が低下することが分かります。


腰部脊柱起立筋(LES)の筋活動

骨盤中間位:34.3±18.0%
骨盤前傾位:37.8±23.9%
骨盤後傾位:24.1±16.6%

吉岡ら.骨盤肢位の違いが股関節外転運動における筋力および下肢と体幹の筋活動に与える影響.第45回日本理学療法学術大会 抄録

骨盤後傾位では他の肢位に比べ有意に小さい値を示しています。
一方で、骨盤前傾位では筋活動が一番高いことが分かります。


骨盤肢位×訓練方法

今回学んだ内容から、訓練時の骨盤肢位はさまざまな筋に影響を与えることが分かりました。

「訓練をするときは中間位で実施すると良い」で終わるのではなく、「なぜ中間位での運動が良いのか」を今回の報告や筋の張力を踏まえた上で説明できるようにしましょう。

今回の内容を理解したことで、普段以上に修正姿勢にこだわった訓練を実施していけると思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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