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大腰筋の機能解剖-正しい姿勢を保持する最重要筋-
大腰筋は姿勢や動作に大きく関与する筋である。
筋の形状からして動作分析時に欠かすことができない筋となると考えられる。
しかし、大腰筋についての文献は少なく古いものが多い。
また、国家試験の出題率も極めて低い。
重要な筋であることは間違いないのですが、謎が残る筋の一つです。
文献を集め大腰筋についてまとめてみました。
起始停止
![](https://assets.st-note.com/img/1699931220755-zTcFGqATdA.jpg?width=1200)
起始:浅頭 T12〜L5の椎体ならびに椎間
深頭 すべての腰椎の肋骨突起
停止:大腿骨小転子
![](https://assets.st-note.com/img/1699931322066-9uM5TEgQgz.png?width=1200)
上図のイラストは腰部を水平面からみた断面図です。こちらのイラストから、腰背部の筋よりも深層に位置しているインナーマッスルであることが理解できます。
大腰筋の役割
![](https://assets.st-note.com/img/1699911239561-HXTPazhNWw.png?width=1200)
大腰筋の役割として、以下のものが挙げられる。
股関節制御能力
股関節と腰椎の分離運動
機能解剖からの視点では、大腿骨を固定すると大腰筋は腰椎を前方に引き、前弯を維持する。腰椎の側屈に作用するといった役割があります。
大腰筋の機能不全が起こると…
大腰筋のElongation(伸張)が起こると骨盤後傾、腰椎後弯する。
大腰筋のShortening(短縮)が起こると骨盤前傾、腰椎前弯する。
大腰筋の筋長に変化が起きると骨盤や腰椎に影響を与えます。そのため、姿勢から十分に筋の状態が観察可能となると言えるでしょう。
骨盤後傾、腰椎後弯位での姿勢は、高齢者で多くみる姿勢である。骨盤後傾位では、腰部脊柱起立筋や中臀筋が骨盤中間位と比較し、筋活動量が低下していることが報告されている。したがって、骨盤後傾、腰椎後弯位での動作は修正していきたい。
骨盤前傾、骨盤前弯の組み合わせは大腰筋と脊柱起立筋の短縮、腹筋群および大殿筋の筋力低下とともに生ずるとされている。
これらの人では身体全体の後屈運動をする際に股関節が伸展し難く、腰椎前弯をさらに増強してしまい椎間関節に圧縮応力を増大させる。逆に骨盤後傾、腰椎後弯がある人では股関節屈曲制限を伴い、身体全体の前屈制限も生じやすい。
Kendallによると大腰筋の両側の弱化は、腰椎の後弯、スウェイバック姿勢になる。大腰筋の片側の弱化だと腰椎側弯に結びつくとしている。
これらの姿勢を伴う患者は大腰筋の筋力低下や左右差が認められる。
大腰筋は座位での姿勢保持に重要であり、また立位でも上半身と下半身を結びつける重要な役割を果たします。
大腰筋トレーニング①
ここまで大腰筋の役割や機能不全による影響について説明してきました。この項目では肝心なトレーニング方法を説明していきます。
![](https://assets.st-note.com/img/1699911782733-uXk1LB6PD5.png?width=1200)
座位で腰椎前弯を強める姿勢(胸骨剣状突起付近が最大に前方に位置するような姿勢)をとる。
片足をほんの少し床より離すのであるが、上半身が極力動かないように注意しましょう。足を挙上する際に骨盤が後傾位になってしまうと大腰筋よりも、大腿直筋のトレーニングとなってしまうので注意が必要です。
しかし、この運動は比較的困難です。
次の項目では、臨床場面で使いやすい大腰筋トレーニング方法を紹介します。
大腰筋トレーニング② 臨床的に指導している方法
1. 体幹側方傾斜させたまま、脊柱を側屈させないエクササイズ
(左大腰筋の強力な収縮がないと図のような動きはできない。)
![](https://assets.st-note.com/img/1699911862673-1feeadL5Vg.png?width=1200)
2. 腕立て伏せの姿勢を保持
![](https://assets.st-note.com/img/1699911887235-lDJmhyhR0h.png?width=1200)
3. 片足挙上を骨盤が下方へ動かないように施行。
![](https://assets.st-note.com/img/1699911982416-pjykB1cczR.png?width=1200)
4. 後方からのチューブを前方に引く際に股関節屈曲を維持する運動
![](https://assets.st-note.com/img/1699911998234-QOPGmUWhur.png?width=1200)
さらに大腰筋を賦活するには?
大腰筋は股関節深屈曲でより賦活されることがわかっています。
そのことがわかる文献を紹介します。
「自動下肢伸展挙上時の大腰筋活動 ワイヤ筋電図を用いた筋電解析」
【はじめに】
臨床現場では、股関節屈筋群のエクササイズとして、自動下肢伸展挙上(ASLR)が用いられているが、大腰筋は体幹の最も深部に位置するため活動様式を評価することが困難であり、ASLR時の大腰筋活動は明らかではない。そこでワイヤ筋電図を用いて大腰筋活動を測定し、ASLR時の大腰筋活動様式は明らかにすることを目的とした。
【結果】
自動下肢伸展挙上(ASLR)時の大腰筋の筋活動量は、屈曲初期:10.3±5.5%MVC、屈曲中期:18.1±9.3%MVC、屈曲後期:18.3±14.6%MVCであり、他の筋よりも有意に大きい値を示した。
これらの報告から、股関節深屈曲位にて大腰筋の筋活動がより賦活されることがいえます。
これらの情報から、以下のような訓練方法はどうでしょうか。
![](https://assets.st-note.com/img/1699913966667-Opg5rIEu7K.png?width=1200)
開始肢位は股・膝関節屈曲位での座位姿勢。この姿勢から、足を床から離す運動を繰り返す。
注意点として、股関節深屈曲位であるため骨盤後傾・腰椎後弯してしまい、大腰筋が上手く入らない可能性があります。そのため背中を壁につけながら訓練したり、セラピストが骨盤後傾や腰椎後弯を抑制する必要があると考えられます。
今回は文献数が少なく謎多き大腰筋についてまとめてみました。
姿勢をみる上で、大腰筋が重要となってくることが今回の記事で理解できたと思います。
本記事内容は個人的見解を含むものです。すべてを鵜呑みにせず参考にしていただけたらと思います。
そして何より、学んでいく楽しさを忘れずに自己研鑽していきましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました!