渡米は突然に。1《出会い編》
「俺、アメリカ行くから。」
付き合って早々、目の前の男は言い放った。
え?何言ってんの、このひと…。
いろんな思いが込み上げた。が、何も言い返せなかった。
当時、まさかこの一言がわたしのアメリカ生活の幕開けになろうとは、夢にも思っていなかった。
それまで散々な恋愛体験を重ねてきたわたしは、もう男という生き物を信用できなくなっていた。
最後の望みだと期待していた男も、結局、へんなヤツだったのか。
つくづく、男運がないな、わたし。
このまま独り身で、結婚もせず、子供もつくらず、静かに人生を終えるのか…。
そんな妄想をしながら、付き合ったばかりの渡米願望ボーイと別れることができず、ズルズルと交際をつづけていた。
ちなみに「ボーイ」と言ったが、世の中では立派な40のおっさんである。
でもこのおっさん、ただものではなかった。
出会いは畳5枚ほどの小さなBar
おっさんに出会った時、相手はベロベロの泥酔状態だった。
今でもあのときのことはすべて鮮明に覚えている。
わたしたちは大阪の北摂にある小さなBar(フリッターズ)で出会った。
その日わたしは昨日まで付き合っていた人と別れ、2年ぶりに1人で夜の街に繰り出していた。
今でもそのときの開放感と、夜の新鮮な空気をおぼえている。
その時のわたしは将来のプランも、貯金もなにもなかったが、一番大切にしたかった“心”を取り戻せていた。それだけで、最高の気分だった。
『もう恋愛も男もこりごり。残りの人生、ひとりでも生きてやる。』
いつも賑わっている顔見知りのママのいるBarには、わたし以外だれもいなかった。
久しぶりの1人の時間をゆっくり過ごしたかったので、ちょうどよかった。
1〜2杯ほどビールを飲み、ママと他愛もない話をしていると、気づけば夜11時になっていた。
そろそろそ帰ろうと決めたとき、
ガランガラーンッ!!
ものすごい勢いでベロベロに酔った男が2人、勢いよくはいってきた。
続く。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?