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ふるさと納税黄金期!
我が家では大晦日にすき焼き鍋を食べるのが恒例になっている。子供の頃から、父の会社の取引先の社長が年末に高級和牛を送ってくれていた。我が家では通称「社長肉」と呼ばれている。
父は決して会社で偉い立場なわけでもないが、なぜかその社長は取引先の全社員に和牛を送る太っ腹なことをしていた。和牛と同時に毛ガニも届いたことがある(いくら何でも社長すぎる)。
僕と姉は社長肉が届くたびに、会ったこともない社長の顔を思い浮かべながら感謝を述べ、天にも昇るような気持ちですき焼きを食べていた。
これがないと年を越せない。一度高級和牛の味を知ってしまったら、もうスーパーのお肉には戻れない。贅沢な大人になってしまったよ。年に1回大晦日にだけ食べられる社長肉を僕と姉はいつも楽しみにしていた。
しかし、2、3年前から急にパタっと社長肉が届かなくなった。「今年の社長肉は?」と父に聞いたら、「どこも不景気なんだよ」と父は寂しそうに呟く。え?じゃあどうすんの?今年の大晦日のすき焼きはどうなるの?
「安心して、ふるさと納税で頼んでおいたよ」
社長肉の代わりに、我が家の救世主として現れたのがふるさと納税であった。高級和牛なんて一般庶民は高くて手を出せない貰えたらラッキーな品で、自ら買うことはない。でもこれが、ふるさと納税であれば美味しいお肉も食べれて納税も出来る一石二鳥。これは国民の義務を果たすために頼むんだと自分に言い聞かせれば、何の罪悪感もなく和牛を食べれるのである。もう社長肉が無くても、贅沢が出来るのだ。
我が家は今ふるさと納税黄金期を迎えている。いつまで経っても実家を出て行かない大人子供(姉と僕)がいるせいで、納税者が3人いる。僕たちは返礼品が被らないようにそれぞれ分担して12月に全国各地に一斉に注文を始める。僕はお肉担当。佐賀県の霜降り牛に小田原市のしゃぶしゃぶ肉、石川県の牛タンまで頼んだ。
小田原市のしゃぶしゃぶ肉は2年連続頼むほど気に入っている。量も多くて、お肉は柔らかくお鍋に入れて食べたら美味しいのだ。僕は川崎市民なので同じ神奈川のライバル市に納税する裏切り行為をしているが、関係ない。そういう制度があるのだからしょうがない。
やらないわけにはいかないだろう!
川崎市は「ふるさと納税をしないでくれ!」と広告を出すほど打撃を受けているらしいが、きっと大丈夫。再開発が進んで高層マンションがバンバン立っているし、人口も右肩上がりに増えているから、そんなに心配しなくても大丈夫。なんとかなるよ、頑張れ!(他人事)
父は一番所得が多いので、ふるさと納税の限度額も高い。だから、父には蟹を担当してもらっている。蟹もふるさと納税がなければ、一生頼むことはない贅沢品である。毎年冬に家族で無言になりながら蟹を剥き、沈黙の蟹鍋を楽しんでいる。
姉はうなぎを担当しているが、なぜか今年はうなぎの他にも宮崎県のさつまいもを頼んでいた。段ボールいっぱいに届いたさつまいもを見て「もっと他にあるだろ!」と内心思ったのだが、このさつまいもが我が家で意外にも大人気になった。
まず普通に焼き芋にしても美味しい。中から蜜がとろっと溢れ出てきて、口の中でふわっと溶ける。屋台で食べるようなクオリティを家でも再現出来るのは嬉しい。さつまいもは天ぷらにしても美味しいし、味噌汁に入れても美味しい。大活躍のさつまいもだが、一番人気があったのは、スイートポテトだった。
母が手作りでスイートポテトを作ってくれてこれを姉と競うように食べている。スイートポテトを久しぶりに食べるとその美味しさに感動した。さつまいもと卵の甘みが相乗効果を生み、ほっぺたが零れ落ちそうだ。朝ごはんに2個食べて、会社から帰ってからも2個食べていたら、姉が「ちょっと食べすぎじゃない?」といちゃもんを付けてきて、「自分も食べればいいだろ!」と喧嘩になった。
スイートポテトの魔力おそるべし。
僕と姉が本気で喧嘩するもんだから母が「もうスイートポテトは作らないよ!」という始末。(こんな喧嘩をアラサーの姉弟がしています)
これを含めて、我が家はふるさと納税を存分に楽しんでいる。家族に3人納税者がいる強みを最大限に活かしている。姉は実家を出ても返礼品の送り先を実家にするとまで言っている。我が家に訪れたふるさと納税黄金期、後何年続くかな。
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