見出し画像

お笑いを好きな人はやさしい

金曜日、有給を使って会社の先輩とKOC(キングオブコント)準決勝を観に行った。僕はかなりのお笑いオタクで、毎月なんかしらのお笑いライブを観に行ってるのだが、このKOCの準決勝だけはずっと行ったことがなかった。

毎年応募し続けて、吉本が運営しているFNAYのプレミアム会員にもなっているのに当たらない。超プレミアムチケット。

お笑いファンの間では、準決勝が事実上の決勝戦と認識されている。35組のうち決勝に行けるのはたった10組。決勝に行くために芸人たちはこの準決勝に今年出来た最高傑作をぶつけてくる。それを観るため、ファンたちは高いお金を出してでも準決勝を見たいのだ。(なんと準決勝のチケットは8000円!)

去年、先輩と僕は当たる確率を上げるため、別々に応募したのにどれも当たらなかった。今年も同じ作戦でいこうと、別々に応募したら今度は2人とも当たってしまった。先輩と話して席が遠い方のチケットを売ろうという話になった。どうせ見るならいい席で見たい。先輩のチケットは前から4列目、僕のは9列目だった。売るのは僕のチケットになった。(クソッ!!)

でも、KOCの準決勝のチケットは欲しい人が山ほどいる。僕はXで「重複したため、欲しい人はいませんか?」と呼びかけた。DMにはあれよあれよと「譲って下さい。」のメッセージ。その中から本当に欲しい人を精査する。転売ヤーが混じっているかもしれないからだ。準決勝はプレミアムチケット、それを利用して高額転売を目論む奴らがいる。X上には「チケット譲ります。金額はご提示下さい(上乗せ可)」などのふざけたツイートが目立つ。

上乗せ可ってなんだ?定価で買うに決まってるだろう!僕は純粋に準決勝を見たいお笑いファンの気持ちを踏みにじるような転売ヤーが許せなかった。だからあらかじめ、転売ヤーには譲りませんと記載した。チケットだけの取引をしているアカウントは論外。僕は頂いたDMの中からお笑いのことばかり呟いている人に譲ることにした。準々決勝も見に行っていて、事細かに感想を書いている。この人なら信頼出来る。

その人にチケットを譲りますと返信したら、えらく感謝された。まさか譲って頂けるとは思ってませんでしたと。僕はただチケットを無駄にしたくなかっただけだ。感謝したいのは僕の方だ。チケットが余ったから、行きたい人に譲る。そこに上も下もあってはいけない。お笑いが好きな同士なのだから。

その人には銀行振り込みで金額を払ってもらい、チケットの発見番号をお伝えした。もちろん、定価で譲ったよ。

1週間後、KOC準決勝当日を迎えた。先輩はライブが近づいてきて「緊張するなぁ」と呟く。先輩とよくお笑いライブを観に行くのだが、いつもこの言葉を口にする。僕は「緊張するのは芸人の方でしょ、僕たちは笑ってればいいんですよ。」と冷静にツッコむ。先輩は「だってウケて欲しいんだもん。」と胸に手を当てて心を落ち着かせている。

自分のことのように応援したい人がいる。今日会場に来ているお客さんにも推しコンビがそれぞれいて、みんな心の中でウケて欲しいと願っている。幕が上がるのを待ちながら、お笑いファンは優しいなと思った。

準決勝のライブは4時間も行われた。でも、あっという間だった。準決勝に上がってくるようなコンビでスベるコンビはいない、全組ウケていて僕はやっぱりプロだなと思った。僕の推しラブレターズも、先輩の推しロングコートダディもしかっりウケていた。本当に誰が決勝に上がってくるか分からない。僕と先輩は帰りの電車でどのコンビが決勝に行くか予想して盛り上がった。

先輩は「来年は両日行きたいな」と呟いた。準決勝は2日間あって、僕たちは2日目を観に行った。僕もいつか両日行きたいけれど、今日だって会社を休んで来ている。なかなか両日行くのは難しい。すっかり忘れていたけど、今日仕事を休んでいるんだな。

急に我に帰った僕と先輩は月曜日に仕事が溜まってたらどうしようと怯えた。でも、きっとなんとかなるでしょう。嫌なことだって吹き飛ばしてくれるのがお笑いだもの。

僕は仕事も全部コントだったらいいのになと夢みたいなことを考えた。ヘマをしても笑いになる世界。そんな世界になったら、最高だなと思う。




いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集