見出し画像

副鼻腔炎が直りません

半年前から鼻の調子が悪い。僕はアレルギー性鼻炎があって、年がら年中鼻が詰まっている。点鼻薬で毎日鼻の通りを良くしないと寝れないくらい重症だ。でも、これは小さい頃からでそういうもんだと思って26年生きてきた。とっくに慣れている。

しかし、半年前からアレルギー性鼻炎に加えて、僕を悩ませる症状が出てきた。副鼻腔炎だ。鼻の奥の方に違和感を感じるようになった。鼻水が詰まってる感じがする。ふん!とかんでも、出てこない。鼻水は「出るもんか!」と粘膜に張り付いている。

お風呂上りに鼻をかむと、なぜか詰まってた鼻水がどろっと出てくる。チーズのように伸びる白い鼻水。僕は普通じゃないぞと思った。

そう思って、半年前から近所の耳鼻科に通っていた。副鼻腔炎を抑える薬と鼻水を出しやすくする薬を貰った。しかし、毎日欠かさず飲んでいるのに一向に治る気配がない。

先日、ついに医者が匙を投げた。

「私の力ではもう治らないよ」

おいおい、なんてこと言うんだよと思ったが、普段底抜けに明るい先生が真顔で言うから本気みたいだ。先生は半年治療を続けて治らなかったらもうお手上げだと残念そうに言った。

「手術しないと駄目だね」
「手術!?」

まさか鼻水で手術の話になるとは思ってなかった。鼻の奥にどれくらい鼻水があるか分からないCT検査をする必要があるという。先生は総合病院を案内すると言って、紹介状を書いてくれた。

数日後、会社を休んで総合病院に行った。受付で紹介状を渡すと「マスク持ってますか?」と聞かれた。周りを見渡せば、みんなちゃんとマスクをしている。僕は「持ってないです。」と答えると、受付のおばさんは冷たく言い放つ。

「じゃあ、コンビニで買うか、入り口でマスク売ってるんで買って下さい。」

こんな暑い日にマスクなんか付けれるかい!と思ったが、ルールだから仕方ない。ここで抵抗してマスクを付けずにいたら、待合室でも白い目で見られること間違いなしだ。僕は「分かりました。」と言って、受付を離れた。

買うのは馬鹿らしいなと思っていたら、そういえば1枚リュックに入っているような気がした。僕は急いでリュックを確認してみると、内ポケットに奇跡的に1枚だけマスクが入っていた。正直いつのマスクか分からないが、これで充分だ。僕はマスクを付けて、そのまま堂々と耳鼻科の受付まで歩いていった。

耳鼻科は既に多くの人で混んでいたが、僕は紹介状のある患者だからかすぐに案内された。診察室に入ると、髪を軽く遊ばせた若めの先生が座っている。僕は医者だからモテてるんだろうなと勝手な感想を思い浮かべながら、先生の前に座る。

早速先生が僕の鼻の中をカメラで見ると言った。馴染みの耳鼻科では先生が器具を使って鼻の穴を広げて目視で確認していたから、カメラというワードに「さすが総合病院!」と思った。やっぱりモテるんだろうな。

僕はマスクを外そうとしたが、「軽く下に下げるだけでいいです。」と先生に止められた。コロナ対策は徹底されいてる。

僕は言う通りにマスクをズラして、鼻にカメラを突っ込まれた。奥の方まで入れられて、ちょっと呼吸が苦しい。先生はモニターを見ながら、険しい表情をしていた。

「これはひどいですね。かなり腫れてます。」

鼻の粘膜が腫れているなんていつものことだ。馴染みの耳鼻科でもいつも言われている。

「鼻の骨も曲がってるし、呼吸もしづらいでしょう。」

え?鼻の骨が曲がってる?

急に怖いことを言われて、心臓がひっくり返りそうになる。そんなことを言われたのは初めてだ。それってどういう状態ですか?結構ヤバいんじゃないの?動悸が止まらない。

詳しく聞きたいのに、先生はさらっと口にしただけで、何事もなかったかのように別のことを話している。先生はカメラを抜きながら「1回CT撮ってみましょう!」と話す。

先生から「いつまた来れますか?」と日程の確認をされる。僕はさっきのことが気になりつつも、「土曜日なら行きやすいです。」と答えた。だが、土曜日の予約は既に埋まっているらしく、結局9月の水曜日にCT検査をすることになった。

また会社を休まなきゃなと思いつつも、それよりも骨が曲がってる件が気になってしょうがない。先生は「10月の予約も取っちゃいましょう!」とやけに陽気で、僕の気持ちなど気付いてる様子もない。

10月の予約も決め、薬も処方してもらったら、最後に先生がやっと「何か質問ありますか?」と聞いてきた。今から聞いても変な顔されないか心配だが、鼻の骨について聞くなら今しかない。これは自分に関することだ。このまま聞かなかったら、モヤモヤした数週間を過ごすことになる。

僕は恐る恐る聞いてみる。
「先ほど鼻の骨が曲がってるって言いましたけど、それって大丈夫なんですか?」

先生は僕を安心させるためか、にこやかに笑って答えてくれた。
「鼻に鼻中隔って骨があるんですよ。これはほとんどの人が曲がってるんだけど、曲がり具合によって物理的に鼻の通りが悪くなるんだよね。」

先生はみんな曲がってるから安心してみたいな口ぶりで話す。いや、耳鼻科の知識のある先生にとっては当たり前かもしれないけど、そんなことは一般人には分からない。いきなり「曲がってますね」なんて言われたら誰でも動揺する。説明足りないんだよ!さては本当はモテないな!

「ちくわさんの場合は、手術が必要かもしれないですね。CT撮らないとまだ分からないけど。手術するなら、鼻の奥の鼻水を取るのと、アレルギー性鼻炎を直すのと、鼻の骨を真っ直ぐにする手術を一気にやりましょう。」

そんな三種盛りみたいな手術が出来るのかよ。ツッコミが止まらないよ!とにかく僕の鼻は色々と問題を抱えているらしい。手術は全部鼻にカメラを入れてやるから、傷は付かないと先生が言ってくれたのでほっとした。僕の鼻は高くて自分では結構気に入ってるんだ。

最後に「その手術をすれば全部直りますか?」と質問したら、先生は「だいぶ改善されると思いますよ。」と言った。完治は難しいのかな。鼻詰まりに関しては一生付き合う覚悟でいるけど、直る方向に向かっていけばいいなと思う。

帰りに自転車でいつもの薬局に行った。ふと毎月病院に通っているなと思う。皮膚科でビタミン剤と漢方をもらい、内科で過敏性腸症候群の薬をもらい、耳鼻科で副鼻腔炎とアレルギー性鼻炎の薬を貰ってる。家族や友達でもこんなに頻繁に病院に行っている人はいない。

どれもそんなに重いものではないけれど、日常にちょっと支障をきたす程度の症状。何とも僕らしいなと思う。健康な人が羨ましいけれど、この体も含めて自分だから受け入れるしかない。病院で有給を使わないといけないのはちょっともったいないけどね。



この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?