M-1準決勝を観に行く
先週、M-1グランプリの準決勝を観に行った。会場は浜松町にあるニューピアホール。オフィスビルが立ち並ぶ中、こんなところにお笑いライブがあるのかと不安に思いながら会場に着くと沢山のお笑いファンで溢れていた。
平日の昼間だというのに、チケットは即完。会社を休んでくるほどの濃いお笑いファンが集まっている。僕もそのひとりだ。M-1側もチケットの転売対策を本格的に始めて、入場時に身分証の提示を求めるようになった。会場に入れるのは、正規のルートでチケットを手に入れた者のみ。僕は初めてその切符を掴むことが出来た。
会場にはカメラマンやスーツを着た業界関係者も沢山いた。準決勝が終わった当日のうちに、決勝進出者が発表されるためその記者会見のために集まっていた。M-1準決勝は普段のお笑いライブでは感じたことない緊張感と熱気が会場を渦巻いていた。
ロビーでは20回大会記念の分厚い本も売られていた。ここに来るまでは買うつもりは一切なかったのに、購入するとポスターも付いてくると知って、思わず買ってしまった。今年の20周年記念ポスターのデザインが本当に良くて、歴代のチャンピオンたちが一同に会している姿に胸が熱くなる。M-1の長い歴史を感じさせるし、誰ひとり欠けていないチャンピオンたちを誇らしく思う。
後先考えずに買ったから、トートバックに入らない本とポスターをどうやって持って帰ろうか考えるはめになった。片手に持ちながら電車に乗ることになりそうだ。そうなったら、自ら「お笑いファンです」とアピールしてるようなものだ。それだけは避けたい。
そう思っていたら、思わぬところで袋を手に入れた。座席にカップヌードル柄のビニール袋が置いてあったのだ。中を開けるとどん兵衛が二個も入っている。M-1のスポンサーに日清が付いているが、会場にいるお客さんにまでカップ麺が配られていた。
日清の大企業ぶりに感嘆である。
僕はカップ麺よりも袋が手に入ったことが嬉しくて、日清に感謝しながら本とポスターを袋にしまった。
座席は神席だった。なんと僕は最前列に座っていた。舞台との距離が目と鼻の先である。今年のチケット運は使い果たしてしまったなと思ったけど、今年ももう終わりなのでこれはお笑いの神様のご褒美だと思った。僕はそわそわしながら幕が上がるのを待った。今日は推しコンビ、男性ブランコのトレードマークである眼鏡をかけて視界良好である。
準決勝のライブは3時間行われた。休憩は挟むものの、ほぼノンストップで30組の漫才師を見ることになった。でも、疲れることはない。どのコンビも面白いから疲れるのは笑った口角くらいだ。
漫才はセンターマイクの前でたった二人だけで立ち話をする姿がカッコいいなと思う。あたかも今初めて聞いたようなテンションで会話を繰り広げていく。ボケがおかしなことを言って、ツッコミがその違和感に丁度当てはまる言葉を鋭く放つ。道具も何も使わない、2人の世界だけで笑いを取っていく。
芸人さんは自分たちが作り上げたものが笑い声として返ってくる時、どういう気持ちになるのだろう。僕は舞台に立ったことがないから分からないけれど、きっと何にも代え難い多幸感があるだろうなと思う。
人の笑い声ってなんだか幸せな気持ちになる。
こんな僕でも自分の話で誰かが笑ってくれるのは、嬉しいと感じる。相手が笑ってくれたら、こっちも嬉しくなって相手に心を開いてしまう。簡単に心の壁が融解していく。人と人が仲が良くなるきっかけは、案外笑いのツボとか波長が合うことだったり、お笑い的な要素が大きいような気がする。
僕は真ん中より少し右側に座っていたから、舞台袖もちょっと見えた。舞台に出る前の芸人さんの表情、すなわちギアを上げる瞬間の表情も見ることが出来た。このネタに人生を賭けているそんな気負いがひしひしと伝わってきた。
それなのに、舞台に上がれば「はい〜どうも〜」と明るく登場する。そのギャップにまた痺れる。
本当にどのコンビも面白くて準決勝が終わった頃には、誰が決勝に行くか全く分からなかった。誰が行ってもおかしくないレベルだった。
決勝のメンバーは既に発表されたが、決勝に行ったコンビよりも行けなかったコンビを悲しむ気持ちの方が大きい。男性ブランコもウケていたけど、駄目だった。決勝に9組しか進めない残酷さ。勝負の世界だからしょうがないけれど、出来ることならみんな決勝に行かせてあげたい。
決勝に行ったコンビは実力者ばかりで、誰が優勝するのか、想像するだけでもワクワクする。
こんなに熱く語っておいて当日の22日はYUKIのライブに行くのでリアタイが出来ない。(YUKIのライブの方が先に決まっていた)
僕は23日を休みにしたので全ての情報をシャットアウトしてM-1の録画を観る予定だ。ちょっと休みすぎな気もするが、M-1の方が仕事より大事である。芸人さんがM-1に人生を賭けるように、僕も観ることに全力を尽くそうと思う。