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【読書】アルケミスト

世界を知りたかった羊飼いの青年。夢の宝物を追う旅路、錬金術師から教えられたこと――それらはすべて"書かれていた"?


物語の最初の舞台は南スペイン。羊飼いの青年が、ある日みた印象的な夢。青年は、夢の意味を理解するため、海を渡りピラミッドへ旅立つ決心をする。

20代の頃、スペインを旅したことがある。
セビリヤからマラガへ向かう途中、「ここからしばらく行って海を渡れば、すぐそこはアフリカ大陸で、モロッコに行けるよ」と、ガイドが教えてくれた。映画『カサブランカ』をうっとりして観ていた私は、それを聞いて胸が躍り、「次にスペインへ来た時には、きっと此処からモロッコへ渡り、そしてピラミッドまで旅をしよう」と思ったものだった。

結局その思いは、この歳になっても実現しそうにないが、この物語の青年が、まさか私の代わりに、あの頃思い描いた同じコースを旅してくれたとは!感慨深いというか、ありがたいというか。そんな私自身の、懐かしい共鳴とともに、物語は進んでいった。

「アルケミスト」(=錬金術師)というタイトルを聞けば、何か謎めいた、魔術的な物語かと想像してしまうが、そういうわけではない。そもそも”錬金術”とは、その言葉のイメージだけが一人歩きしてしまったが、怪しげな単なるまやかしごと、というのではなく、人の人生の神髄のような、哲学的な教えでもあるのだ。

そんな、誰が読んでも深いところで納得させられる、深淵なメッセージが、青年の旅を通して随所に散りばめられている。本書は、非常にスピリチュアルな物語として捉える人もいるだろうし、人生に役立つ自己啓発書として捉える人もいるだろう。

青年は、はるばる海を渡って、最後に何を手にするのだろうか――。
キャラバンで、ピラミッドを目指す果てしない旅路は、砂漠の風景に馴染みのない日本人の私にとって、とても魅惑的である。

そして、この本のキーワドともいえる『マクトゥール』という言葉は、いまでも私の心の中に、こだまのように響いている。

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最後までお読みくださりありがとうございました。

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