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【読書】人の研究を笑うな

著者、藤田絋一郎さんは、今年の春に旅立たれました。本書は、著者が生前に書き残していたエッセイをまとめた遺作として出版されました。

藤田絋一郎さんはテレビの健康番組にもよく出演されていたので、お顔をご存知の方も多いでしょう。それより何より、『笑うカイチュウ』(1994年/講談社)がベストセラーになり、カイチュウ「キヨミちゃん」をお腹に飼っている変な博士として、日本中にそのお名前は知れ渡ったのでした。

実は、藤田絋一郎さんは、私の仕事上の関係でずいぶんお世話になりました。ですので、ここからは「先生」と呼ばせていただこうと思います。先生がどういう方で、どういうご研究をされていたかは、私が言うまでもなく本書を読めば分かります。それでもあえていうならば、本当にお優しい方。それは、単なる優しさではなく、全ての命に対してお優しいと言ったら良いのでしょうか。

私の乏しい表現力では上手く言い表せないのが残念ですが、先生のエネルギーを思い起こすだけでも、明るく暖かい気持ちになるのです。それに藤田先生の書かれたご本は、ご研究内容とその体験が中心ですが、それはそれはユニークで面白い。そういえば先生は、お会いしても冗談をよく仰っていて、いつも、笑いのネタを探していました。

先生は大学という保守的で狭い世界に身を置きながら、ご自分のやり方で研究をやり抜き通されました。学長に警告されることが度々ありながらもそれが可能だったのは、まだまだ日本が緩やかな時代であったこともあるのでしょうが、先生のお人柄も大きかっただろうと思います。その上実際に、人々の役に立つ、数々の実績を残されていたからでしょう。そうした基盤づくりのうえ、大学を去った後も先生の研究姿勢は変わることなく、最後まで藤田絋一郎人生を歩まれました。

私たちは、周囲に迎合することなく、自分の道を進む人をカッコイイと思い、自分もそうでありたいと憧れますが、現実にそれが出来る人は僅かです。社会の中で、批判を受け、馬鹿にされ、孤立し…。先生は、そういう中を進まれながらも、ご自分や周囲を裏切らず、慈悲の心と明るさで道を探し、最後まで歩き通された、稀有なお方であろうと思います。

今、世界中が大きな変化を向かえています。これは、日本でいうなら明治維新以来か、あるいはそれよりもっと大きな変化かもしれません。そんな時は、果たして何を信じていくべきだろうか?国のおふれを待っていれば何とかなるのか?マスコミの一方的なニュースに頼って良いのか?

何もかもが不確かな中、おそらくは、自分の心に従い、自分の道を進んでいくのが、結果はどうであれ、それが唯一、後悔しない道ではないかと思います。藤田先生は、この大きな変化を最後まで見届けずに去ってしまわれましたが、これから変化を乗り越えてゆかなければならない人々にエールを送ろうと、本書を残していかれたのではないかと、そんなふうに思うのでした。


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