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「猫」のお話

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隣人の猫にまつわるお話。 猫嫌いな僕が猫騒動に巻き込まれて、 ちょっとだけ猫好きになっていくお話です。
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猫嫌いの男の話

それは日曜日の冬、よく晴れた朝に奥さんが庭で洗濯物を干している時だった。隣の家の猫が日向ぼっこをしていた。 隣の家には4匹の猫がいると聞いていた。そのうちの親猫2匹は知っているが子猫は2匹とも見たことがなかった。日向ぼっこしているのは子猫の内の1匹だろう。 親猫は放し飼いにされ、ご近所が糞尿被害の迷惑を被っている。我が家もそうだ。それで、いろんな猫対策をした。最初は飼い主さんに話をしたが無駄だった。自治会、役所、保健所から飼い主さんに何度も話をしてもらったが、「放し飼い」

「長州力」

 しばらく空き家だったお隣に、人が入った。猫を2匹連れていた。雄と雌の若い猫だ。1年経って気がつくと、4匹に増えていた。  猫達は、ご近所を走り回っている。ご近所で猫の糞尿被害が出てきた。我が家もそうだ。保健所の方が2回お隣に注意しに行ってくれたが、飼い主さんは 「放し飼いしていない」 「避妊して去勢している」 と嘘を話す。  雄猫は木に登り、公園を走り回り、草むらに背を低くして身を潜めて雀を捕まえようとする。野生化しているのだ。筋肉がついて男性ホルモンがムンムンだ。 コ

「距離」

朝、洗濯を干している時や 玄関先を掃いている時に視線を感じていた。 でも僕がそっちの方を向くと誰もいない。 小さい鈴の音だけが残っていた。 何度か、そういう事があって、 やっと視線の先に、その人を見つけた。 お隣の雌猫だった。 何が面白いのかがわからないが、 その雌猫は、次の日も僕が洗濯を干すのをじっと見ていた。 僕は相手にせずに放っておいた。 月が綺麗な夜に、散歩に出た。 しばらく歩いていると、小さい鈴音が僕の後から付いてくる。 自分の安心できる一定の距離を保ちながら

面倒くさい男

先日、散歩していると壁越しに「にゃぁ」と鳴き声が聞こえた。声が聞こえた壁の向こうに気配がしたのでしばらくじっとしていた。すると「長州力」が向こう側から壁の上に飛び乗ってきた。長州力は僕に目を合わしに来た。 長州力は隣の猫だ。放し飼いで我が家の庭をトイレに使用しているので僕が箒で威嚇したり、ホースで水をかけようとした猫だ。それ以来、長州力は僕をかなり警戒していると思っていた。 ある時、長州力の相方のメス猫と月夜に散歩して仲良くなったり、門柱で一緒に遊んだりした。その逢瀬を長