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面倒くさい男

先日、散歩していると壁越しに「にゃぁ」と鳴き声が聞こえた。声が聞こえた壁の向こうに気配がしたのでしばらくじっとしていた。すると「長州力」が向こう側から壁の上に飛び乗ってきた。長州力は僕に目を合わしに来た。

長州力は隣の猫だ。放し飼いで我が家の庭をトイレに使用しているので僕が箒で威嚇したり、ホースで水をかけようとした猫だ。それ以来、長州力は僕をかなり警戒していると思っていた。

ある時、長州力の相方のメス猫と月夜に散歩して仲良くなったり、門柱で一緒に遊んだりした。その逢瀬を長州力に見られていた時もあった。その時の長州力の目は鋭かった。

また、飼い主さんにお願いをして猫たちの写真を撮らせてもらった時には、長州力だけがいない。飼い主さんが隠れていた長州力を抱きかかえて、僕の前に撮影しやすいように連れてきてくれた。でも爪は怖いほど立てている。

また、ある時は長州力の子猫「柚子」と挨拶をした。僕の人差し指と柚子の鼻先とでチョンをした。その時も長州力は遠くから隠れながらこちらを見ていた。長州力は僕のことをかなり嫌っていると思っていた。

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その長州力が散歩中の僕に寄ってきた。猫は目を合わすのを嫌うと聞いたことがある。しかし、長州力はブルーの目で真っ直ぐに僕を見つめている。僕も長州力を遠慮なく見返す。よく見ると長州力はヤンチャな顔つきでヤクザ映画に出てくる俳優の様な顔つきをしていた。コイツはモテるなと感じた。

しかし、長州力はある程度の距離を保ったまま動かない。僕の方に寄っても来ない。そこで僕は、はたと気がついた。コイツは僕の事を嫌っていたり警戒していたのではなかったのだ。全くの逆で、僕に興味を持ってくれていたのだ。

でも長州力は自分から僕の方までは来ない。僕から歩み寄って来てくれるのを待っていたのだ。かまってほしかったのだ。つまり、面倒くさい男なのだ。なぜ、そう感じたかと言うと、実は僕も面倒くさい男だからだ。

面倒くさい男同士が向かい合っても、お互いに歩み寄ることはなかった。時間は過ぎていくだけだった。

僕は「またな」と言って別れた。

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