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「犬」のお話

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幼い頃に野良犬に噛まれた経験があって犬が怖いkiyoくん。 ご近所の優しい犬と出会って少し変わってきました。
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そろそろ本当の俺を見せてやろうか

今朝、いつものスターバックスでバリスタさんから、 「kiyokunnのお家は公園の横ですか?」 と聞かれた。 僕は不意を突かれて驚いて、 「そ、そうです」 と答えた。 と言うのも色々と思い当たる節が無いでも無いので、 「アイツの家があそこか」とか 「あんた評判悪いで」とか 思われていても仕方がないと瞬間的に頭によぎったから。 そんな僕をバリスタさんが 「うちの犬がいつもkiyokunnに遊んでもらってるんですよ!」 と好意的に発言したので、また驚いて拍子抜けた。 どうやら文

「帽子の人」

昨年の今頃、冬が近づいてくると散歩に行くのに頭が寒いだろうと、 奥さんが僕に帽子を編んでくれることになった。 アフガン編み帽子といった。 編む前にこんな帽子だと、 本の見本を見せてもらうととてもかっこいい。 モデルさんが被っている写真もセンスが感じられてとても素敵だ。 帽子が出来上がるのを、僕は楽しみに待った。 一つ問題があった。僕の頭のサイズは大きい。 奥さんは苦労し、サイズを調整しながら編んでくれた。 そして帽子ができあがった。 しかし、モデルさんが被っているのとはか

くーちゃん

月末になると奥さんは仕事の締切に追われて、疲れてよく肩が凝る。寝る前、僕は奥さんの肩甲骨から肩にかけて指圧をしてあげる。この月は肩が本当に鉄板のように凝っていて、指圧をしている僕の指が痛くなるほどだった。指が痛くなっても、肩がほぐれないので、なかなか解放されないで指圧を続けていた。奥さんはまだ不満だったようだ。でも、僕の方が疲れて肩が凝ってきたので「今日はこれで良いでしょう」といつものセリフでおしまいにしてもらった。 奥さんの肩こりは少しましになったが、今度は僕の肩が凝って

 僕は犬があまり好きでない。小さい時に野良犬に噛まれたり、吠えられたりしてその記憶が残っていて犬が怖い。  僕が疲れて家でゴロンと横になっている時に、家の前で散歩の犬がけたたましく吠えはじめた。飼い主さん同士が家の前でお喋りをはじめて、それがなかなか終わらないのでそれぞれの犬が吠えまくっているのだ。  飼い主さんは世の中すべての人が犬好きと思っているらしい。犬がいくら吠えても人の家の前でうんち、おしっこをしてもすべて許されると思っているらしい。夏になるとかなり臭うのだ。し

「雨と犬」

 郵便受けを確認しに門扉まで行くと、視線を感じた。顔を上げると三軒ほど先に、犬が居た。  その犬は飼い主さんに雨合羽を着せてもらってはいるが、それでも土砂降りの中を散歩しているのでシャワーを浴びたみたいにびしょ濡れだ。なぜか、じっとこちらを見ている。僕もよく注意して見返すと先日の例の吠えた犬の一匹だ。飼い主さんは大きな傘をさしているので犬と僕が目をあっているのに気づいていない。僕はどうして良いかわからないので、試しに人間の友達に挨拶するみたいに、 「よう」 と片手を上げてみ