<my story>今日はどんな日になるのか、していこうか。毎日が発見の日々。
京つけもの西利は漬物を主力としながら、時代の変化に合わせ、「酵房西利」「発酵生活」「AMACO」とあらたに3つのブランドを確立。ブランドの立ち上がりと共に、プレス発表会、テレビ取材など、何もわからないところから広報のキャリアを積み上げてきた私のライフストーリー。
職業:食品メーカー 広報 年齢:40代
【現在:総務部門出身の広報です】
私は大学卒業後、2004年に株式会社西利に入社をしました。
現在は通信販売事業部の中の広報・秘書として仕事をしています。
入社当初は、総務部門にて会長室で秘書のようなことが主な業務でした。
そして、新規プロジェクトを立ち上げる営業企画へ異動となり、
その後、会社として広報を専門に行う部署を作ろうという事になった際には、立ち上げから携わり、広報が私の仕事となりました。
そのような変遷できているので、広報のスペシャリストというよりは、ずっと西利にいて、その中の出身地は総務部門というのが、私の中でしっくり来ているキャリアです。
総務部門での仕事は外部との接点も少なかったので、広報でのスタート時は、営業的感覚がなかったりして、最初は戸惑いもありました。
【学生時代~就活:京都を発信できたらいいな】
私は、京都生まれの京都育ちです。
龍谷大学、社会学部社会学科を卒業しました。
就活、仕事選びの中では、京都の会社で働きたいと思っていました。
それがどうしてかなと振り返ってみると、学生時代、京都の情報誌関連のアルバイトをしていて、その経験から「京都を発信する仕事っていいな」という思いがありました。
アルバイトでの雑誌の編集が面白くて好きでした。
仕事ぶりといえば、掲載許可を取る電話をかけるのに、隣の人に「こうやって、こんな風に説明をするのよ」なんて、都度教えてもらっていましたので、全然何の役にも立っていなかったんですが(笑)。
ある特集号の時、アルバイトのメンバーも名前を入れてもらえることがあり、自分が関わった雑誌に、初めて名前が載ったのを見て、大変高揚しました。
そんな嬉しさを経験しているところから、就活時には「何か発信に携わるようなことができればいいな」と漠然と思っていました。
今の人は、入社時すでに色々と出来ることがハイスペックになっているなと思うのですが、私には出来ると言える専門分野もなく、「何も出来ない私ですが、よろしくお願いします!」そんな感じでした。
西利に決めたのも、面接を通じて、面接官と社内の温かい感じが伝わって、
何の業務でもなく、「人が温かそうだからここでやってみよう!」そんなスタートでした。
入社してみると、入社してからこれまで、毎日新しい発見ばかり。
この分野ならお任せくださいと目をつぶっていてもわかることが一つもなくて、毎日どんな事が起こるかとワクワクドキドキして日々を送っています。
気づくと思いのほか、不思議ですが「京都を発信する仕事」に携わっている。希望していたところに近づいてきているんですよね。
広報としては、素人からスタートしていますから「広報です」って言って
歩くのも恥ずかしいところではあるんですけど、少しずつ色んなことを勉強しています。
これまで会社として発信しているつもりでも、伝えられていないことが多く、それが一番の問題ですから、そこは何とか色んな場面で、発信の機会を増やしていきたいと考えています。
私は結婚・出産、産休育児休暇を経てずっと西利で働き続けています。
ライフスタイルが変化していく中で、購買層にも近くなり、より役に立てることもあるんじゃないかなと思っています。
顧客目線でも考えられたり、子育てをしている目線で商品を見ることが
出来るのもいいのかなと思うんですよね。
そんなことも活かせて行ければいいなと思っています。
【広報:スタートは社内広報誌から】
社内広報誌を2015年から始めました。
弊社では、製造から物流、販売まで、たくさんの部署があります。
勤務場所がそれぞれ違う事もあり、例えば研究室ではこう、店舗ではこんな様子といったことを、なかなか普段知る機会がありません。
社内コミュニケーション活性化の為、
「このお店でこんな表彰があったんですよ」とか、
「こんなイベントやりました」とか、素人編集なんですが分からないながらに奮闘して創刊しました。
毎月1回の発行、ちょうどそれがつい先日100回を超えました。
そう思うと感慨深いです。
2~3年前には色んなグラフィックを扱える方が入社してきてくれて、
デザインも素敵に変わってきました。
あじわいの郷工場、洛西工場、本社、全国の店舗と、情報を集めていると、実は伝えているようで、教わっているということが多かったりします。
続けていく中で「あの時こうだったね。」という風に振り返ることができる、大切な歴史が詰まっている広報物です。
【広報:成果が出始めて「こういう事かも」というのが分かり始めた】
初めて「広報ってこういうことかな」と思えたのは、2017年、「発酵生活」というブランドを立ち上げ初めてプレス発表会を開いたことでした。
新ブランドを立ち上げるという事で、弊社社長と店舗を出店することになった京都髙島屋の部長に来ていただき、メディアの方々には招待状を出して開催をしました。
プレス発表会を開催する為に、どんなことを準備すればいいのかわからないところから、手探りではありましたが無事発表会を開催できました。
翌月の店舗オープン日を迎えた際には、たくさんの方が取材に来てくださり、メディアを通して多くの方々の目に「発酵生活」を知っていただける機会を作れたことが成果として、すごく嬉しく思えた出来事でした。
「広報って何?よくわからない!」
という不安しかないスタートでしたが、結果が出て初めてこういうことが広報なのかなと思えたんです。
2021年には、漬物屋が食パンを売っているという事に注目してくださって、
テレビ東京の「カンブリア宮殿」に取り上げていただきました。
私のミッションは、「パンやスープ、ドレッシングなど色々な商品を出しているその背景には、漬物を知ってもらいたい想いがあるからこそ。」ということを、番組を通して伝えてもらう事。
私も自社のこと、ブランド・商品のことを学び、知っていたつもりが、テレビ局の方が本当にしっかりと、製造から販売まで密着して下さったので、そうなんだと改めて気づかされたことが多くありました。
特に、私が気づき得られたのは「人の想い」でした。
西利の漬物の原料となる野菜はすべて国内の契約農家さんから仕入れているのですが、テレビ局の方が急遽「契約農家さんにも取材したい。」ということで、契約農家さんの畑へ取材に行くという事がありました。
取材の2・3日前に連絡をして「明後日行かせてもらえませんか?」とお願いをすることとなったのですが、農家さんは忙しい時期に収穫のスケジュールを変えてまで取材を受けて下さりました。
「自分が(取材を)受けることで、うちの漬物が一個でも多く売れてもらえたらそれでいい。」と言って下さって。
それまで「製造から販売まで一貫して」と思って、広報していたんですけど、「いやいや違う違う。野菜を作ってもらっている契約農家さんから全部でひとつのチームなんだ。」と肌で感じました。
「千枚漬」をひとつの商品としてみていましたけど、取材後は、その裏では「何時に収穫したらより良いから、このタイミングで収穫します」とか、「自分が採った野菜がどうなったか、京都の店舗まで見に行くことがあるねん」と他府県から来てくださる、そんな契約農家さんの存在を近くに感じるようになりました。
これだけみなさんの仕事があって、この商品があるんだということ。
自分だけが感動して終わるのではなくちゃんとこの想いも伝えたい。
社内だけではなく社外にもきちんと伝えていきたいと思うようになりました。
まだ道半ばですが、大事にしたい想いです。
【ブランドが4つ!広報の軸が出来た】
「京つけもの西利」はその名の通り、京漬物が主軸の商品です。
食が多様化している今、「お漬物とお味噌汁とごはん」という理想的な和食を摂られる機会が少なくなってきているんですよね。
しかしながら、野菜や発酵や乳酸菌に注目されている健康志向の方は多くいらっしゃる。
乳酸菌と野菜を一緒に食べるって、実はお漬物なんですよね。
漬物を発酵させるものは乳酸菌なので、お漬物に興味がない方にも切り口を変えてアプローチしたい。
そこで、2017年に「発酵生活」というブランドを立ち上げました。
伝統の京漬物「すぐき」から発見された乳酸菌、ラブレ乳酸菌を使って発酵させた野菜を使ったスープやドレッシングを商品化、2017年に京都髙島屋に店舗を立ち上げました。
さらに、お漬物の技術を使ってご飯をおいしく食べてもらおうという想いで、「酵房西利」というブランドを立ち上げました。
西京漬や、奈良漬クリームチーズ、すぐきやへしこを使った炊き込みご飯のもとなどが人気となっています。
2018年には、みなさんにお漬物って良いなということをもっと感じてもらいたいという想いがある中で、世間では麹が注目されているという流れがあり、漬物屋にも麹床があるのでそれを使ってお客様に何か貢献できることはないかと考えた所、麹に乳酸菌を加え、からだに良いものを作りたいというコンセプトで「乳酸発酵甘麹AMACO」の開発、商品化に至りました。
ドリンクバーを京都駅内、京名菓・名菜処 亰(みやこ)に「酵房西利 亰(みやこ)店」をオープンし、1日1杯の健康習慣ということで乳酸発酵甘麹ドリンクの提供をを始めました。
これ以外にもっと乳酸発酵甘麹を活用するにはどうしたらいいんだろう。
そんなことを検討している中で「乳酸発酵甘麹を使ってレアチーズケーキを作りました!」と実際に作ってきた社員がおり、チーズケーキができるんだったらほかのスイーツもいけるだろうということで「AMACO」というパン・スイーツのブランドを立ち上げることになりました。
これで、ブランドが4つになったんです。
パンが流行っているからパン、カフェが流行っているからカフェじゃなくて、色んな入口で発酵や乳酸菌に触れていただいて、最後はお漬物に戻ってきてくださるというのが一番の目標です。
今、AMACOのブランドとしては、立誠ガーデン ヒューリック京都に2020年
「AMACO CAFE」という店舗をオープンしました。
AMACO商品と発酵生活商品を体験し、お土産も買っていただけて、テイクアウトもしていただける、その場でも食べられてというお店を展開しています。
西利本店では、4つのブランド商品がそろう総本店となりました。
2FのAMACOCAFEでは「乳酸発酵甘麹AMACO」を使ったパフェなども食べていただけます。
乳酸菌は継続摂取が必要なんですよね。スープやパン、ドレッシング、スイーツ、もちろんお漬物。日常に西利の商品を置いていただいて、漬物屋なのにじゃなくて、漬物屋だからこそというポジションを確立していきたいなと思います。
「こんなこと、あんなことやっているんですよ。」
と言っているつもりなんですけど、
「そうなんだ、お漬物屋さんだと思っていた。」
「こんな商品もあるのね、知らなかった。」
という機会に触れることがまだ多くあるので、まだまだ発信力を付けて、
どんな媒体を使うのか、SNSをどう使うのか、本当にわからないながらに
ですが、考えながらお届けできるように、伝えられるように頑張りたいと思います。
仕事をするうえで「これでいいや」というのがない。
それがこの仕事の魅力だなと思います。
【これからの私:広報のエキスパートに】
今は手探りでやってますとしかお伝えできていませんが、しっかりと経験を積んで色んな人にアドバイスが出来たり任せていけるくらい広報のエキスパートになっていきたいなと思います。
その為には自分がまずはたくさんの発信が出来るようになって、人に伝え、もう少し俯瞰して全体を見れるようになっていきたいです。
【働く上で大事にしていることは?】
興味をもって、まずはやってみる。
失敗しても何かになるかもしれない、つながるかもしれないし、違うとしても違うという事がわかる。それが軽率な行為だったりすることもあるんですが、自分の中ではそうしてみたいと思っているんです。
どんなことでもやっている中で楽しみを見つける。その中で楽しみを見つけたいと。
最近やっと、これまでやってきたことや、出来事が色んな事につながってきました。
2017年の「発酵生活」のブランド立ち上げで、色んな部署から人が集まってきて、料理家4人の方とコラボレーションしたメニューを作ったりして。
その時にできたネットワークがまた違うブランドを発表するときに力になったり。
その時にはわからないな難しいなと思ったことも、実はあの時言おうとしていたことってこういう事なんかなって思ったり。
今、本社の2Fでは予約制でぬか漬教室をしているんですが10年程前に社長から、いつか体験型の「教室」をやりたいという話を聞いた時には、どういうこと?と思っていたんですが、実際にその話が進むと、「ああ、これがあの時に話していたこういうことなのか。」なんてことも。
重ねていく中で何か過去に体験したことが、時を経て生かせたりつながったときには面白さを感じますね。
私は高校時代に吹奏楽部に所属していて、バストロンボーンという楽器担当
だったんですけど、この楽器って低音で、自分のパートだけ練習していると主旋律じゃないことが多いので全然何の曲かがわからなくて、ずっと休んでいて突然「ボン、ボン」なんて。
これだけ聞くとどいう曲なんだろと思うんですけど、でも全体で合わせるとなるほどこの時に入るのか!と納得がいくというか、そういった感覚に
近いのかなぁと思います。
その時々は大変、でもどんどん時間が経つと「あの時一丸となってやれて楽しかった」となることが多いですね。
大変じゃないと、すごく心動かされないと良い思い出にもならない。
これからも「やってみる」ことは大事にしたい。
そう思います。
【子育てをしながらのフルタイムは葛藤とまだ道半ば】
家族の理解があり、サポートしてくれているので今はフルタイムに戻しました。
小学生の娘にどう映っているかは分からないですけど、手紙を書いてくれたりとか段ボールでパソコンを作って真似をしてくれる姿を見ると、応援してくれているようで嬉しいです。
(娘)「私の作ったお守り見た?」
(私)「みたみた」
なんて、そんな会話が元気の源になっています。
遅いときもあり、寂しい思いをさせているかもしれないですが、じゃあ別の働き方でどうなのかというのもありますし、私が選んだ道で頑張っている姿を見せられるようにと思います。
60代くらいになって、あの選択はどうやった、こうやったって笑いながら話せたらいいなと思います。
【京都ってどんな場所?】
古いけど新しいものに挑戦できる場所
歴史とか古都とかありますけど、伝統の中にも新しさがあるというのは
京都ならではなような気がします。
編集後記
とっても明るく何事も前向きにお話をされる長谷川さん。発信することの難しさ、大変さ、大切さをまるごと面白みとしてチャレンジしていらっしゃる。働くって面白いことなんだということを体現されている方だなとお話を聞いて強く感じました。同じ日は一日たりともない、今日はどんなことが起こるのか楽しみになる働き方を、長谷川さんのお話から感じていただければ嬉しいです。
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