映画「a-ha THE MOVIE」感想
一言で、ノルウェー出身のバンドa-haのドキュメンタリー映画です。紆余曲折を経ながらも、オン・オフを大事にして音楽活動する彼らに、スターの凄さだけでなく、「人間の普遍性」も感じました。
評価「C」
※以降はネタバレを含みますので、未視聴の方は閲覧注意です。
・主なあらすじ
本作は、ノルウェー出身のシンセ・ポップバンド「a-ha」の約35年に渡るキャリアをドキュメンタリー形式で辿る映画です。本人映像と関係者インタビュー(本人達・プロデューサー・ジャーナリストなど)を交えた内容となっています。
1. a-haってどんなバンド?
a-haは、1982年にノルウェー出身のモートン・ハルケット(リードボーカル)、ポール・ワークター=サヴォイ(ギター・バックコーラス)、マグネ・フルホルメン(キーボード・ギター)の3人により結成された男性シンセ・ポップバンドです。
1984年、デビュー曲「テイク・オン・ミー」が母国ノルウェーで3位のヒットを記録し、翌1985年、アラン・ターニーによるアレンジが加えられて再びリリースされ、全米1位・全英2位の大ヒットを記録しました。
この「テイク・オン・ミー」ら4曲のヒット作が収録された1985年のデビューアルバム『ハンティング・ハイ・アンド・ロウ』は、全世界で1,100万枚以上のセールスを記録しました。また、第28回グラミー賞最優秀新人賞へノミネートされ、第3回MTV ビデオ・ミュージックアワードにおいても8部門ノミネート、6部門受賞となりました。
その後、セカンドアルバム『スカウンドレル・デイズ』には、映画『007/リビング・デイライツ』の主題歌「リビング・デイライツ」が収録され、サードアルバム『ステイ・オン・ディーズ・ロード』のタイトル曲「ステイ・オン・ディーズ・ロード」など、1990年までに多くのTOP10ヒットを生み出しました。
また、1991年にブラジルのリオデジャネイロで開催されたロックフェスティバル“ロック・イン・リオⅡ”で198,000人の観客を動員し、当時のギネス記録となりました。
1993年以降は活動を休止し、ソロ活動がメインとなりましたが、1998年、オスロで開催された“ノーベル平和賞記念コンサート”へ出演を機にバンドとしての活動を再開します。しかし、2009年、世界ツアー“Ending on a High Note”を最後に解散を発表し、2010年12月にノルウェー・オスロスペクトラムで開催されたコンサートを最後に解散しました。
2015年、「テイク・オン・ミー」から30周年を迎えるにあたって再結成し、9月にブラジルのフェス“ロック・イン・リオ”へ出演したほか、6年ぶり10枚目のアルバム『Cast In Steel』をリリースしました。また、2022年秋にニューアルバムのリリースを予定しており、現在でもシンセ・ポップバンドの最前線を走り続けています。尚、現在までに売れたCDトータルセールス数は、約5,000万枚以上と言われています。
2. 「テイク・オン・ミー」のヘビロテには痺れる!
デビュー曲の「テイク・オン・ミー」の知名度は凄まじく、上記のレコード売上数や受賞歴だけではなく、You TubeのオフィシャルMV総再生数が14億回を記録するほどのロングランヒットとなっています。
本曲は、マイケル・ジャクソンの「ビリー・ジーン」を手掛けたスティーブ・バロンが監督を務め、アニメーションと実写を巧みに組み合わせた革新的なMVが、当時台頭していたMTVとの相乗効果もあって大きな話題を呼び、全世界的なヒットとなりました。※出典に公式MVのリンクを貼りました。
作中では、ポップ調やバラード調、アップテンポやスローテンポなど色んなバージョンの「テイク・オン・ミー」が歌われたため、鑑賞後もずっと頭の中でヘビーローテーションしていました。映画館の「驚音上映回」で観たせいか、音響はとても素晴らしく、ライブ感の高さには満足しました。序盤のシンセのアップテンポなリズムで、思わず手拍子して体を動かしたくなりました。
そして、有名故に、本曲が挿入歌てして使われた作品はとても多いです。例えば、映画「ラ・ラ・ランド」・「デッドプール2」・「バンブルビー」・「怪盗グルーのミニオン大脱走」・「FLEE」など。そのため、a-haをあまり知らなくても、本曲は知っている人も多いと思います。
ちなみに、このアニメーションとの融合やコミック風の演出は、映画「エルヴィス」や「スージーQ」にも似たような物があったと思い出しました。各国の新聞記事の写真が動く演出がありましたが、その一部に日本語があったのは嬉しかったです。
3. やはり、イギリスはバンドブレイクの場所なのか。
イギリスのロンドンは、世界的な流行の発信地と言われており、音楽もその一つでした。ビートルズやローリング・ストーンズなどのUKロックバンドがブレイクしたことで、渡英して一旗揚げようとするアーティストが増え、a-haもその一つでした。※渡英してブレイクしたアーティストといえば、「スージーQ」もそうでした。日本のアーティストなら、布袋寅泰さんも渡英されています。
4. 彼らが世界の音楽界に与えた影響は途轍もなく大きい!
彼らはノルウェー出身のアーティストで、初めて世界的に売れました。彼らのシンセ・ポップの独特なパフォーマンスは、世界中にファンを生み出しました。
日本にもツアー時に来訪しています。(作中にて、日本の映像がチラッと映りました。)新幹線こだまの中でも音楽活動をしたり、どこかの商店街で沢山のファンに囲まれたり、とても人気なアーティストなんだと実感しました。
ちなみに、彼らのシンセ・ポップなジャンルはYMOやゴダイゴ辺りに影響を与えてそうな感じがします。
5. 「一人になる時間の大切さ」を伝えてくれる。
a-haは、40年近いキャリアの中で、ソロ活動・活動休止・他のバンド活動・解散・再結成と、何度か活動形態を変えています。
そこには、世間で「求められる」像と、自分達が「なりたい」像への乖離で気持ちが揺れたことがあるそうです。
彼らは、そのルックスの良さからアイドル的な存在になり、アイドル誌に取材されたり、黄色い歓声を浴びせられたり、売れっ子ではあったそうです。しかし、彼らとしてはどこか「コレジャナイ」と思っていたとのこと。
そのため、3人の活動だけでなく、上記のようにソロ活動や他のバンド活動にも力を入れ、芸術家としての才能をうまく「分散」していたそうです。
スージーQもそうでしたが、a-haも仕事のオンをオフを大事にして、自分を律していらしたそうです。
だから、アーティストにありがちな「センセーショナルで波乱万丈人生」ではなかったようです。
これらからは、仲良しだからとベッタリするのではなく、「一人になる時間を作ること」や「適度な距離を置いて付き合うこと」が大事だと教えてくれました。
6. 彼らを結ぶものは「友情」ではなく、「音楽の絆」だ。
作中のインタビューで、「a-haを結ぶものは何か」と聞かれたとき、彼らは、「音楽の絆」だと答えていました。
彼らは、音楽に対する拘りが強いせいか、意外と衝突していました。作中でも、意見がまとめることは難しいと話していました。
また、持病があるメンバーもおり、思うように活動が難しかった時期もあったとも。
そんな中でも、トリオの活動・ソロ活動など、沢山の草鞋を履きながらa-haの活動を続けてこれたのは、「友情」を超えた「音楽の絆」があったからでしょう。
ここからは、栄光と挫折、光と影があることで、スターとしての凄さと、人間の「普遍性」みたいな部分の両方を見せてくれたと思います。「偶像」としての存在だけではなく、彼らも私達も「変わらない」部分があると思いました。
7. 洋楽好き・ジョジョ好きには堪らないアーティストや楽曲が沢山登場する。
作中では、QUEEN、ビートルズ、ジミ・ヘンドリックス、プリンスなど、彼らが影響を受けた有名アーティストが続々と紹介されました。彼らのライブ映像が出できたときは、とてもテンションが上がりました。
その中には、荒木飛呂彦先生の漫画「ジョジョの奇妙な冒険」のキャラ名やスタンド名の由来となったアーティストも多くいて、その度に喜びました。
また、音楽史を通してみると、「あの人」と「この人」が「繋がってたんだ!」、「影響を受けていたんだ!」と驚きました。勿論、a-haも、後続のアーティストやバンドに沢山影響を与えています。
敢えて言うなら、モートン、ポール、マグネ、それぞれ3人のバイオグラフィーが交互に登場するせいか、時系列を整理するのにちょい時間がかかりました。「今、誰の話だっけ?」みたいに。しかし、それは作品の瑕疵という程でもないです。
出典:
・「a-ha THE MOVIE」公式サイト
https://klockworx-v.com/a-ha/
※ヘッダー画像は本サイトより引用。
・「a-ha THE MOVIE」公式パンフレット
・a-ha Wikipediaページhttps://ja.m.wikipedia.org/wiki/A-ha
・テイク・オン・ミー オフィシャルビデオ
https://youtu.be/djV11Xbc914