読書レビュー #5:辻村深月 『冷たい校舎の時は止まる』

高校の制服って、校則とは別にローカルルールみたいなのがある気がする。
スカートの裾は長い方がイケてるか、短い方がイケてるか。
腰パンはするか、否か(腰パンって死語?)。
靴下の長さや色、夏場でもベストを着るかどうか...。
個人的には、「自分の地元の女子高生はスカートの丈をとっても短くする」って話したとき、
教授さんが「それはいいじゃないか!!!」って食いついたのが良き思い出。

さて、今回も読書レビューを書きたいを思います。

1. 作品紹介

タイトル:『冷たい校舎の時は止まる』
作者:辻村深月
簡単なあらすじと試し読みは、以下の講談社文庫のサイトにあります。


センター試験まで残り1ヶ月、雪の降る寒い朝。
いつも通り登校した8人の生徒は校舎に閉じ込められる。
ここはどこか、ここから出られるのか。
謎を解く鍵は、数か月前の学園祭で起きた事件までさかのぼる...。

2. 読書レビュー(ネタバレ注意)

辻村深月さんの作品のなかで、この『冷たい校舎の冷たい校舎の時は止まる』が一番好きです。
たぶん、主要な8人の登場人物の全員に対して、親近感が沸くからだと思います。
「この人、私と似てる!」みたいな人はいないのですが、それぞれの人間性や物事の捉え方、苦悩していることなど、一部分にものすごく共感します。
まるで、自分が断片化して散らばって、別の何かを身につけて新しいひとりの人間になって集まってきた感じです(伝わりますか...?)。

「学園祭の最終日、自殺したのは誰か?」
数ヶ月前の大きな事件のはずなのに、誰もそのことを思い出せない。
しかも、その誰かは今、目の前にいる8人の仲間たちのひとりの可能性が高い...。
いったい誰なんだろう?本当にあの子なのだろうか?
最後にその誰かが分かったときの驚きと、今まで感じていた違和感がすべてが解消されていく感じと、これからどうなるんだろう?っていう心配と...。
中盤までは、登場人物に丁寧に寄り添うテンポで読んでいたのですが、
ラストはいろんな感情が押し寄せてきてページをめくる手が止まりませんでした...。

実は、この小説の存在を知ったのは、中学生の時。図書委員の友達がPOPを書いていたんですよね。
ずっと読みたいなーと思っていたけど、高校はとにかく忙しくて本を読む暇がなかった。
大学生になって少しだけ時間に余裕が生まれ、ふと思い出して辻村深月作品を古本屋で大人買い(人生初めての大人買いで、本当に大人になった気がした)。
後悔していることが一つだけあります。
「なんで、自分は中学と高校でこの作品を読まなかったのか...」
何回かこの作品を読み返すと、
同じ言葉に共感したり、
違う言葉が引っかかるようになったり、
かつてものすごく響いた言葉がなんだか実感のないものになってしまったり。
高校までの、本当に狭い環境が私のすべてだったときに、
この作品を読んだら...。
大きく今の環境が変わることはないかもしれないけど、
少なくともいい思い出がひとつ、できたんじゃないかなと思います。

3. 心の寿命

「自殺ってのは寿命だよ。身体じゃなくてもな、中身がもう生きていけないっていう寿命だ。...(以下略)」
『冷たい校舎の時は止まる(下)』、講談社文庫 p. 28より

この言葉を初めて読んだ時の衝撃は忘れられません。
身体的な寿命と心理的な寿命。
自分は、誰かの心の寿命を短くしてはいないだろうか、
長くはできなくてもいいから、誰かを追い詰めるような存在にはならないように生きていきたいな、と思います。

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