読書レビュー #6:辻村深月 『子どもたちは夜と遊ぶ』
思い出深い夜遊びがある。
友達二人と、人生で初めてカラオケオールした。
お世辞なのは確実だけど、人生で初めていい声だと褒められた。
そしてなぜか、声が枯れてきた朝の4時に、人生で初めて90点台を叩き出した。
卒業を機に疎遠になってしまっているけど、3つの「人生で初めて」に付き合ってくれた二人の友達は元気だろうか?
ちなみに、90点台を出した曲は乃木坂46さんの『ハルジオンが咲く頃』です。
さて、思い出話は置いといて楽曲れ...違う、読書レビューを久々に描いていきたいと思います。
1. 作品紹介
タイトル:『子どもたちは夜と遊ぶ』
作者:辻村深月
簡単なあらすじと試し読みは、以下の講談社文庫のサイトにあります。
愛する兄に再会するために、残酷なゲームに参加する浅葱(あさぎ)。
そのゲームは浅葱を疲弊させ、浅葱の周囲の人間さえも巻き込んでいく。
兄の正体が明らかになる最後の瞬間まで、ぜひ読み届けていただきたい作品です。
2. 読書レビュー(ネタバレ注意)
ある意味、犯人の半分は分かっている状態なのですが、色々とモヤモヤする部分が最後に線できっちり結ばれるのは「さすが辻村さん」と脱帽しました。
たくさんの「言葉遊び」が隠されているので、再読必須かなと思います。
怒涛の伏線回収に病みつきになりました...。
辻村作品に共通して言えることですが、
この作品の登場人物全員に幸せになって欲しい、そう自然と思えます。
浅葱と月子(つきこ)が最後に会話するシーンはとても切なかったです。
いろんなことのタイミングがちょっとずつズレていて、
そのどれか一つでもきっちりはまっていたら、きっとここまで悲しいことにはならなかったんだろうな。
過去は変えられないけど、この作品で出会えた登場人物たちの未来が
穏やかで暖かいものであってほしいです。
個人的な話ですが、
大学院生が出てくる作品にはなかなか出会えないので、とても嬉しいです。
大学院進学率なんて、全人口からしてみたらちっぽけなものなので、
小説の題材になることが少ないのはわかるんですけどね。
夜遅くまで研究室に残ったり、教授さんとディスカッションしたり、
研究がうまくいかなくて落ち込んだり、将来の進路に悩んだり、
意外とお話として切り取ったら面白い部分も多いとは思うんですけど...。
この作品も、決して大学院生活にがっつり触れているわけではありませんが、
院生の忙しさみたいなのがちょこちょこ表現されていて、
とても懐かしい気持ちになりました。
3. 歯止めになる存在
「人間てのは、大好きな人が最低一人は絶対に必要で、それを巻き込んでいないと駄目なんだ。そうでないと歯止めがかからない」
(『子どもたちは夜と遊ぶ(下)』、講談社文庫p251より)
なんかもうどうでもいいかって投げやりになる時があります。
でもそんな時、自分にとって大事なコミュニティを思い浮かべると
もうちょっと頑張ってもいいかなって思えます。
だいぶ自分勝手な発想かもしれないけど
相手の迷惑にならなければ、無断で「私の大切な人認定」して
それを拠り所に生きていくのも悪くはないのかな、と思う今日この頃です。
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