稲盛和夫の背中
はじめに
稲盛和夫氏。京セラを設立し、KDDIを設立、さらにはJALまでも再建した敏腕経営者である。稲盛和夫氏はどんなことを考え、どんな信念で人生を生きてきたのか。本noteでは、稲盛和夫氏が書いた「生き方」に着目し、人生とは何を大切にして生きていけばいいのかというテーマで8つのヒントを紹介していく。
人生の目的をひとことで表すと?
「もっとも根源的ともいえるその問いかけに、私はやはり真正面から、それは心を高めること、魂を磨くことにあると答えたいのです。」
稲盛和夫氏は仏教に帰依しており、根本的な考え方は仏教的だ。しかし、今の考え方に置き換えて考えると「魂=人間力」とも言えると思う。それを高める手段は例えば、仕事であったり、趣味であったり、子育てであったりと千差万別かと思うが、そういった目の前のことに精進することで最終的なゴールである自分の心を鍛えることにつながる。そう稲盛和夫氏は述べている。
正しく生きろ
稲盛和夫氏は何も生まれた時から敏腕経営者だったわけではない。では初めての経営はどのように行ったのか。それは人間として当たり前の正しいことを貫くことだそうだ。例えば、嘘をついてはいけない、欲張ってはならない、人に迷惑をかけないなど本当に基本的なことである。
これは経営に限った話ではないと思う。人として正しく生きるために当てはまるものであり、当てはめていかなければならないものである。そもそも経営とは人々の統率でもあることから、その経営の考えが個人の統率にも当てはめて考えても違和感はない。
幸福の方程式
稲盛和夫氏が考える人生や仕事の成果は以下のとおりだ。
「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」
ここでは、「能力」が先天的な運動神経や健康を指すのに対して、「熱意」は後天的な「事をなそうとする情熱や努力する心」、そして一番重要な「考え方」は自分の信念や哲学を示す。注意しておかなければならないのは、「考え方」、「熱意」、「能力」のいずれかがかけても成立しない上、足し算ではなく、掛け算なため、全てがプラスの方向に向いていなければ、マイナスの結果が出てしまうということだ。例えば一番重要な「考え方」において悲観的というマイナスな項目を持つと全てがずっこけてしまう。したがって、常に前向きで感謝を忘れないことが重要になる。
個人的には、悲観的な部分があるので、改めないといけないと反省した。また、最近読んだオグ・マンディーノによる「12番目の天使」にてティモシ―という不器用な少年が「毎日、毎日、あらゆる面で、僕はどんどん良くなっている」と自己暗示していて私も毎日それを唱えようと思った。
夢を大胆に描け
仏教には「思念が業をつくる」という言葉があるらしい。すなわち自分の思い描いたことが因果応報となるので、自分の考える内容や想いを大事しなさいという考え方だ。だからこそ、あることを成し遂げたいと思った際には強く強くそのビジョンを思い描くことが大事だそうだ。そしてその際には毎秒毎秒思い続けないといけない。そうして自分の潜在意識に叩き込むのだ。しかし、実行の際は慎重に行わなければならない。稲盛和夫氏も『楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する』と述べている。
私も人生に悩む20代の今だからこそ、人生の夢は大きく描こうと思った。慎重な性格なので実行する分には問題ないと思うが、先ほども述べたように悲観的な部分があるので、人生のビジョンは大胆に描こうと思う。
今を生きろ
「今日を生きることなしに、明日はやってきません。明日もわからないのに、五年先、十年先のことがはたして見通せるでしょうか。」
SNSが発達し、さまざまな情報が溢れる今、ネガティブなニュースが目に入りがちだ。この先の未来はどうなるのだろうか。そしてその中で私はどう生きていけばいいのか。そんな漠然とした不安に押しつぶされそうになる。しかし、未来は今の積み重ねだ。だからこそ、そんな時こそ未来のためではなく今のために今を精一杯生きてみるべきだ。
自ら燃えることができる人間になれ
「ものには三つのタイプがあります。
①火を近づけると燃え上がる可燃性のもの。
②火を近づけても燃えない不燃性のもの。
③自分で勝手に燃え上がる自燃性のもの。」
人間も一緒で、私たちは③のように、他者から言われる前に積極的にかつ能動的に物事を始めなければならない。ではどうしたらそのような行動を移せるのか。ひとことで言うと「仕事に一所懸命打ち込んで、仕事を好きになること」だそうだ。確かにことわざでも「好きこそものの上手なれ」と言う。でも仕事って嫌な部分もあるし…、となるかもしれない。そう言う時は「利己的な欲望を抑えること、自分を甘やかそうという心をいさめること」が肝要だそうだ。
この最後の「利己的な欲望を抑える」ことが一番難しいかもしれない。やはり他者の反応をうかがってしまう。しかし、これは後でも説明があるが、他者のためを思って動くことが重要だ。
心を磨く6つの精進
「 ①だれにも負けない努力をする
人よりも多く研鑽する。また、それをひたむきに継続すること。不平不満をいうひまがあったら、一センチでも前へ進み、向上するように努める。
②謙虚にして驕らず
「謙は益を受く」という中国古典の一節のとおり、謙虚な心が幸福を呼び、魂を浄化させることにもつながっていく。
③反省ある日々を送る
日々の自分の行動や心のありようを点検して、自分のことだけを考えていないか、卑怯な振る舞いはないかなど、自省自戒して、改めるよう努める。
④生きていることに感謝する
生きているだけで幸せだと考えて、どんな小さなことにも感謝する心を育てる。
⑤善行、利他行を積む
「積善の家に余慶あり」。善を行い、他を利する、思いやりある言動を心がける。そのような善行を積んだ人にはよい報いがある。
⑥感性的な悩みをしない
いつまでも不平をいったり、してもしかたのない心配にとらわれたり、くよくよと悩んでいてはいけない。そのためにも、後悔をしないようなくらい、全身全霊を傾けて取り組むことが大切である。」
個人的には⑥が一番響いた。というのも私自身優柔不断で女々しい部分があるからだ。これからは過去ではなく、今を生きることを意識してすぐに心を切り替えたいと思う。
利他の心を持て
利他の心とは、世のため人のために公益を図ろうとする心のことだ。これは「ミッション 元スターバックスCEOが教える働く理由」にて岩田松雄氏も
「ミッションを構築するにあたって、私自身が重要だと考えるのは、無私、つまり「私」を無くすことです。 ここで言う「私」とは、たとえば自分の出世のためや、お金儲けをしようといったたぐいの気持ちです。」
と述べていた。他の経営者も利己的な精神の大切さを説いているということは本当に成功に繋がるのだろう。また、「情けは人のためならず」と言うように、人への親切は巡り巡って自分に返ってくるので無私の心を大切にしたい。
終わりに
私はこの本を尊敬する方から勧められて読んだのだが、もっと早く知っておけばよかったと後悔している。なにも経営を目指さなくても人生において重要なヒントばかりだったからだ。特に、夢を大胆に描くことはその尊敬する方もおっしゃっていたので、5年後、10年後の理想の自分を思いっきり描いてそれに突き進んでいきたい。