好き嫌い
お父さん、もう冷製パスタ作らないでね!
ようやく皿が片付いて息子がぼくに言った。自家栽培のバジルを大量に使用してトマトと合わせたソースをカッペリーニにからめて食べる冷製パスタは夏にもってこいである。それを不味くて食えないからもう作るななどと息子が言うもんだから頭にきて、お前がなんと言おうとまた作ると大人気なく宣言した。
最近子どもたちが好き嫌いを言うようになった。息子は5歳のときはなんでも食べたが、娘は5歳にしてもう好き嫌いを言っている。
ナスやだ。
夏なんだからナスたくさんあるに決まってるだろ。
お父さんナスやだよう。
うるさい、うちにはナスしかない。
兄弟してナスを嫌う。ナスは夏野菜の代表格である。ゆえに値段が安いのでつい買ってしまう。しかしこどもたちは強制的に与えた小さな欠片を一口食べておしまいである。
おれツルムラサキ苦手。
うえ、まっじ。
なんて言葉遣いだ。納豆好きなんだからネバネバ好きだろ。
違うよ、納豆には味があるけどツルムラサキには味がない。
あるよ。ほらこんなに美味しいじゃないか。キミたち感じ悪いよ。文句言ってもわけた分は食べなさいよ、わかったな。
ぼくの得意料理のひとつにじゃがいものガレットがある。薄く細く刻んだじゃがいもをバターで焼くだけなのだがこれがなかなか美味いのである。最初の頃は子どもたちも喜んで食べていたが、作りすぎたせいか、ある時点からまったく食べなくなった。
お父さん今日のごはんなあにと聞くからじゃがいものガレットと答えるとえーという。作る工程は簡単だが刻むのに時間がかかるためそういう意味で手間のかかる料理である。それを一生懸命作って不味いだの食べないだの言われると腹が立つ。
ぼくの得意料理のひとつにキャロットラペがある。夏の料理にぴったりで毎日とは言わないが二日に一遍くらいの高頻度で作っている。それも飽きてきたのか最近は食指が伸びなくなったので、こないだ息子に作らせたのである。
ぼくは口出しするだけで一切手を貸さずに全工程を息子に作らせた。そしたら大変さがわかったのと、自分で作ると味もまた格別といって好きになったようである。そして自分が一生懸命作ったものを不味いだの食えないだの言われると嫌な気分になるということも学んだようである。ぼくの真の狙いはココにあった。
お兄ちゃんが作ったと知ると今度はアタシがやりたいと妹が名乗りをあげた。すべてぼくの計算どおりである。フハハハハハハ。
キャロットラペは最初の千切り器で手を擦らなければ、あとは火も使わないから子どもにさせやすい料理である。今夜あたり娘にもさせようかと思う。
好き嫌いを減らすには自分で作らせるに限る。
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