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デジタルネイティブ世代の息子が誕生日プレゼントに選んだのは万年筆でした。
10歳になる息子に誕生日プレゼントなにが欲しいと聞いたら万年筆と即答した。ほう、なかなか渋いものを欲しがるではないか。しかしおもちゃが欲しいなどと言うよりよほどよい選択である。
息子は文字を書くのがとにかく好きである。ノートにびっしり小さな文字を埋め尽くしている。何を書いているのかと思えば図鑑を丸写ししているのである。写本である。コピー機がない時代と同じことをしている。
バードウォッチングへ行くときは必ずメモ帳と鉛筆を持参する。見た鳥の名前を書きつけるためである。そんな文字好きだから漢字を覚えるのは非常に早かった。
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ハリー・ポッターの影響で羽根ペンにハマったことがある。森でカラスの羽根をひろってきて墨汁をつけて書くのである。最初はハトの羽根だったが小さすぎて書きにくいという。それでカラスの羽根がたくさん落ちている場所へ連れて行ったら大喜びした。猛禽類かなにかに食われたカラスの残骸が落ちていて、まだフレッシュな羽根がそこかしこに散乱している。
ダニがついているかもしれないからよく洗えよとぼくは言った。羽根は撥水性があるから多少水で洗ったところで問題がない。やはり大きい羽根は書きやすいらしい。そしてその流れで万年筆である。
どこで万年筆を知ったのか。ドリトル先生などに出てくるのだった。
お父さん万年筆ってなに?
万年筆というのはだな。重力で落ちてくるインクを毛細管現象を利用してペン先に誘導してそれで書くペンのことである。
ボールペンと違うの?
ボールペンは先端に小さなボールがあってそれが転がるだろ?だから書き味が滑らかなんだ。万年筆はペン先が尖った金属だからカリカリって感じ。
鉛筆みたいなの?
鉛筆は先端が減ることで滑らかに書けるだろ?万年筆の先端は減らないから、うーんこれ以上言葉で説明するの無理。
お父さん万年筆欲しいなあ。
いいよ。誕生日プレゼントにな。
というわけである。
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ぼくも昔LAMYのサファリを買ったことがある。しかし紙に引っかかる感じが好きになれずに使わなくなってしまった。パイロットのペン先がミュージックを使ったこともある。ミュージックペンというのは楽譜を書くために作られたペン先で、縦に書くと太く、横にかくと細く書けるのだ。
別に楽譜を書くわけではないが、その仕様を面白がって使ったことがある。しかしそれもインクがなくなった頃にどこかへいってしまった。それもこれも大人になってからのことである。子どもの頃に万年筆が欲しいと思ったことなど一度もなかった。
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息子へのプレゼントは数ある万年筆メーカーの中から安定のパイロット製を選んだ。インクカートリッジがどこでも入手でき、且つ安価であるという理由である。息子には予備で二箱インクをつけたが、それがなくなったら自分で買いなさいと言ってあるのだ。
購入したのはカヴァリエというモデルで、万年筆にしてはかなり細身なのが決め手だった(あと価格も)。予想した通り手の小さな子どもにはジャストフィットであった。
親としては子どもがこういうものを欲しがってくれるのは嬉しいものである。なんでもかんでもおもちゃおもちゃではまたかという気持ちにしかなれないものなのだ。
プレゼントした万年筆を息子は非常に気に入ってくれたようで枕元に置いて寝ているし、ちらと見えたノートもブルーブラックに染まっていた。
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