多様のただ中に身を置いてこそ。
黄色くて、小さくて、黒い目がくりくりかわいいヤツらが生まれた。
ハラビロカマキリである。
ハラビロカマキリの孵化はオオカマキリよりおよそひと月遅い。
そして、午前中に生まれることの多かったオオカマキリに対して、ハラビロカマキリは夕方に生まれる傾向にある。
どうしてそうなのかは知らないが、面白いなと思う。
今年はこれでカマキリの孵化見学はおしまいだ。
冬の間占拠していた花瓶が次々と空になった。そして今日最後の一本が終わったのだ。
季節はいよいよ昆虫本番へと近づいていく。
昔は夏が嫌いだったが、息子と虫捕りをするようになってから夏が大好きになった。
とくに暑くて息苦しいほどにむわっと湿気を帯びた夜は最高だ。
梢にセミが鳴き、草原にクツワムシがガシャガシャとやかましい。
夏の夜はじつに賑やかである。
一体何種類の虫の声を聞き分けられるか。
僕がこどものころに体験した音の数々を、今息子が体験している。こうした経験が原風景となって記憶に深く刻まれる。子どもの頃の言葉にならない感動がどれだけ大切か。多様のただ中に身を置いてこそ。
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