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あっけないいのち

ヤママユガの繭である。
ヤママユガは絹の原料になるカイコ蛾の原種である。つまり、これは天然の絹であり正真正銘のナチュラルシルク(の元)である。
 
森で拾ったこの繭は硬く閉じており、残念ながら中の蛹は死んでいる。
本当ならば夏の終わりに羽化して飛び立っているはずであった。
しかし、なにかの拍子に、そのいのちの鼓動を失ったのだ。
 

A7IV, Sigma 105mm Macro F5.6 ISO100


振ると、カタカタと音がする。すでにミイラ化しているのだろう。
空を飛ぶことが叶わなかったヤママユガはどんな夢をみただろうか。
 
ヤママユガに限らず、一部の蛾は成虫になると口がなくなってしまう。
幼虫のときに溜め込んだエネルギーだけで一週間ばかりの生を過ごし、パートナーに出会い、子孫を残して死んでいく。出会わなくても死んでいく。
 
儚くて、あっけない。
 
そう一度は思ったけれども、それは人間の時間感覚で考えるからであって、案外人間も大差ないのかもしれない。

A7IV, Sigma 105mm Macro F8 ISO100

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ちいさな島
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