センチメントを覚えていたい
いつもの最終電車は何故かとても空いていて、楽に座ることが出来た。
ただ座った時、自分の体の重さを感じた。
初めて歩く道はとても新鮮で、何だか旅をしているようだとワクワクしたりするけど、それに慣れたりすると、普通を見失ってしまう。
その気持ちを忘れてしまう。
それだけではなくて、慣れたあとの気持ちが「普通」だと思ってしまう。忘れてしまう。きっととても大事なものだったとは思うのに。
その道とわたしとあなたに、しっかりした距離があったことを忘れてしまう。
わたしはいつもせめてもの意地で、振り返らないと決めている。いくつかの境界線を越えても、わたしにはまだこの距離がある。と。
見送ってくれたエスカレーターで、
キスしたあとのサヨナラと、
繋いだ手を解いた夜も、
そう思っていないと見過ごしていたはずの境界に、侵入していることに気付かなくてはいけない。
そう、もう知ってる。
車の助手席であの唄を聴いた気分と同じことを。
気付けば全て焼けて足元は更地になって焦げていて、何も残っていないこと。
誰も隣にいないこと。
そうやってまた、あなたの事を考えている、と思う。
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