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読書録2:マチネの終わりに

アメトーーク!「読書芸人」の回で大絶賛されていた平野啓一郎氏の『マチネの終わりに』を読んでみました。Kindleでぽちり。便利な世の中になりました。お家に本屋さんがあるってことだもんね。

マチネとは、ミュージカル用語で昼公演のこと。逆に夜公演のことは、ソワレというそうです。

酸いも甘いも分かりきった30代後半~40代前半の天才ギタリスト(男)とジャーナリスト(女)の大人の恋愛小説です。音楽の話になったかと思えば、中東情勢へと話は飛び、そして資本主義経済の話へと、、、知的好奇心を満たしながら、一方で硬くなりすぎず、やわらかい文章で”恋愛”ストーリーが進んでいきます。その知識の豊富さに、途中何を読んでいるのか分からなくなるほど。

リルケの引用がいたるところで出てきます。

天使よ!私たちには、まだ知られていない広場が、どこかにあるのではないでしょうか?そこでは、この世界では遂に、愛という曲芸に成功することのなかった二人が、……彼らは、きっともう失敗しないでしょう、……再び静けさを取り戻した敷物の上に立って、今や真の微笑みを浮かべる、その恋人たち……

正直、”恋愛”の部分は少し陳腐。いい歳した大人が、世間体とか責任とかそういうのを気にせず、好きな相手に向き合っていこうとする。40歳って私からしたらまだまだ先のことだけれども、どうせそんな今と変わらず、何かに悩み、そして誰かを愛し、幸せになりたいと切に願い、そして満足せず前に進んでいくしかないんだろうなあと逆に応援してくれさえもする。逆にそういう大人になりたいとも思わせてくれる。

ただ、少し傲慢になるのならば、いつか来る近い未来において、私も彼ら2人のように、何か信ずるものがあり、社会に対して価値を生み出していける手段をもつヒトでありたいと思わせてくれる一冊でした。

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