オペラの記録:バイエルン州立オペラ(ミュンヘン)、モーツァルト作曲《コジ・ファン・トゥッテ》プレミエ(10月26日、ナツィオナールテアター)
10月26日、ミュンヘンのバイエルン州立オペラでモーツァルト作曲《コジ・ファン・トゥッテ》の新制作初日を観ました(ナツィオナールテアター)。
ナツィオナールテアター正面入り口の階段を上り切ったところから。
18時30分頃にはもう暗くなっています。
客席。
モーツァルト作曲のオペラの中で、ロレンツォ・ダ・ポンテがテキストを手がけた作品は3つあり、これを『ダ・ポンテ・オペラ』とよびます。
《フィガロの結婚》(世界初演1786年5月1日、ウィーン)
《ドン・ジョヴァンニ》(世界初演1787年10月29日、プラハ)
《コジ・ファン・トゥッテ》(世界初演1790年1月26日、ウィーン)
です。
ただ、《コジ・ファン・トゥッテ》について、ダ・ポンテはまずアントニオ・サリエリに作曲を打診しました。サリエリは当時の最大の権力を持つ作曲家、映画《アマデウス》でも有名です。サリエリに断られ、モーツァルトが作曲したという経緯があります。
また、《コジ・ファン・トゥッテ》はフランス革命勃発後(1789年7月14日)に書かれています。このことは作品を理解する上で重要なことです。
《コジ・ファン・トゥッテ》の正式題名を日本語に訳すると《女はみんなこうしたもの、あるいは恋人たちの学校》です。
なぜ『学校』なのか?
つまり、『啓蒙オペラ』なのです。
テキストと音楽が人間の心理、感情、論理、思考などをつまびらかにしていきます。
そして結末は・・・・・わからない。
難解きわまりない。
ひどく難して手強い作品です。
と言うと、尻込みしてしまう人もいるかも知れず、それはとても残念なので、とにかくモーツァルトの音楽の素晴らしさを経験してください!
このプレミエは、もう「ユロフスキ・アーベント」でした。
ウラディミール・ユロフスキは同オペラの音楽総監督です。
考え抜かれた音楽的ドラマ建築は唸るしかありません。
またレチタティーヴォ・アコンパニャートの雄弁で、魅力的なこと!
こんな《コジ・ファン・トゥッテ》が聴きたかった!
同オペラの専属オーケストラであるバイエルン州立管は今年の『オーパンヴェルト年鑑2022』でも〈最優秀オペラオーケストラ〉に選ばれました。
『オーパンヴェルト(Opernwelt)』と言うのは権威あるオペラ専門月刊誌ですが、1993年から毎年、その年鑑で約50人の批評家、ジャーナリストたちに各部門でのアンケートをとり、毎年9月末にその結果を発表しています。
ジャンルは、〈オペラ劇場(アンサンブル)〉、〈上演〉、〈世界初演〉、〈発掘作品〉、〈オーケストラ〉、〈コーラス〉、〈指揮者〉、〈演出家〉、〈ステージ美術家〉、〈衣裳〉、〈歌手〉、〈期待される新人〉、〈DVD/CD〉、〈書籍〉、〈ひどい出来事〉です。
バイエルン州立管はこれまで2008/09、2011/12、2013/14、2014/15、2015/16、2016/17、2017/18、2018/19、2019/20、2021/22と〈最優秀オペラ・オーケストラ〉に選ばれています。
つまり2013年から、コロナのロックダウン期間を除いて、常にナンバーワンなのです。
この世界最高のオペラ・オーケストラの演奏ですから!
演出を手がけたのは映画で有名なベネディクト・アンドリュース。
アイディアもあるのですが、やはり映画監督とオペラ演出は全く違う仕事です。
しかし、ドン・アルフォンソの解釈にはとても面白い要素がありました。
これはモーツァルトを、音楽を知悉するユロフスキの解釈なのだと思います。
プログラム。
フィオルディリージ役のルイーゼ・アルダーは妊娠中。大きなお腹でよく、あそこまで歌い、動けるものです。
プログラムに挟まれたポスター。
指揮のユロフスキがオーケストラを讃えています。
演出チームが最前列に登場。
オーケストラのピットがかなり浅いこともこの写真でわかると思います。
FOTO:©️Kishi