コンサートと退任セレモニー:トゥガン・ソヒエフ指揮ミュンヘン・フィル(10月24日、ミュンヘン・イザールフィルハルモニー)、パウル・ミュラー退任
10月24日、ソヒエフ指揮ミュンヘン・フィルのコンサートを聴きました(ミュンヘン・イザールフィルハルモニー)。
プログラム。
この日はコンサートの開始前、ミュンヘン・フィルのインテンダント(オーケストラ・マネージャー)、パウル・ミュラーさんの退任パーティーがありました。
イザールフィルハルモニーは現在改修中のガスタイクの代替ホールですが、同じ敷地内にリハーサル用の建物があり、パーティーはそこに招待客を集め、コンサート前に開くというものでした。
ミュンヘン・フィルはミュンヘン市が経営するオーケストラです。市の関係者や経済界、音楽関係者などが集まり、その中には指揮者のケント・ナガノやミュンヘン・フィル次期首席指揮者のラハフ・シャニの姿もありました。
シャニはこの夜のためだけにテル・アヴィヴから飛んできたそうです。
ちなみに現在、ルフトハンザはイスラエルとの運航をストップしており、ミュンヘンに来るのは、そう簡単ではなかったはずです。
ミュラーさん、私が個人的に知り合ったのは25年前、彼がNDR響のオーケストラ・マネージメントにいた時でした。ギュンター・ヴァント指揮NDR響の日本公演がきっかけでした。
ミュラーさん、いつも落ち着いていて、もの静か、でも、はっきり毅然としてものを言う、よく気が付く、背筋がピンと伸びていて姿勢が良くエレガントで、それは現在も変わりません。
私の夫は「あの面倒なヴァント夫人もミュラーの言うことならきく」と笑っていました。考えてみれば、彼、その頃40歳前後だったんですね。
この退任挨拶パーティーをわざわざ他で開くと言うのではなく、コンサート前の1時間で、ホールの隣のリハーサル室で行うというのも、ミュラーさんらしいと思いました。
もともとオーケストラ・マネージャーは心身ともに激務ですが、ミュラーさんがミュンヘン・フィルのインテンダントをつとめた16年間、とてもとても大変だったと思います。
ミュンヘン・フィルの支持層は保守的と言われており、プログラムをどうするか、旧態依然のままでは限界があります。これにどう切り込むか?
首席指揮者の問題も続きました。クリスティアン・ティーレマンとの確執と退任、その後任のロリン・マゼールの契約期間を全うしない逝去、そしてヴァレリー・ゲルギエフ問題。
本拠地ガスタイクの改修と代替ホールの手配。
そしてコロナ。
ウクライナ問題は、ゲルギエフのことはもちろん、ミュンヘンはキエフと姉妹都市ということもあり、ロシアの芸術家とのつきあいなど、他のオーケストラよりずっと神経質な問題だと思います。
ミュンヘン・フィルは指揮者に有名スターをよんできました。首席指揮者となれば、もっとその色も濃いのですが、ゲルギエフの後任にイスラエル出身のラハフ・シャニ(現在35歳)を決めたことも大きな決断だったと思います。
業界の間ではシャニの優秀さは知れ渡っているのですが、首席指揮者として迎えるために市を説得しなければならないし、保守的でスター好きなミュンヘンの聴衆も手強い。
ですが、オーケストラの将来を見据え舵を切る、勇気ある決断だったと思います。
プログラム中に記された送辞。
コンサート開始前のミュラーさんの挨拶はとても短く、多分20秒くらいだったと
思います。ぼやぼやしていたら写真が撮れない!
長い間、ありがとうございました。
《シェヘラザード》で素晴らしいソロを聴かせたコンサートマスターの青木尚佳。
FOTO:(c)Kishi
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