コンサートの記録:ロビン・ティチアーティ指揮ミュンヘン・フィル(12月11日、ミュンヘン・イザールフィルハルモニー)
12月11日、ミュンヘン・イザールフィルハルモニーでロビン・ティチアーティ指揮ミュンヘン・フィルのコンサートを聴きました(11時)。
第3アドヴェンツの日曜日に聴く曲はマーラー《交響曲第3番》。
ミュンヘンは昨日から雪が降っています。
車道は除雪されていますが、歩道は凍っているところも多く、気をつけて歩かなければなりません。
イザールフィルハルモニー(GASTEIG HP8)横の道です。
寒い朝ですが、それでもみんなコンサートにやってきます。
この日は今シーズンの第3回定期コンサート、11時開始のマチネーでした。
定期のマチネーは比較的高齢者が多く、この日も同様です。
ガスタイクが改修中のため、イザールフィルハルモニーは代替ホールです。しかし公共交通機関もよく考えられ、ホールのすぐ前にバス停があります。
バイエルン州では前日12月10日から公共交通機関内でのマスク着用義務も無くなりました。しかし、自主的にマスク着用している人も結構います。
ホール・フォワイエ、大変な賑わいです。
プログラム。
表紙は作品にちなんだものとなっています。つまり・・・
マーラーは1896年、この作品を作曲しました。完成はアッター湖のシュタインバッハでした。
当時、ハンブルク・オペラでマーラーの助手をしていたブルーノ・ワルターは1896年夏、シュタインバッハにマーラーを訪ねました。この時、レンゲベルクの岩山に圧倒されていたワルターに、マーラーは「眺めなくていい。みんな曲にしたから」と言ったというエピソードがあります。
また、マーラーは最初、表題をつけており、それが夏にちなむものだったので、『夏の交響曲』とも呼ばれています。
ただ、マーラーは後になり『説明的すぎる』として表題を削除しています。
このエピソードから岩山に夏のポピーがあしらわれているのだと思います。
ティチアーティは英国出身の39歳、現在、ベルリン・ドイツ響のシェフです。
今回がミュンヘン・フィル指揮へのデビューでした。
そのデビューに選んだのはマーラー《交響曲第3番》。
数ある交響曲の中でも最大規模の作品です。
大編成の管弦楽に加え、アルト独唱、女声合唱、児童合唱が加わります。
全部で6楽章、演奏には約100分を要します。
独唱には現在、世界のトップ・スターの一人であるエリーナ・ガランチャが登場しました。
児童合唱団は名門のテルツ少年合唱団。
女声は42人、子供は38人でした。
ティチアーティのデビューは大成功だったと思います。
音が消えてから大拍手が起こるまで、1分ほどかかったと思います。
この曲では終わった直後に「ブラボー」を飛ばす人もいるのですが・・・
ミュンヘンの聴衆は指揮者が手を降ろし、緊張が解けるまで静かに待っていました。
ところで、最終楽章にこれほど長い「アダージョ」を持ってくることは、1900年頃では例外的なことでした。
さらに、作曲途中にマーラーの14歳年下の弟がピストル自殺をしています。
第6楽章に元々付けられていた表題は「愛が私に語ること」。
ここでは地球上の生きとし生けるもの、動物も植物も人間もすべてが救済されていきます。
長い、長い5楽章を経て、第6楽章が始まります。
この楽章は、涙が出るほど美しい。
そして最後には力が湧き出てくるような気がします。
それが音楽の力なのでしょう。
FOTO:©️Kishi