【応答する労働】column
【応答する労働】
労働者文学会にコラムを寄稿した。
できるだけ今目に見えて感じていることを書いたつもりだ。韻を踏んでいるのは題名だけ。
機会に感謝してまた感じたことをかたちにしていきたい。
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リラクゼーションセラピストという仕事は、一般に思われている以上に難しい。
『ふれる』という行為、相手とのゼロ距離でのコミュニケーション、疲れている人に応対するにはまず自分自身元気でなくていけない。
わたし自身、日々難しさと向き合いながら仕事を続けている。
まず、ひとつ質問をさせて頂く。
あなたは今日人との触れ合いはどれくらいありましたか?
身体的に誰かとつながる行為、特に日本人は日常のコミュニケーションの中でハグやキスがないから、不得意なのではないだろうか。
揉みほぐし。リラクゼーションセラピストは、身体の凝りや張りを緩めていくのが仕事だ。しかし、その上前述したように高度なコミュニケーションを必要とされる。施術者はクライアントの無言の訴え、抱えているストレスを、やりとりの中から聴いたり、察したりして相手を慮ることが出来るようにならないといけない。そして、それは身体の凝りや張りを解すことにも通じてくる。
経験を得て、わたしが掴んだヒントがある。
他者に対する緊張を緩める手がかりは、『笑い』と『温度』にある。
一般的に揉みほぐしはクライアントがうつ伏せ、または横向になり、背中を預けられるかたちになるが、相手に背を向けていただくというのは少なくとも信用を得ないことにははじまらない。
他者に触れる我が手の温度と、能動的に先手を打って笑う行為が相手の心身を解していく。
手の温度はぬくもり、安心感を与えるし、笑うという行為は、ある種無防備で開けている。わたしはあなたの敵ではないですよ、というポーズこそが、現代人のストレスや緊張を解く。
そこまでして緊張状態にあること、多様性に満ちた世界で共生していきましょうと謳う社会の中で真の敵とは何なんだろう。折に触れて考えていきたい。
言語、非言語、身体、心理と多くの要素が絡み合って、セラピーという時間と空間を作り上げる。それはインタラクティブな営みであるし、他者の声ならざる声に応答していく労働でもある。
いや、そもそも仕事とは誰かの声に応答する労働ではないだろうか。
それをニーズと言い換えてしまっただけで、本来は誰かの困ったことに対する自分の行動のことだったはずだ。
やりたいことを見つけなさい。多くの人が言う。本当にそうか?
自分を必要とする声、将来のヴィジョンや企業のミッションも結構だが、兎にも角にも目の前の相手に応答する。
自分の感受性を開放して、そのシグナルに反応する。それが仕事のはじまりでもいい。
出来ることは少ない。まず、このコラムを書いてほしいと言われたことに対して全力で応答したい。
(2024.12 労働者文学会寄稿)
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