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知らない貴方の言葉を見ていた

朝がやってくるのが怖いから瞳を閉じずに空を見た月は少し欠けていて星は見えなかった 歩いた夜道はただ冷たくて、愛することを忘れていたことに気がついた 何もない私は真夜中にこんなことを考えている 空気は張り詰めていて冬のような気温だった ずっとずっと貴方のことを考えている  ろくに話したこともない貴方のことを  自分のことが気持ち悪くなって、石ころを蹴ったら電柱に当たって跳ね返ってきた

意味もなく外にいるのはやめて大人しく家に帰って毛布にくるまってみただけど何もあったかくなかった人の体温が欲しいのだと気がついた何故だか寂しかった誰かと繋がっていたいと不覚にも思ってしまった、最近ずっとこんなことで泣いている私は自分がわからない、だから誰かに見つけてほしいと思った我儘なことは知っていた愛したい人はいる多分好きな人だけどこの感情になんと名前を付ければいいのかわからない、貴方と真夜中に話したりしてみたかった孤独が少し紛れるような何かを探していた

だけど私は勝手にその人に自分の理想を投影していただけなのかもしれない自分の全てを分かってくれる人なんてこの世にいなくてそれを承知の上で生きていかなければならないのに気がついたら他人に期待してしまっている、自分が憎くてたまらない

だけど私は自分の言葉でその人に感情を伝えたいと思ったやんわりと貴方の心が好きだと言った伝わらなくて良かったでも貴方は優しかった怖いくらいに優しい言葉をくれた私はどうしたらいいかわからなかったこんな言葉をもらうことが許される人間ではないと思った

何も知らない貴方に縋っている何も知らない貴方に謝っている自分が気持ち悪くて吐きそうだだけど夜は綺麗だった底なしに堕ちていける美しさがあったそこに土砂降りの雨でも降っていれば完璧だと思った
  
感情は静かに殺すのが最善だと思った最初からなかったことにすればいいと思った言葉なんて交わさず日々を送って全部を忘れることができたら私は元の私に戻れるかもしれないと思った

貴方の日々は私にはわからないきっと大切な人がいるのだと思う私は感情を小さく折りたたんで燃やすことにした今はただ沈んでいく月を眺めながら終わりゆく夜を惜しもうと思う

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