前川ほまれ『セゾン・サンカンシオン』(8/13読了)

とても他人事とは思えない彼女たちの姿に、胸を締め付けられる思いがした。
アルコール、ギャンブル、薬物、窃盗……様々な依存症を抱える女性たちを描く作品です。「セゾン・サンカンシオン」は、彼女たちが集う施設の名。

だらしない、意志が弱い、快楽に逃げた、自己責任――当事者には容赦なく刺々しい言葉が向けられる。
第三者のみならず、家族からも。むしろ身近な立場ゆえに巻き込まれ、支援や責任を求められる家族だからこそ、反発や不可解の念を抱くのかもしれない。

でも、依存という行為だけが問題なのか。

“ある時期、それなしでは生き延びることができなかった”と、生活指導員の塩塚さんは言う。
彼女も依存症と闘い、アルコールを断って十年以上。
それでも完治と言えず、なお闘い続けているんです。

当事者たちが何かに依存していった経緯、根深い苦しみや悲しみは、次第に明らかにされていきます。
知ったとて、家族もすぐ受け止められるわけではない。胸中は複雑で。
ただ小さな変化が、希望に思えることもある。一方で、やるせない顛末を辿る場合もある。

作中に、依存症のほかにも症状や障害、困難などを抱える人々がさまざま登場していたことも印象的だったんです。今を生き延びるために、依存症とは違うかたちで表れたものかもしれない。あるいはこの先、何らかのかたちで表れるのかもしれない。
禁煙を貫いていた父親が煙草を買いに行く場面は、はっとするほど覚えている。

ここに描かれているのは誰にでもあり得る、身近なことに感じられて。だから他人事には思えなかったのです。


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