儚いくらいの善良さ
「出禁のモグラ②/江口夏実」
1巻は淀んだ暗さがじわりじわりと来る印象だった。2巻は怪異であるがその中には淀んだものはなく、可笑しい怪異、物悲しく儚い怪異であったように感じた。
タイトルから見るとモグラが主人公であるが個人的に主人公はモグラと真木に見える。モグラは表の主役であり真木は裏の主人公だ。真木は案内者、記録者としてモグラを観ているように感じる。するとこのモグラの物語は真木がいなくては成立しないように見える。
真木はモグラを視ることで自らの環境を振り返ることもあり(1巻第5話にて話し相手がいることについて)その省察と洞察に感心する。
読了後ふと考える。モグラの罪は「善良」なのではないかと。
「自分は神に向いていない」
見切りがつけられないことが仙人、神としては罪であり以ての外であろう。一方でそれがモグラの素敵なところでありとても儚い。もちろん罪がひとつとは限らないし「善良」ではないものかもしれない。
「罪」を知りたい野次馬心がある一方で知らないほうがいいと思う。知らなくてもいいことがあるのと知ってしまえばこの物悲しくも可笑しい不可思議な世界が終わるような気がして惜しい。
1巻で度々出没しているメガネをかけたレッサーパンダの謎が解けて笑ったこと、モグラの絵心にすべきでないのに某神獣と比較してしまうこと、猫附教授の化け猫の名前がじわじわときてしまった。
そして駄菓子屋の主人にスポットがあたる回数が増えていて歓喜である。
さてここからは箇条書きでの感想
・レッサーのビビり具合は人間だと見ていて気の毒になるか煩わしいと思うが声に出して笑ってしまうほどなのはレッサーパンダだからであろうか。特に詩魚ちゃんにビビっている時の顔が煩くて笑ってしまう。
・モグラは余程ヤンデレ女に怯えたのとそれを共有したいのかと観察した。
・猫附教授は騒がしくない茶目っ気があって好感度が上がる。根のいい人物のように見えるがどうなのだろうか。化け猫に取り憑かれながらも根のよさが歪まなかったのは桜史郎がモグラとで会ったことで一族の宿命が変わったこと、話を聞いてくれる存在(モグラ)がいるからなのであろうか。
・猫附親子の袈裟姿はパフォーマンスが必要な案件だったからであろうか。
・藤村の服(exイーハトーブ)は自家製なのだろうか。
・ミヤちゃんは梅晴に話したことで「笑っちゃうぐらい酷かったよね」と笑いながらマヤちゃんに話していた。そのミヤちゃんをみたマヤちゃんも呪縛から解けていた。モグラが云う「話し相手ってのは人生において想像以上に必要なんだよ」というのを実証していたように見える。
・猫附教授の絵本が読みたい