2020.3.18 チョウの話 ① 「アサギ・F・マダラ」と「アサギマダラA」

昼前に起きて、今スタバに来てパソコンを開いて、いつものようにチエちゃんから来たメールをチェックしました。

>蝶の話を思い出しました。
変わり者の蝶だけ日本に飛んでったかなんか前に青山さんから聞いた話、今の人間の世界に繋がると思うんでノートかブログに書いてください。


以下、僕からの返事です。一気に、猛スピードで、数分で書きました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

>変わり者の蝶の話、どんなんだっけ? 覚えてないです。

一応、心当たりを書いておきます。難しい話になりますよ。頭のいい臼杵氏には理解不能。チエちゃんは分かるかも知れませんね。

中国から日本の高い山に飛んできたチョウなどいません。
 
何100万年、何千万年前から、中国と日本の高い山に棲んでいて、何百万年もの間、離れ離れになった種たちはいますが。

鳥はいます。トキです。多分中国の秦嶺(「野人」のいる湖北省の神農架の隣)から、比較的新しい時期に飛んできて佐渡に住み着いた。それを崇めまつったのはいいけれど、人間の勝手で絶滅させてしまった。それをまた人間の勝手で、中国に頭を下げて、秦嶺から分捕ってきて、繁殖回復、と喜んでいる。


あるいは、チエちゃんのいう蝶は、アサギマダラのことかな?

以前、僕が頼まれて広西壮族自治区の山で調査しました。頼んだのは、大阪の植物園園長さんの友達の別の博物館の偉いさん(もう引退してる)。

この蝶は、香港とか、中国南部の「低い山」から、何千キロと飛んで、日本の東京とか東北地方とかの低い山まで移動します(翌年次の世代がまた華南に戻る)。

同じ仲間で有名なのは、メキシコ半島からカルフォルニアの北部などに大移動するオオカバマダラ。

同じオオカバマダラでも、フロリダ半島とかキューバとかからのものは、基本的にニューヨークなどには移動しない。

アサギマダラに話を戻すと、日本でのチェックは大ブームになっていて、誰もかれもが大騒ぎしつつ参加しているけれど、「出発点」の実態は、まったくわかっていない。僕は頼まれてそれを調べに行ったのです(多分ネットで探すとその論文が出てくる)。

実は、アサギマダラは、同じ場所に、そっくりな種がもう一種棲んでいて、こちら(クロアサギマダラ)は移動しません(したがって日本には来ない)。

で、実は実は、なのですが、「本物の」アサギマダラの中にも、2つのタイプがあるようで、東北方向に向かって、沖縄や日本に移動する(例えば「アサギ・F・マダラ」としておきましょう)タイプと、西北方向の四川雲南やヒマラヤ地方に移動するタイプ(いわば「アサギマダラA」)があって、後者に関しては、日本で熱狂的にブームに乗っかっている人たちは、まったく関心をもっていません。よって、実態は全く分かっていない。

それぞれを、どのような位置づけでとらえるか、、、。同一種の別生活型、とするのか、「亜種」とするのか、実質「別種」とするのか。現状では答えは出せないのですが、言えるところは、日本人たち(研究者を含む大衆)が、この蝶の直接日本に関係ない移動の実態に関心がない、ということ、そして本当に(日本での)実態を解明したいのなら、"種”のアイデンティティを解明するために"日本に来ている”集団以外(アサギマダラA)の実態解明に取り組まねばならない、ということです。

それは、例の「新型コロナウイルス」に、サースとかマルスといった名前が(これだけ大騒ぎしているのに)まだついていない、ということにも繋がります。「新型コロナウイルス」は、どうやら“種”としては「サース」そのもので、しかし、(何かが異なっていて)分類上は同一種、別の視点から見れば「別物」であり、新しく「種の名前」を付けようがないのです(「サースである」とも「サースでない」とも言い切れない)。

「新型ウイルス」を解明するためには、(いわゆる旧サースを含めての)その「オリジナル」の解明が必要なのです。

*ちなみに、日本に大量に飛んでくる、みんなが大好きなアサギマダラ(すなわち、アサギ・F・マダラ)も、厳密なことを言えば、学名(種小名)は付けられない状態です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?