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クープラン:神秘的なバリケート(愉しむ)

ブルーノート東京に行った。ブルーノート史上初、チェンバロの公演があったのだ。緊急事態宣言下で終演時間の制限があり、開演は17時。まだ昼間のように明るい平日の夕方、同僚たちと会社から、てくてく歩いて行った。

なんて言ったって、ブルーノートだ。みんなそれぞれに、この公演を楽しみにしていたようで、微妙に服装がいつもと違っていた。年下の同僚の髪型はムーミンのミミみたいな玉ねぎ頭になっていて(彼女はここぞという公演の時、この髪型になる)、いつもグレーのスーツに臙色のネクタイの同世代の男性は黒シャツに麻のジャケットだった。なんだか軽井沢の別荘地のおじ様みたいよと辛口の同僚につぶやかれていたが、そういう彼女はオレンジ色のパンツで、私は黒の麻のワイドパンンツにゼブラ柄のサンダル、避暑地モードだったかもしれない。

夏至間近の金曜日、酒類提供は自粛中であっでも、骨董通りに点在するオープン・カフェはシュワシュワして金色に輝く飲みものを手に持っている人が多かった。17時前に仕事は片づかず、鞄は会社においてきたので、私も同僚もスマホとお財布だけを持ち、ランチにいくかのような気軽さだった。仕事ではないコンサートに行くって、こんなに明るい気持ちになるなんて知らなかった。

暗くて細い階段を降りると、ステージ中央に美しい装飾がほどこされたチェンバロがあった。ブルーのネオンを背景に、左端にピアノ、右端にドラムも置かれていた。チェンバロとドラム、ここでならきっとなんでも合うのね。

クープランの神秘的なバリケードは、「ブルーノートでチェンバロの公演が決まったとき、まず、この曲を弾こうと思ったのです。大好きなこの空間にこの曲がぴったりだと思って」と紹介された。少しくぐもったチェンバロの軽やかな音色、繰り返されるリズムが心地よく、初めて聴いたこの曲を、私も好きな曲リストに加えようと思った。途中、おしゃれな色のカクテル(ノンアルコール)が運ばれてきて、適度に歩いて乾いた喉に嬉しかった。

そのあと、舞台にはドラマーが登場し、子供の保育園のパパ友同士だという二人でバッハのイタリア協奏曲が始まった。サプライズでヴァイオリン、バス歌手との共演があって、主役はピアノの前に座ったり、チェンバロの前に座ったり、舞台の映像や照明もくるくる変わって、たくさんの好きでてんこ盛りのステージだった。

楽しかったね。足取りも軽く、同僚たちと、またてくてく歩いて会社に戻って、残っていた仕事をした。まだ明るい気持ちは残っていて、今日はいい日だったなと機嫌よく家に帰った。


フランソワ・クープラン(1668-1733)は、バロック時代のフランスの作曲家。国王のオルガニストとしてルイ14世に仕え、王家の人々にクラヴサン(チェンバロの仏語)を教えたのだそう。ソフィア・コッポラ監督の映画「マリー・アントワネット」にもこの曲が少し出てくる。

ソフィア・コッポラ監督「マリー・アントワネット」サウンドトラック 
パトリシア・マビー フランソワ:クープラン:神秘的な障壁
https://music.apple.com/jp/album/%E7%A5%9E%E7%A7%98%E3%81%AA%E9%9A%9C%E5%A3%81/1457069351?i=1457070212


リュート系の楽器テオルボのクープランも素敵
https://www.youtube.com/watch?v=R2mGjvrGbcE

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公演当日の【Artist Cocktail】“Chromatic Fugue” #ブルーノート東京ワンナイトカクテル

(写真はブルーノート東京facebookよりお借りしました。)

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