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私は新潟県地域おこし協力隊の活動として、高校の「総合的な探究の時間」に関わっています。初めて会う人に仕事内容を説明すると、「総合的な探究の時間って何?」と聞かれることがよくあります。

教育の世界で活動して生きた人にとっては当たり前の「総合的な探究の時間」ですが、業界が違う方からすると馴染みがないですよね。

今回はそんな人向けに、高校の「総合的な探究の時間」を私なりにさっくり解説したいと思います。



デンマークのノーフュンスホイスコーレにて

大阪出身。教育大学卒業後、大阪で高校英語教師に。海外の社会と教育を学ぶため、スペインへ渡航。日本語教育能力検定(注釈)を取得し、スペインの私立小学校に勤務。その後、デンマークに渡り、ノーフュンスホイスコーレで日本文化教師を務める。帰国後、新潟県の地域おこし協力隊・ニイガタコラボレーターズに着任し、2023年9月、十日町市に移住。

1. 「総合的な探究の時間」って何?

今、求められる力を高める 総合的な探究の時間の展開(高等学校編)
令和5年3月文部科学省

文部科学省のHPによると、総合的な学習(探究)の時間は、

「総合的な学習(探究)の時間は、変化の激しい社会に対応して、探究的な見方・考え方を働かせ、横断的・総合的な学習を行うことを通して、よりよく課題を解決し、自己の生き方を考えていくための資質・能力を育成することを目標にしていることから、これからの時代においてますます重要な役割を果たすものである。」

と説明されています。すこし難しい説明ですよね。

さっくりまとめると、

「変化が激しくて先が見えない時代だから、自分で主体的に考えて情報を整理する必要がある。課題を解決したり、自分で目標を決めて生きていくための力を身に着けよう!」

という目標がある科目なのだ!と私は解釈しています。

ふわっとしている科目に見えますが、「かんじんなことは、目に見えないんだよ。」と星の王子様が言っているように、生きる力を養うためにとても大切な科目なのではないでしょうか。

2. 「総合的な探究の時間」ミニヒストリー

高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説「総合的な探究の時間編」

高校の科目としては最近始まったもので、私が高校生の時にはありませんでした。なので、友達にも「そんな時間あったっけ?」とよく聞かれます。

「総合的な探究の時間」は2018年の学習指導要領で告示され、「総合的な学習の時間」が「総合的な探究の時間」に変更。そして、2022年度から高校で開始されました。

始まったばかり、かつ各学校で決められる範囲が広い科目なので、実際の現場では学校によって内容に差があります。学校や地域の特性を活かしやすい科目だからこそ、正直どういった科目なのか、イメージが掴みにくいかも知れません。

3. 何が求められるのか?

実は、「総合的な探究の時間」では具体的な活動内容として、「これを絶対にしなさい!」と決まっているものはありません!

ただ、育成するべき力が3つあります。

①知識及び技能:知識と知識やスキルを使いこなす技術が求められます。
②思考力・判断力・表現力等:考えて、適切に判断し、伝える力です。
③学びに向かう力・人間性等:主体的に地域や社会に関わり、よりよい生活や人間関係を作っていこうとする態度などですね。

今までの答えがあるものを覚えたり、型を覚える勉強とはちょっと違っています。

主体的に、地域や社会に興味を持って、広い視点でよりよい未来のために動く。そのために、学んだ知識やスキルを使って考え、判断して発表したり、行動していく力ですね。

そして、探究に置ける生徒の学習の在り方として4つのポイント(①課題の設定→②情報の収集→③整理・分析→④まとめ・表現)があります。

探究における生徒の学習の姿
高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説「総合的な探究の時間編」p12

①課題の設定 :日常生活や社会の疑問や興味から自分で課題を見つける
②情報の収集:必要な情報を集める
③整理・分析:情報を整理・分析し、問題の解決に取り組む
④まとめ・表現:気づきや発見、自分の考えなどをまとめて表現する。
→新たな課題発見と解決のステップへ!

この①~④の流れを繰り返して、よりレベルの高いことができるようになっていくイメージですね。

4. 授業では何をするのか?

「地域の新しい産業の形」を考えた十日町高校松之山分校チーム
「地元野菜×そば×夏フェス」の企画などを提案!面白いですよね!

個人の興味や関心、地域や社会との関わり、主体性を重視している科目なので活動は様々です。

私は新潟県の十日町市と津南町エリアの5校(十日町高校、十日町総合高校、松代高校、津南中等教育学校、十日町高校松之山分校)を担当していますが、「総合的な探究の時間」はそれぞれの学校や地域の特色を活かした内容になっています。

担当している学校や、以前勤務していた高校の例を挙げると、

地域でのインターンシップから、企業が抱えている課題を解決する。

ふるさと納税の商品開発を通して、地域を活性化させる。

大学のゼミのようにジャンルごとに分かれて、自分が関心のあることを1年間かけて研究して発表する。

自分がいる地域に豊富にある杉の活用プロジェクトを考える。

大学や企業とコラボしてビジネスプランを考える。

また、こういった取り組みができるように、インタビューや、ファシリテーション、プレゼンなどの方法を学ぶ授業をする学校もあります。

アイディアを出すためのブレインストーミングをする方法や、自分を知るための自己分析的なワークなどもあります。

生徒と地域、学校の実態に合わせて面白いことができるので、可能性が詰まっている科目なんです!

NIIGATAマイプロジェクト☆LABO マイプロジェクトアワード2023 新潟県Summit
の会場での参加者への質問「あなたにとってマイプロとは…?」

学校外の取り組みも多々あり、私は12/17に行われた、NIIGATAマイプロジェクト☆LABO マイプロジェクトアワード2023 新潟県Summitに参加させて頂きました。

高校生マイプロジェクトはNPO法人のカタリバさんが始め、今や全国各地で開催されている探究プロジェクトなんです。高校生の熱意と探究心が溢れ、運営として関わっているNPO法人の方、大学生、社会人の方、先生方、皆が輝いていて、とても刺激的でした!

5. まとめ

私は最近、きのこの原木栽培を探究しています。

概念としては2022年に高校の科目として始まり、今後もっと盛り上がっていくであろう「総合的な探究の時間」。

私はデンマークでフォルケ・ホイスコーレの教員をしていた時に、「自分軸(主体性)で学びを選べる機会って、日本の学校ではあんまりないな~」と感じていました。

そして、デンマークから帰国後、新潟県の地域おこし協力隊として、高校の「総合的な探究の時間」という募集を発見!

「総合的な探究の時間」では主体性が重要視されているし、めっちゃ面白そう!地域と学校の関りを深めたい。学校をもっとオープンな場所にしたい。

という一心で、生まれ育った大阪を出て、今まで行ったこともなかった新潟県十日町市に移住。もう4カ月が経とうとしています。

名刺だけで数えても新潟に来てから200人以上の方にお会いしていて、目まぐるしく濃密な時間でした。刺激を頂き、応援して下さる方や、Noteを読んでくれている方、出会えた方に感謝です。

この記事を通して、少しでも高校の「総合的な探究の時間」への理解が深まり、探究的な学びの魅力が少しでも伝われば嬉しいです。

これから「総合的な探究の時間」を盛り上げていきましょう!


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