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銀座百点と夢の中の街【心惹かれるものたち#1】

今回から自分の好きなことや大切なものを記録するエッセイ『心惹かれるものたち』を、スタートします。#1は『銀座百点編』どうぞ最後までお楽しみいただけると幸いです。

銀座の店先でもらえるタウン誌をご存知だろうか


老舗の中華料理店や喫茶店の入り口にひっそりと置かれている横長の形をした薄い冊子。
表紙に独特な字体で『銀座百点』と書かれている。

毎号表紙のアートワークも美しい。

中をめくってみると銀座にちなんだ対談から始まり、数々のエッセイや連載、そして美しい写真が続く。

銀座から離れたベッドタウンに暮らしている私からすると、タウン誌といえば地域のイベントや美容院の割引クーポン、今月生まれの赤ちゃん紹介ページなどがチラシより薄いザラッとした紙質に詰め込むように載っているようなイメージがあった。
そこに来てこの『銀座百点』は私のイメージするタウン誌からはかけ離れたものだった。

二十代の時はピンと来なかったが、三十代を超えてからその魅力にめっきりハマってしまった。

我が家の「銀座百点」文庫の一部

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「銀座百点」の歴史は古く、創刊は昭和30年にまでさかのぼる。
今も長く愛されている日本初のタウン誌であるそうだ。

毎号銀座にちなんだ著名人たちがエッセイや名物連載企画が掲載されている。

エッセイでは各人の銀座との出会いや思い出話が綴られている。
銀座ならではの華やかさ、粋さ、街並みの移ろいやとびきりのグルメなど、その話題のどれもが興味深く、まさに読み応え十分。

連載が書籍化されたものも数多く、池波正太郎「銀座日記」向田邦子「父の詫び状」などベストセラーも多い。

冊子の名前は「銀座百"点"」だが、その発行元は 「銀座百"店"会」
名前の通り、銀座に店舗を持つ百店が結成して作られており、
その百個のお店の地図が巻頭に載せられている。
数々のコラムやコーナーの間に挟まる、ギャラリーや老舗洋菓子店の洗練された美しい広告も見どころのひとつだ。

私が「銀座百点」を好きな理由

それはサイズ感。A5サイズを一回り小さくした感じで、真ん中がホチキスで止められている。
開けるとベタっと開脚したみたいに開いて手を離しても閉じないからそこも好きだ。
私の場合は中華料理屋「麒麟」の一階入口で銀座百点をもらい、料理が運ばれてくるまでに読むのをたまの楽しみにしている。
もちろん持ち帰った後も、おやつを食べながら、時に寝転がりながらそのコンパクトなサイズ感にぎっちりと詰まっている「銀座」にいつも夢中になっている。


銀座百点の特に好きなコーナー、読者のお便りコーナー「わたしの銀座」


読者と銀座の思い出が毎号おたよりによって綴られている。
かつて青春時代を過ごした銀座を懐かしむ読者がいる一方で、遠い地方の離島から銀座に想いを馳せ、定期購読で楽しむ読者もいる。

もう戻れない遠い過去として、
または気軽に行くことのできない憧れの場所として。

各々の中に浮かぶ 現実とはまた違った形をした銀座。
各々のお便りから浮かび上がってくる「銀座」はまるで「夢の中の街」のようだ。

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眠って見る夢のなかで、何度か同じ街が出てきたことがある。


小さな遊園地があって、本屋があって、角に大きな交差点とその先に噴水があって。

何度かその街の夢を見ることがあって、この世のどこにも存在しないけれど、ざっくりと地図が書けるくらい街のことは把握できた。

「銀座百点」で語られている各々の断片的な記憶によって作り上げられた銀座には、その夢のなかの街と同じ手触りがある、と気づいた。

「銀座百点」を読むようになってから銀座の町を訪れて歩く度にとても不思議な気持ちになるのはそんな夢の中の街を歩いているような気分になるからかもしれない。

いつか私も銀座に気軽に行けない日が来るかもしれない。
そんな時もきっと銀座百点を読み返せば、
私の心に銀座の町を生き続けさせられるだろう。

皆んなの銀座がつまった「銀座百点」
ぜひあなたも銀座を訪れた際手に取ってほしい。






おまけ
ユニクロ×銀座百点コラボのトートバック。
大切に使っているお気に入り。

参考サイト
銀座百点
https://www.hyakuten.or.jp/index.html

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