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『再演のライヘンバッハ』元ネタまとめ

本作の感想については、前回の記事をご参照ください。

私がホームズミリしら勢であるため、元ネタを調べながら読み進めたのですが、シャーロック・ホームズだけにとどまらぬリスペクトの数々でした。
気がつけば手元のメモが膨大な量になっていたため、今後この作品を読む方や、読み返す方のために共有します。
Wikipediaからの引用多数ですが、大目に見てください。

木下森人先生のおもろ小説はこちら!

  • ライヘンバッハの滝:スイスにある滝。アルプス山脈でも最も高所にある滝のひとつ。落差250メートル、幅90メートル。『最後の事件』でホームズとモリアーティは相打ちとなり、滝つぼに落ちた。

  • ベーカー街221B:ホームズの下宿先。ハドスン夫人が経営している。独身時代はワトソンもルームシェアしていた。

  • 人生という無色の糸かせには殺人という緋色の糸が混じっている。それを解きほぐして取り出し、白日の下へさらすことがぼくたちの任務なんだ。:『緋色の研究』におけるホームズの名ゼリフ。

  • マイリンゲン:スイス中部、ベルン州、ベルナーオーバーラントにある町。『最後の事件』の舞台として知られる『ライヘンバッハの滝』がある。

  • ペーター・シュタイラー:『最後の事件』に登場。マイリンゲンの英国旅館『エンジリッシャーホフ』の主人。

  • すべての不可能を除外して最後に残ったものが、たとえどれほどありえそうになくとも、それが真実ということだ。:『白面の兵士』『緑柱石の宝冠』『ブルース・パーティントンの設計書』などでホームズが言った名ゼリフ。ほかに外伝の『消えた臨時列車』『第二の汚点』でも似たセリフが出てくる。

  • ハンク・モーガン:マーク・トウェインの著作『アーサー王宮廷のコネチカット・ヤンキー』の主人公。ある日、部下に殴られ気絶し、目を覚ますと西暦528年のキャメロットにタイムスリップしていた。

  • タイムトラベルを引き起こすには時速八八マイルの速度と、一・二一ジゴワットの電気エネルギーが必要:映画『バックトゥーザ・フューチャー』でタイムトラベルに必要とされた理論。これを作中で可能にしたのが『デロリアン』という自動車型タイムマシン。

  • パスカルの言い分:『パスカルの賭け』フランスの哲学者ブレーズ・パスカルが提案したもの。神が実在することに賭けても失うものは何もないし、むしろ生きることの意味が増す、という考え方。

  • ダラム大学:イギリスのダラム州・ダラム市およびストックトン・オン・ティーズ市にキャンパスを置く国立大学。モリアーティはここの元数学教授であったとされている。また、『ドリトル先生』シリーズの主人公、ジョン・ドリトルもここで医学博士号を取得したとされている。

  • ヘレン・ストーナー:『まだらのひも』の登場人物。ワトソンの最初の妻という説がある。

  • グリムズビー・ロイロット博士:『まだらのひも』の登場人物。双子姉妹ヘレンとジュリアの義父で、医師。

  • ジョナサン・スモール:『四つの署名』の登場人物。

  • アグラの財宝:インドのアグラにあった財宝。

  • メアリー・モースタン:『四つの署名』の依頼者。のちにワトソン夫人になる。

  • ジョン・クレイ:『赤毛連盟』の登場人物。

  • ベディントン兄弟:『株式仲買店員』の登場人物。

  • ヘンリー・ジキル博士:ロバート・ルイス・スティーヴンソン『ジキル博士とハイド氏』の中心人物。薬を飲むと、性格や容貌の異なる『ハイド』に変身する。

  • デメテル号:『吸血鬼ドラキュラ』第7章「デメテル号船長の航海日誌」より。

  • 聖バーソロミュー病院:ロンドン・スミスフィールドに存在する病院。略称の "Barts"(バーツ)の名でも知られる。『緋色の研究』にて、ホームズとワトソンが初めて出会ったのは、ここの化学実験室。

  • ローウェンシュタイン博士:『這う男』に登場。正体不明の科学者。不老若返りの秘薬を研究している。

  • エリザベート・バートリー:ハンガリー王国の貴族。史上名高い連続殺人者とされ、吸血鬼カーミラのモデルとなった。『血の伯爵夫人』という異名を持つ。自らの美貌を保つことに執着し、若い処女の生き血をしぼり、血液がまだ温かいうちに浴槽に満たして入浴するという行為が、吸血鬼伝説に結びついたとされる。

  • ルクレツィア・ボルジア:ルネサンス期のボルジア家出身の貴族女性。フェラーラ公アルフォンソ1世・デステ妃。その波乱の人生をして『ファム・ファタール』(男を破滅させる魔性の女)と有名。『カンタレラ』というボルジア家が暗殺に用いたとされる毒薬があり、彼女はこの毒を仕込める中空の指輪を持っていて、飲み物に混ぜて相手を毒殺していたとされる。

  • ハルピュイア:ギリシア神話の風の精、また女の頭をもった3羽の怪鳥。単数形はハルピュイア、複数形はハルピュイアイ。英語ではハーピーとも。意味は『掠めとる女』。人や物、食物を掠めとり、意地汚く貪り食ったうえ、残飯の上に汚物をまき散らかして去っていくという、この上なく不潔で下品な怪物である。

  • ゴルゴーン:ギリシア神話に登場する醜い女の怪物。その名は『恐ろしいもの』の意。海神ポルキュースとその妻ケートーの娘で、ステンノー、エウリュアレー、メドゥーサの3姉妹。姉妹のうちメドゥーサだけが不死ではなく、後にペルセウスによって首を切られて退治された。その際、傷口からペガサスが生まれた。また一説によると、メドゥーサはアテーナーと美を競ったため、その怒りに触れて醜い姿にされたと言われている。

  • ジャン=バティスト・グルーズ:フランス人画家。同時代の画家が宮廷風俗を描く中、市民生活を題材にした風俗画を多く描いた。『恐怖の谷』でホームズは、モリアーティ教授の書斎にグルーズの絵があることに言及している。その絵とは「若い女が両手で頭を支えて、横目でこっちを見ている絵」だという。また同作中では『こひつじにまたがる少女』というグルーズの絵についても触れられている。

  • ベチャール:『義賊』の意。

  • ロージャ・シャーンドル:ハンガリーの最も有名なベチャール。ロージャが姓、シャーンドルが名前。ロージャは女性名でもあるため、姓だけ記載せず姓名とするのが一般的。金持ちの家の金品を盗み、貧しい農民に振り分けていた。しかし、ハンガリー警察に追われる身分となり、身に覚えのない馬泥棒の罪状により投獄される。その後、刑務所からの脱獄に成功し、ハンガリー革命においてコシュート軍に参加。『義勇軍』と名づけた軍隊を結成し、大活躍する。

  • 悪魔の足の根:シャーロック・ホームズ56ある短編の40番目『悪魔の足』より。燃焼させると幻覚症状と致死性の有毒ガスを発生させる。アフリカにのみ存在する毒物のため、コーンウォールの警察には死因がつかめなかった。

  • 変身薬の調合:『ジキル博士とハイド氏』における変身薬の材料は、血のように赤いチンキ剤(リンと揮発性のエーテルが含有)、白い結晶塩との記載がある。

  • セーケイ人:ハンガリー人(マジャル人)の中でも自他共に“ハンガリー人の中のハンガリー人”とされ、極めて誇り高いエスニック・グループ。言語はハンガリー語で、主な宗教はカトリックであるが、改革派教会やユニテリアン教会も多い。なお、ブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』において、ドラキュラ伯爵はトランシルバニアのセーケイ人とされているが、モデルとなったヴラド・ツェペシュ公はトランシルヴァニアの南隣のワラキア公国の君主で、ルーマニア人である。

  • ゴールデン・クローネ・ホテル:『吸血鬼ドラキュラ』に登場。『金の王冠ホテル』の意。ジョナサン・ハーカーはドラキュラ伯爵の指示で、このホテルに泊まった。なお、ホテルのあるビストリッツはドラキュラ伯が名づけた宿場町。

  • ドラキュラ伯爵:ブラム・ストーカーによるイギリスの小説『吸血鬼ドラキュラ』に登場する悪役の吸血鬼。表向きはルーマニアのトランシルヴァニア地方に住む由緒ある貴族だが、実は若い美女の生き血を好む吸血鬼。人間を噛んで同族の吸血鬼に変える能力が有名。15世紀のワラキア公国の君主、『串刺し公(カズィクル・ベイ)』の異名をもつヴラド・ツェペシュ(ヴラド3世)がモデルとされている。ドラキュラとは『ドラゴンの息子』、つまり『小竜公』という意味。父ヴラド2世がドラクル(Dracul=ドラゴン公)と呼ばれたことに由来する。

  • ルーシー・ウェステンラ:『吸血鬼ドラキュラ』の登場人物。父親の遺伝で夢遊病を患っており、その病と美貌のため、ドラキュラ伯に目をつけられて被害者となる。死後、吸血鬼となってよみがえり子供を襲うようになったが、ヘルシング教授により吸血鬼化したことを見抜かれ、退治される。ルーシーの胸に杭を打ったのはアーサー・ホルムウッド、つまり彼女の婚約者であった。

  • ミナ・ハーカー:『吸血鬼ドラキュラ』の登場人物。主人公ジョナサン・ハーカーの婚約者。ドラキュラ伯爵に襲われるルーシー・ウェステンラの親友。ジョナサンの危機に、単身トランシルヴァニアに飛び(現在の東欧旅行とは比べものにならない危険な旅)、現地で結婚を即決するという、当時を考えると先進的で強いヒロイン。

  • ジョナサン・ハーカー:『吸血鬼ドラキュラ』の主人公で、ロンドンに住む青年。弁理士事務所に勤め、自分も弁理士の試験に受かったばかり。ドラキュラ伯爵からロンドンに邸宅を購入したいという依頼を受け、トランシルバニアに赴くところから物語は始まる。

  • アーサー・ホルムウッド(ゴダルミング卿):『吸血鬼ドラキュラ』の登場人物で、ルーシー・ウェステンラの婚約者。男爵。ルーシーをドラキュラ伯爵に殺され、ヴァンパイア・ハンターの一員となる。

  • ジョン・セワード:『吸血鬼ドラキュラ』の登場人物で精神病院の院長。ルーシー・ウェステンラにプロポーズし、断られたものの男らしく受け入れ、友情を誓う。ドラキュラ伯爵に血を吸われて衰弱したルーシーを診察したものの原因が分からず、恩師ヴァン・ヘルシングに助けを求める。ドラキュラが吸血鬼だと見破ったヘルシングと共に、ドラキュラ退治の一員になった。ちなみにセワードの病院は、ドラキュラが英国に買った家の隣にある。

  • クインシー・P・モリス:『吸血鬼ドラキュラ』の登場人物。テキサス生まれのアメリカ人。陽気でのんきだが、真心と勇気のある紳士。愛していたルーシー・ウェステンラ(プロポーズしたが断られた)がドラキュラ伯爵に殺され、ヴァンパイア・ハンターの一員になる。ジョナサン・ハーカーとともにドラキュラ伯にとどめをさすが、その際に負傷した怪我がもとで亡くなってしまう。彼の名はハーカー夫妻の息子に受け継がれた。

  • エイブラハム・ヴァン・ヘルシング教授:『吸血鬼ドラキュラ』の登場人物。翻案作品においては主人公となることが多い。アムステルダム大学に在籍する60歳のオランダ人老学者。専門は精神医学だが、博学者で多様な業績を持つ。ルーシーの症状から、彼女が吸血鬼に襲われたことを見破る。『吸血鬼ドラキュラ』の知名度により、現在ではヴァンパイア・ハンターの代名詞となっている。ストーカーと交友があったハンガリー人学者『ヴァーンベーリ・アールミン』がモデルとされる。

  • ローストチキン:『吸血鬼ドラキュラ』で主人公ハーカーがドラキュラ城で振舞われた料理のメインディッシュ。ハーカーが「けっこうなローストチキン」と感想をもらすところを見るに、美味らしい。ハーカーの前では「料理人が作った」と言っていたが、実際はドラキュラ伯爵お手製である(後日、ハーカーは料理の支度をしている伯爵の姿を目撃している)。

  • スコロマンス:『ショロマンツァ』(ルーマニア語)の英語読み。ルーマニア・トランシルヴァニア地方にある、伝説上の黒魔術学校。悪魔が運営しているとされる。毎年10名の入学生が『ショロモナル』または『ソロモナルと』称し、動物の言語や、魔法を会得する。故郷に戻ることができるのは9名だけで、残りの1名は代償として悪魔の副官『天候師』になり、竜にまたがり天候をあやつる任をあたえられる。学校は地下に所在するとされ、学生たちは修学の7年間のあいだ、まったく日光を浴びないという。また、竜は山頂の湖のなかに潜んでいる。ブラム・ストーカーはこの伝承に影響を受けて、『吸血鬼ドラキュラ』を執筆したと明言している。実際、作中ではヘルマンンスタット湖の山頂にショロロマンスがあり、悪魔は10人中1人の生徒を報酬として要求するという記述がある。

  • ラーコーツィ家の小せがれ:おそらくサンジェルマン伯爵? 18世紀のヨーロッパの天才。スペイン王妃マリー=アンヌ・ド・ヌブールの血を引くとされる貴族。ポルトガル系ユダヤ人とも、ルーマニアのトランシルヴァニア地方にあるラーコーツィー王家に所縁のある人物とも言われている。芸術や科学・語学に精通し、その神秘的な人柄やカリスマで社交界の人気者となった。ただし社交界デビューを果たしたのは彼が67歳になってからのことであり、それ以前の記録はあまり残っていないとされる。そのミステリアスな人格と科学に精通していたことから、度々稀代の天才錬金術士と噂されていた。噂の内容は「不老不死の秘薬を飲んでおり、2000~4000年生きている」「ソロモン王やシバの女王と面識があった」「自らの姿を眩ますことができ、また催眠術を身につけていたとされる」「大革命の最中の亡霊としてパリに現れた。三重スパイであった」「1984年から日本に滞在している」などである。また「自分は不老不死なので、霊薬を口にする他は食事は必要としない」と言って、実際に人前では全く食事をしなかったともされる。作曲家のジャン=フィリップ・ラモーは「自分は人生で何度かサン・ジェルマンに会ったことがあるが、数十年たっても、どれも同じ年齢のサン・ジェルマンだった。彼の存在は神秘そのものだとしかいいようがない」と記している。またセルジ伯爵夫人 は同年、以前の大使夫人時代にヴェニスで彼と会ったが、約40年後に再会した時には全く年を取った様に見えなかったと語っている。こうした証言は非常に多い。

  • トーマス・エジソン:『発明王』の異名で知られる、アメリカの発明家・起業家。アメリカの電力系統を寡占した。蓄音機、白熱電球、映写機などの発明が有名。

  • オルロック伯爵:『吸血鬼ノスフェラトゥ』という最初期の吸血鬼映画より。吸血鬼ドラキュラを非公式に映画化したもの。ドラキュラ伯爵がオルロック伯爵に改名されるなど原作からの変更点がある。

  • 不思議の国のアリス:イギリスの数学者チャールズ・ラトウィッジ・ドジソンがルイス・キャロルというペンネームで書いた児童小説。幼い少女アリスが白ウサギを追いかけて不思議の国に迷い込み、しゃべる動物や動くトランプなどさまざまなキャラクターたちと出会いながらその世界を冒険するさまを描いている。キャロルが知人の少女アリス・リデルのために即興でつくって聞かせた物語がもとになった。主人公アリスは、姉が読んでいる本を覗きこんで「さし絵も会話もない本なんて、なんの役に立つのかしら?」と思い、退屈になったところから物語は始まる。

  • メノン:ソクラテスの弟子にして、アリストテレスの師にあたる古代ギリシアの哲学者、プラトンの初期末の対話篇。「プラトン哲学の最良の入門書」として評価が高い。なお『対話篇』とは、複数の登場人物の間での対話形式を採った文学ないし学術作品で、独白(モノローグ)と対になる概念のこと。

  • レイディ・エイダ:イギリスの数学者エイダ・ラブレス。ラブレース伯爵夫人オーガスタ・エイダ・キング。主にチャールズ・バベッジの考案した初期の汎用計算機である解析機関についての著作で、世界初のコンピュータープログラマーとして知られる。

  • フリーデリケ・ヴィルヘルミーネ・プルンペ・フォン・オルロック:映画『吸血鬼ノスフェラトゥ』『ジェキル博士とハイド』監督のF・W・ムルナウの本名フリードリヒ・ヴィルヘルム・プルンペより。本作のモリアーティのファーストネームがフレデリックである由来もここから。

  • ジェームズ・モリアーティがひとつの複合姓:『空き家の冒険』にてホームズがモリアーティを「ジェームズ・モリアーティ教授」と呼んでいるが、『最後の事件』では教授の兄弟である「ジェームズ・モリアーティ大佐」が登場している。奇妙にも大佐と同名であることから、ジェームズ・モリアーティというのは複合姓ではないかという説がある。設定忘れてただけじゃ この説を採用しているのが構成:竹内良輔、作画:三好輝による漫画『憂国のモリアーティ』である。

  • 一八七三年五月にウィーン証券取引所が崩壊:『1873年恐慌』のこと。1873年から1879年までヨーロッパと北アメリカで不況を生じさせた金融危機。例えばイギリスでは、大不況と呼ばれる経済停滞の20年間が始まり、それまで世界経済をリードしてきた国力を弱らせた。当時は『大恐慌』とも呼ばれたが、1930年代初期に世界恐慌が起きた後は、『長期不況』と呼ばれるようになった。

  • ピエール・ド・フェルマーの遺した定理:『フェルマーの最終定理』のこと。ピエール・ド・フェルマーが「真に驚くべき証明を見つけた」と書き残したと伝えられ、長らく証明も反証もなされなかったことからフェルマー予想とも称されたが、フェルマーの死後330年経った1995年にアンドリュー・ワイルズによって完全に証明され、『ワイルズの定理』または『フェルマー・ワイルズの定理』とも呼ばれるようになった。

  • チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン:ルイス・キャロルの本名。変名で発表した小説とは『不思議の国のアリス』

  • ジギスムント・フロイト:オーストリアの心理学者で精神科医ジークムント・フロイト。精神分析学の創始者として知られる。心理性的発達理論、リビドー論、幼児性欲を提唱した。8人兄妹の長男(ただしジークムントの母は3人目の妻であり、エマニュエルとフィリップの異母兄がいる)。弟ユリウス(一年経たず亡くなった)、妹アンナ、ローザ、マリア、ドルフィ、パウラ、弟アレキサンダーがいる。また、フロントの娘にも妹と同名のアンナ・フロイトがおり、こちらも精神分析家である。彼女は児童精神分析の開拓者となった。

  • ソロモン王:ユダヤの賢人王。父はダビデ。母はバト・シェバ。エジプトに臣下の礼をとり、ファラオの娘を降嫁されることで安全保障を確立し、古代イスラエルの最盛期を築いたとされる一方、堕落した王ともされる。大天使ミカエルより悪霊を支配する指輪(ソロモンの指輪)を授かり、悪霊たちを神殿建設に駆り出したとされる。また、シバの女王と出会ったのち、ソロモンが金でできた大盾200個と金でできた小盾300個を作ったが、のちにエジプト第22王朝のファラオ・シェションク1世に略奪された、という『金の盾伝説』が有名。

  • ヴェニスの商人:ウィリアム・シェイクスピアの喜劇、戯曲。ヴェニスの若き商人アントーニオーは、恋に悩む友人のために自分の胸の肉一ポンドを担保に悪徳高利貸しシャイロックから借金してしまう。ところが、彼の商船は嵐でことごとく遭難し、財産の全てを失ってしまった。借金返済の当てのなくなった彼はいよいよ胸の肉を切りとらねばならなくなるのだが――。

  • カール・コラー:コカインが唇や舌を痺れさせることを発見した眼科医。局所麻酔の発見となる。1884年9月15日このコカインの局所麻酔効果はハイデルベルグ眼科学会で発表された。

  • ネグレット・シルヴィアス:『マザリンの宝石』の登場人物。

  • マザリンの宝石:もとは戯曲『王冠のダイヤモンド――シャーロック・ホームズとの一夜』で、シャーロック・ホームズシリーズでは経外典 (Apocrypha) として扱われている。『マザリンの宝石』として小説化するにあたり、セバスチャン・モラン大佐(『空き家の冒険』の登場人物でもある)がシルヴィアス伯爵になっていたり、犯人逮捕で話が終わるためカントルミヤ卿が来訪しない、などの変更点がある。この作品の正典性はシャーロキアンたちにとっても議論の対象であり、現実にはありえない創作と判断を下している研究者も少なくない。ベーカー街221Bの部屋の構造が他の作品と大きく異なっていたり、ホームズが蝋人形と入れ替わるときに気づかれないという偶然に頼ったりする部分が、非現実的というのである。

  • ローダーのスチュアート夫人殺人事件:『空き家の冒険』より、ローダーで起こった殺人事件。モラン大佐が犯人と目されていたが、証拠がなかった。

  • 一八九一年四月二十四日、モリアーティの警告を無視したホームズをシルヴィアスに狙わせた:『最後の事件』より。ワトソンの医院へ突然訪れたホームズは、診察室の鎧戸を閉め、空気銃を警戒していると説明する。そして、1週間ほど大陸へ出かけるので同行して欲しいと頼みだす。事情を尋ねるワトソンに対し、ホームズは自らの宿敵であるジェームズ・モリアーティ教授について語り――。

  • ロジャー・プレスコット:『三人ガリデブ』の登場人物。貨幣偽造者で、地下に製造所をもっていた。

  • ジョナス・ピント:『恐怖の谷』の登場人物。偽札作りを手伝っていたが、警察にタレこむと言い出したので射殺された。新聞に記事が掲載される。

  • ザ・レイクサルーン:上記のジョナス・ピント殺害現場として新聞記事に記載。

  • バーディ・エドワーズ:『恐怖の谷』の登場人物。ピンカートン探偵社の探偵。

  • クァントリル・レイダース:アメリカ南北戦争で南軍に所属したゲリラ部隊。ウィリアム・クラーク・クァントリルが部隊長として率いた。

  • ローレンスの虐殺:あるいは『クァントリルの襲撃』。南北戦争で北軍への支持が強かった町ローレンスを、南軍のゲリラ部隊クァントリル・レイダースが襲撃したもの。

  • ハックルベリー・フィン:『ハックルベリー・フィンの冒険』の主人公で、『トム・ソーヤーの冒険』の主人公トムの親友。『トム・ソーヤーの冒険』の後に大金を手に入れたが、未亡人に引き取られてかたくるしい生活を送っていた。そこへ金を目当てに飲んだくれの父親があらわれ、ハックは黒人奴隷のジムとともに、筏でミシシッピ川をくだる冒険の旅に出る。

  • 高貴なる自由民騎士団(Eminent Order of Freemen):『恐怖の谷』に出てくる組織。自由民団。

  • フィニアン・ブラザーフッド:アイルランド共和同盟(IRB)の隠語。19世紀のアイルランド問題の中で生まれた、イギリスからの独立と共和政治の実現を目標に結成された秘密組織。共和政の実施、つまり王政廃止を主張した急進的なグループ。フィニアンとは古代アイルランド神話の戦士団フィアンナに由来する名称で『フィアンナの戦士団』を意味する。

  • バネ足ジャック:ヴィクトリア朝時代のイギリスで広まった都市伝説の怪人。『バネ足』という名の通り、驚異的な跳躍力を持つ。もとは伝統的なロンドンの幽霊(ゴースト)の一種と見なされ、独りでいる若い女性を襲った事例などが新聞紙面でも報じられた。やがてそのユニークな特徴から、子供を躾けるために触れられる恐怖の存在や、当時流行った低俗雑誌ペニー・ドレッドフルの定番の登場キャラクターとなった。さらに19世紀末になるとそれまでの悪役から主人公(ヒーロー)として扱われるようにもなった。

  • 茶色のボーダーコリー、ロッキー:テレビアニメ『名探偵ホームズ』の主人公。登場人物はすべて擬人化した犬に置き換わっており、主人公ホームズの犬種はボーダーコリー。『ロッキー』はシャーロックの愛称から。

  • マーヴィン警部:『恐怖の谷』に登場。元シカゴ警察で、恐怖の谷では鉱山警察に所属。

  • エヴァンズという新進気鋭の若い殺し屋:『三人ガリデブ』の殺し屋エヴァンズ。

  • ピピネッラ二世:おそらくドリトル先生シリーズの『緑のカナリア』主人公ピピネラから? 美声の緑のカナリア。

  • ラフバラー公爵:イギリスの小説家ヒュー・ロフティング作『ドリトル先生と緑のカナリア』に登場。

  • The Last Crusade:意味は『最後の聖戦』。G・K・チェスタトン(ギルバート・キース・チェスタトン)『木曜日の男』より、作中に登場する秘密警察の身分証である番号入りの青いカード(本作では青地のトランプ)に記された文言。CはMI6長官マンスフィールド・スミス=カミングの署名のパロディだそう。なおマイクロフトの署名はMとのこと。

  • スクルージ&マーレイの会計事務所:イギリスの文豪チャールズ・ディケンズの『クリスマス・キャロル』に登場。

  • クリスマス・キャロル(あらすじ):主人公はエベネーザ・スクルージ。この初老の商人は、冷酷無比、エゴイスト、守銭奴であり、人間の心の暖かみや愛情などとはまったく無縁であった。スクルージにとってクリスマスの季節は、得にならないことをして浮かれる馬鹿げた人々を目にする不快な日々であった。それに、クリスマス・イヴは共同経営者であったジェイコブ・マーレイが亡くなった日でもあった。マーレイがなくなって7年になるクリスマス・イヴの日、亡くなったはずのマーレイが訪れる。マーレイの亡霊は、鎖につながれた姿となった自分自身を例として、生前の罪に比例して鎖が長くなると説明し、金銭欲や物欲に取り付かれた人間の死後は後悔ばかりの悲惨な末路となることをスクルージに諭す。友人であったスクルージが自分と同じような運命とならないようにするため、これから精霊がスクルージを訪れると伝えて、マーレイは消える。精霊により過去、現在、未来を見るという不思議な体験をさせられたスクルージは人生観を大きく変えていく。夜が明けてクリスマスの朝を迎えたスクルージは精霊に見せられた悪夢のような未来を変えようとする。ご馳走を贈り、人々に愛想よく挨拶し、恵まれない人々に寄付をした。こうしたスクルージの変わり様を笑う人たちもいたが、スクルージは気にもしなかった。というのも、何かを変えようとすると最初は笑われるものだということを分かっていたからだ。やがてスクルージは「最もクリスマスの楽しみ方を知っている人物」と人々から言われるほどになる。

  • ティモシー・クラチット:『クリスマス・キャロル』の登場人物。主人公スクルージの事務所で働く事務員、ボブ・クラチットの息子。足に病気をかかえている。

  • ペル・メル:『ディオゲネスクラブ殺人事件』に出てきた地名。マイクロフトの自宅がある。ディオゲネス・クラブの所在地。

  • シャイロック財団:イギリスの劇作家ウィリアム・シェイクスピア作『ベニスの商人』に登場する、ユダヤ人の強欲な金貸しシャイロックから。借金返済できなかったアントニオの生肉を切ろうとするが、ポーシャの機知により妨げられる。ちなみにタイトルの『ヴェニスの商人』とはこのユダヤ人の金貸しシャイロックを指すのではなく、商人アントーニオのことらしい。

  • 「そのときは、優秀な弁護士を雇う必要があるだろうな。男装の女弁護士がいい」:『ベニスの商人』の登場人物ポーシャのこと。莫大な財産を相続した美貌の貴婦人で、主人公アントーニオの親友バサーニオの婚約者。シャイロックの策略によりアントーニオが裁判にかけられた際、若い法学者に扮したポーシャがこの件を担当し、助け舟を出した。

  • ガブリエル・サイム:イギリス作家ギルバート・キース・チェスタトン(G・K・チェスタトン)による『木曜日の男』の主人公。無政府主義者に対抗する秘密警察の刑事。

  • エロル大尉:イギリス生まれアメリカ作家フランシス・ホジソン・バーネット(バーネット夫人)の作品『小公子』の登場人物セドリック・エロル。主人公の父親。イギリスのドリンコート伯爵の三男だが、アメリカ人と結婚したため勘当された。その後、主人公が生まれるも、父親は病死している。主人公もまた、父親と同じセドリックと名付けられた。その後、なんの因果かドリンコート伯爵の跡取りが全員亡くなり、跡継ぎが孫であるセドリックしかいなくなったため、セドリックは『フォントルロイ卿』として育てられることになる。

  • ローレンス・オリファント:イギリスの作家、旅行家、外交官、神秘主義者。日本にも在日本英国公使館の一等書記官として勤務していたが、攘夷派浪士の襲撃にて腕を負傷し、後遺症が残る。

  • 鎖で繋がれたコッカースパニエル:ホームズシリーズにはスパニエル犬がよく登場する。『四つの署名』ではトビーというスパニエルとラーチャーの雑種が犯人の臭いを追う。ホームズいわく「ロンドン中の刑事より役に立つ」とのこと。『ショスコム荘』ではショスコムスパニエル(おそらく架空の犬種)というのが、ご主人のふりしている女に吠えかかって、ニセモノだと見破った。『サセックスの吸血鬼』では、犯人の家に飼われているスパニエル犬が、犯人に毒見させられて、体がおかしくなった。『バスカヴィル家の魔犬』では依頼人モーティマ医師の飼い犬・小型スパニエル犬が、牛ほどの大きさの魔犬に食べられてしまう。

  • 化学実験:ホームズの趣味のひとつ。ヘモグロビンを沈殿させて血痕の存在を証明する試薬を発見したという事実から、ホームズは化学に関する造詣が深いことがわかる。

  • ノーフォークの湖畔:ホームズが学生時代に初めて解決した『グロリアスコット号事件』の話。当時唯一の友人だったヴィクター・トレヴァーに、休暇を利用してノーフォークにある父親の屋敷へと招待された。

  • ロンドンのユニヴァーシティ・カレッジ(UCL):ワトソン博士の出身大学。本作ではホームズもここに通っているとされているが、ホームズの出身大学は明言されていないらしい。ファンの間ではオックスフォード大学とケンブリッジ大学のどちらかだろうという話。

  • 「友人作りの秘訣は、犬にカカトを噛まれて不死身の神性を失うことか?」:『グロリアスコット号事件』において、ヴィクター・トレヴァーの飼い犬に足を噛まれたことをきっかけに、二人は友人となった。ちなみにこのときの犬種はブルテリア。「不死身の神性を失う」とは、ギリシャ神話の大英雄で、かかとが弱点であるアキレウスの逸話を絡めたジョークか。

  • 「世の中には『ヴェニスの商人』を悲劇と捉え、ユダヤ人高利貸しの哀れな末路に涙する人間もいるぞ」:『ヴェニスの商人』の物語はユダヤ教徒にとって侮辱的・差別的な内容が含まれるとしてたびたび議論の対象にあがっている。悪役のシャイロックが貪欲な金貸しという、ユダヤ人に対する悪意あるステレオタイプ的な人物として描かれているうえ、裁判中にはユダヤ教徒を軽蔑する罵声を浴びせられ、その正当な権利を踏みにじられ、最終的に改宗まで強要されている。しかしながら、作中でシャイロックが叫ぶ「ユダヤ人には目が無いと言うのか?(Hath not a Jew eyes?)」から続く一連の台詞は、ユダヤ人に向けられた偏見に対しての憤りを如実に表した台詞とも取られることがあり、シャイロックを単なるステレオタイプの悪役ではなく“虐げられた民族の代表者”として捉える論者も少なからず存在する。このため日本の演劇界では、本作を喜劇ではなくシャイロックを主人公とした悲劇として上演する場合が多く、大物役者をシャイロック役に迎えることが多い。判官びいきの日本人にはウケのよい人物といえる。また、今日でも学問の場で法意識の正当性を学ぶ題材として用いられる事があり、ドイツの法学者ルドルフ・フォン・イェーリングは、裁判官は契約内容自体を公序良俗に反するものとして無効と判断するべきところを、契約を有効とした時点でシャイロックの持つ権利を正当と認めているのに、裁判官自らが後からその権利を覆し法制度を破壊していると指摘している。

  • シンジュウロウ・ユウキ:坂口安吾『明治開化 安吾捕物帖』の主人公・結城新十郎。『明治開化 新十郎探偵帖』の名前でドラマ化もしており、主演は福士蒼汰。この小説を元ネタにしたアニメが『UN-GO』(アンゴ)の名前でフジテレビ系列ノイタミナ枠で放送もしており、CV.勝地涼。まさに明治版シャーロック・ホームズ。

  • 鹿島神傳直心影流:日本の剣術の流派。薩摩藩では「真影流」「薩摩影之流」と呼ばれることもある。鹿島神宮鹿島之太刀を起源とするという。江戸時代にいち早く竹刀と防具を使用した打ち込み稽古を導入し、江戸時代後期には全国に最も広まった。

  • 勝小鹿:勝海舟の嫡男。幼名は小六。アメリカのアナポリス海軍兵学校に留学。帰国後、海軍にはいり、摂津艦副長、横須賀屯営副長などを歴任。健康に恵まれず、病気による休職期間を繰り返した。最終階級は海軍少佐。明治20年造船会議議員となる。明治25年2月8日死去。41歳。江戸出身。

  • 小惑星の力学:モリアーティ教授が書いた論文。タイトルだけで知られ、その内容が何かはホームズファンや研究家の好むテーマのひとつ。『小惑星の力学』の内容については諸説あるが、日本人のホームズ研究家が、まったく違った視点から新しい説を唱えているという。それによると、asteroid とは数学では曲線の一種を指す。だから、The Dynamics of an Asteroid は、そもそも『小惑星の力学』ではなく、『アステロイド曲線のダイナミクス』または『アステロイド解を持つ場の力学』としなくてはならないのだそうだ。

  • ヘンリー・ウォットン:アイルランド出身の作家オスカー・ワイルド『ドリアン・グレイの肖像』の登場人物。主人公ドリアン・グレイを惑わし、悪徳に誘う。逆説的見識をもっている快楽主義者。

  • ハリエット・エドワーズ:作家ウィリアム・ギブスンとブルース・スターリングの共著による歴史改変SF小説『ディファレンス・エンジン』の登場人物。第一の主人公シビル・ジェラードのロンドンでのルームメイト。愛称はヘティ。シビルと同じく遊び女(娼婦)で、しばしば自室へお客を連れ込み騒ぎになる。デヴォン出身の大柄で騒がしいブルネット娘。クレマーン・ガーデンズで、もうひとりの主人公である古生物学者のエドワード・マロリーを客にした。直接に面識のない二人の主人公を結ぶ糸。

  • ルシアン・グレゴリー:『木曜日の男』に出てくる詩人で無政府主義者。同じく詩人のガブリエル・サイムと議論をかわし、ひょんなことからサイムを無政府主義中央評議会に連れていくことになる。その組織は日曜日と呼ばれる男が君臨する秘密結社だった。グレゴリーは欠けた木曜日の後釜に座る予定だったが、代わりにサイムが立候補して選任されてしまう。

  • オルタモント警部補:『最後の挨拶』の登場人物。

  • 南海泡沫事件:1720年にグレートブリテン王国(イギリス)で起こった、投機ブームによる株価の急騰と暴落、およびそれに続く混乱。主に損害を蒙ったのはフランスであった。『バブル経済』の語源になった事件である。当時、王立造幣局長官を務めていたアイザック・ニュートンは南海会社の株で一時7,000ポンド儲けたものの、その後の暴落で結果として20,000ポンドの損害を被っている。

  • アリアドネーの糸:アリアドネーがテーセウスに渡した糸玉。迷宮(ラビュリントス)に入った後、無事に脱出するための方法として、入り口の扉に糸を結び、糸玉を繰りつつ迷宮へと入って行くことを教えた。このおかげでテーセウスはミーノータウロスを殺したのち、ぶじに迷宮から脱出することができた。転じて、非常に難しい状況から抜け出す際に、その道しるべとなるもののたとえ。

  • カツ先生:勝海舟のこと。『明治開化 安吾捕物帖』では勝海舟が、いつも推理を外してしまう「トンマな探偵」の役割で登場する。しかし新十郎とは互いに信頼し合う間柄であり、向こうから海舟の意見を聞きにくることもある。

  • 瀉血しゃけつ:人体の血液を外部に排出させることで症状の改善を求める治療法のひとつ。古くは中世ヨーロッパ、さらに近代のヨーロッパやアメリカ合衆国の医師たちに熱心に信じられ、さかんに行われたが、現代では医学的根拠はなかったと考えられている。現在の瀉血は限定的な症状の治療に用いられるのみである。

  • バイロン卿:ジョージ・ゴードン・バイロン
    。イギリスの詩人。単に「バイロン卿」(Lord Byron)というと、この第6代男爵を指すことがほとんどである。バイロン卿は風邪をこじらせ、瀉血しようとした医師と全力で拒否するが、半ば無理矢理に1リットル以上の血を抜かれたために症状が悪化し、まもなくして死亡。しかし、当時の医師たちは「もっと早く瀉血していれば何とかなったのに」と、既に帰らぬ人となってしまったバイロン卿を非難したという。

  • レイディ・エイダと瀉血:エイダ・ラブレスは子宮がん患い、1852年11月27日、36歳で死去した。直接の死因は医師が施した瀉血だった。皮肉なことに彼女は父親と同じ年齢で亡くなっただけでなく、父親と同じ瀉血という間違った治療法が死因となった。

  • トーマス・スタビンズ:ヒュー・ロフティングによる児童文学作品『ドリトル先生シリーズ』の登場人物。主人公ドリトル先生の助手で教え子。周囲からは「トミー」と呼ばれているが、ドリトル博士だけは「スタビンズくん」と呼ぶ。

  • ドリトル式家畜用衛生給水器:『ドリトル先生のキャラバン』で言及。口蹄疫予防のためドリトルが考案。

  • カナリアのオペラはあのパガニーニも大絶賛:『ドリトル先生のキャラバン』カナリア・オペラのエピソード。

  • 月へも行ったとさえホラを吹いていたほどだ。:『ドリトル先生月へゆく』のエピソード。

  • スタビンズ&スタビンズ社。『ドリトル先生の動物園』にて、ネズミ・クラブという白ネズミが設立を考えていたネズミ科のためのクラブがある。先生がネズミ専用の文字を考案し、スタビンズが「スタビンズ&スタビンズ書店」名義の豆本を印刷したことから園内の施設でも特に発展を遂げた。

  • スロップシャー州パドルビー・オン・ザ・マーシュ『沼のほとりのパドルビー』:どちらも実在しないが、イギリス西部ブリストルに近いところにあると考えられている。

  • 知人の猫肉屋夫婦:マシュー・マグとテオドシアの夫婦。マシューはペットの餌用に屑肉を売る猫肉屋稼業とする男。毎年クリスマスの時期だけ必ずリウマチを発症して、先生に薬を調合してもらい6ペンスを支払っている。ジプシー(ロマ)の血を引く気のいい男で機転も利くが、手癖が悪く札付きの密猟者で、窃盗で何度も逮捕・投獄されており、ドリトル先生のような紳士と親友である事は司法当局からも訝しがられている。サーカス団時代は天才的な司会能力を発揮し、副団長として先生をサポートした。夫人のテオドシアは夫と違って学のある人物で、字が読めない夫に先生の著書を読み聞かせたりしている。

  • 猫肉屋:ペットの犬や猫などのエサとなる肉を売る仕事。猫の肉を売っているわけではない。18世紀から19世紀にかけて、ヨーロッパや北アメリカの都市部に見られた。当時、動物屋(ペットショップ)とペットフードの販売は別の店だった。

  • ジョリギンキ王国:『ドリトル先生アフリカゆき』で先生が漂着したところ。『ドリトル先生航海記』では、この国の王子でオックスフォード大学へ留学中のバンポ・カアブウブウ王子が休暇を利用して先生を訪ねてくる。

  • ファンティッポ王国:『ドリトル先生と秘密の湖』より。

  • クモザル島:『ドリトル先生海をゆく』より。

  • レスター・スクウェア:ロンドン中心部ウエストミンスター区ウエストエンドにあるスクウェア(正方形の広場)。

  • デンマン博士:17世紀オランダ黄金時代の巨匠レンブラント・ファン・レインが描いた絵画『デイマン博士の解剖学講義』で有名。解剖学者ヤン・デイマン博士が解剖学講義をしている風景を描いた集団肖像画である。

  • ジョン・ハンター:イギリスの解剖学者・外科医。「実験医学の父」「近代外科学の開祖」と呼ばれ、近代医学の発展に貢献した。その一方、解剖教室で使用する死体を非合法な手段も辞さずに調達する裏の顔を持ち、レスター・スクウェアの家は『ジキル博士とハイド氏』の邸宅のモデルになった。なお、『ドリトル先生』という、およそジキルとハイドとは真逆な人物のモデルでもある。ヤバいエピソードとしては、淋病梅毒の研究のために自ら非検体になったり、巨人症の人を標本にするためストーカー見張りをつけていたという話がある。追いかけ回されていた巨人症のチャールズ・バーンは、絶対に標本にされたくなくて友人たちに棺桶に重りをつけて海に沈めてほしいとまで言っていたのに、ジョンは葬儀業者に賄賂を渡して遺体をゲットした。かわいそう。

  • モリアーティの兄:原作ではジェームズ・モリアーティ大尉という兄弟(兄が弟かは不明)と、イングランド西部で駅長をしている弟がいる。本作ではフリーデリケのバタフライ・エフェクトにより、左目を負傷して軍人を退役し、現在は駅長となっている同一人物とされている。

  • フェルプス夫人:ハックルフィンに出てくるフェルプス農場の経営者。トム・ソーヤーの叔母。夫はサイラス・フェルプス。

  • ラッダイト:ラッダイト運動。1811年から1817年頃、イギリス中・北部の織物工業地帯に起こった機械破壊運動。産業革命に伴い低賃金、生産の効率化による低賃金、失職、技能職の地位低下などの影響を受けた労働者階級が使用者である資本家階級への抗議として工場の機械を破壊した。『ラッダイト』の言葉は、労働者を導いたとされる「ネッド・ラッド」なる人物に由来するとされる。しかし、ネッド・ラッドはおそらく完全に架空の人物であり、政府に衝撃を与え、挑発するための手段として使われたと考えられている。その名前は、ロビン・フッドのようにシャーウッドの森に住んでいるとされる架空のジェネラル・ラッドやキング・ラッドという人物に発展した。現代における『ラッダイト』は新しいテクノロジーに反対する人という意味も持つようになった。その結果、反技術、あるいは技術を使いこなせない人を象徴する語として、技術のリスクやデメリットを批判する人物へのレッテルとしても用いられるようになっている。

  • ジョー・ハーパー:ジョセフ・ハーパー(通称ジョー)。トムのクラスメイトで友人。

  • ベン・ロジャース:ベンジャミン・ロジャース。トムのクラスメイトで家は雑貨屋を経営している。トムとはとても仲が良く、トムと一緒に冒険に出かける事もしばしばあり、海賊になる為ジャクソン島で4日間過ごした事もあった。少し太った少年で泳ぎは苦手である。

  • トミー・バーンズ:ハックルベリー・フィンの冒険に出てくるソーヤー団の一員。泣き出して秘密を漏らすと言い出したから、トムが5セントで黙らせた。

  • ビリー・フィッシャー:トムのクラスメイト。トムたち悪ガキどもの中ではトムにつぐナンバー2の座にいるようだがトムには逆らえない。

  • ジョニー・ミラー:トムのクラスメイト。

  • ジェフ・サッチャー:トムのクラスメイト。トムたち悪ガキどもとは違ってインテリ風の勉強のよくできる少年。ゆえにトムとは少し気が合わない。

  • ボブ・ターナー:『トム・ソーヤーの冒険』に名前だけ登場。おそらくトムの友人。

  • アルフレッド・テンプル:セントルイスからやって来た転校生。お父さんが製材所の主任技師を勤めており、アルフレドも一緒にセント・ピーターズバーグにやって来た。ジェフに似てインテリぽいところがありトムは気に入らない。泳ぐのは苦手である。

  • ベニー・テイラー:トウェイン『トム・ソーヤーの冒険』に名前だけ登場。たぶんトムの友達。

  • シッド・ソーヤー:トムの弟。トムとは性格が180度異なり、おしとやかで勉強真面目な少年。ただし年齢に似合わず多少すれたところがあり、どうすれば自分が大人たちから誉められるかを知っており、トムの怒られるのを見ながら自分だけは誉められる。

  • トム・ソーヤー:トマス・ソーヤー通称トム。セント・ピーターズバーグの村で一番のやんちゃな手に負えないイタズラ坊主。朝は遅刻でドビンズ先生に鞭で打たれ授業はロクに聞かず、学校が終わるとみんなで野山を駆け回り夜になるまで家に帰らないという冒険好きな少年。しかし弱い者いじめだけはしないので学校の仲間には人気があるが、ポリーおばさんは手を焼いている。トムのお父さんは会計士だったがシッドが生まれてすぐに当時流行していたチフスにかかって亡くなってしまい、しばらくしてお母さんも亡くなってしまったので、お母さんの妹のポリーおばさんの家に預けられて暮している。

  • トムを説得するためにフリーデリケが提案した儲け話:映画『続・夕陽のガンマン』で出てくる詐欺の手口。

  • 白人の若い男とヒスパニック系男女:『バスカヴィル家の犬』の登場人物。正典発表順と時系列のずれに関するメタネタとのこと。

  • ポリネシア:ドクター・ドリトルに出てくる、なんでも知っているオウムのおばあちゃん。人間の言葉を話せる。

  • モーグリ・シオニー:イギリスの作家ラドヤード・キップリング『ジャングルブック』の主人公モーグリ。赤ん坊のころから狼に育てられた少年。インドのシオニーの森に住む。

  • 家事のいっさいを取り仕切ってくれるアヒル:フリーデリケは『愛しい人(duck)』と勘違いしているが、おそらく『ドリトル先生』に登場するアヒルのダブダブ。ドリトル家の家政婦役で、細かいことに良く気づき、愚痴と世話焼きが大好き。動物に甘いドリトル先生に代わって動物たちをたしなめ、家事をこなす。発言もおばさん調。ただ手を持たない鳥類であるため、ろうそくを灯した燭台を運ぶことはできても、壁に掛けられた鍋の手入れまでは無理であった。

  • ジョセフ・ボールサム:イタリア語でジュゼッペ・バルサモ。アレサンドロ・ディ・カリオストロ伯爵。マリー・アントワネットの首飾り事件で有名な詐欺師。

  • リーマン・ブラザーズ:かつて存在した大手投資銀行グループ。

  • カモメ郵便局:『ドリトル先生の郵便』より。

  • タイムズ=ピカユーン:アメリカルイジアナ州ニューオリンズの日刊。

  • テオフラスト・ルパン:あのアルセーヌ・ルパンの父。体育教師で巧妙な盗人。本作ではジョセフ・ボールサムと同一人物とされている。

  • ジャン・バルジャン:フランスの小説家ビクトル=ユーゴーの小説『レ・ミゼラブル』の主人公。

  • C・オーギュスト・デュパン:エドガー・アラン・ポーの短編推理小説の主人公で、世界初の名探偵。フランスの名門貴族にして騎士(chevalier) であった(頭に付いている「C」はこれの略)が、いくつかの不幸な事件によって財産を失う。

  • オラース・ヴェルネ:フランスの画家。ホームズシリーズ『ギリシャ語通訳』で、ホームズは自身の祖母がヴェルネの姉妹であったと語り、画家一家のヴェルネと血縁関係があると主張している。

  • けっして表舞台には立たず、誰にも知られることのない、影の天才:『海底二万マイル』のネモ船長のこと。ノーチラス号を建造する際に白熱電球も発明した。潜水艦内部では酸素を浪費できないので電灯の開発が必須だった。なお、コクレア号はスタビンズがノーチラス号の設計図から新たに建造したとのこと。

  • ノーチラス型二番潜水艦・コクレア号:オリジナルだが、由来は『ドリトル先生航海記』に登場するガラス海カタツムリとのこと。カタツムリはラテン語でCochlea。ノーチラス型潜水艦の元ネタは『海底二万マイル』のノーチラス号。

  • 大ガラス海カタツムリ(Great Pink Sea Snail) :ガラスのように透き通ったピンク色の殻を持つ巨大な巻貝。殻の中には人を乗せることもできる。クモザル島の王に祭り上げられ、2年余りを過ごした先生をイギリスに帰還させる為にポリネシアが中心になって手筈を整え、貝類を通訳に話をつけて先生たちをイギリスまで送り届けた。

  • ビリー:221Bのページボーイ。「少年給仕のビリー」は『恐怖の谷』と『マザリンの宝石』で登場するが、両者の間に15年ほど経っているので、一般的には別人説が有力。

  • ポーロック:フレッド・ポーロック。『恐怖の谷』の登場人物で、モリアーティの配下。ホームズと内通している。

  • ジョナサン・ハーカーの死、および婚約者がミナ・マリーではなくルーシー・ホルムウッド: 1958年の映画版に近い形で改変されたとのこと。

  • キャンバーウェル郵便局:発音的にはカンバーウェルらしい。ロンドンにある。『恐怖の谷』でポーロックが手紙を投函した郵便局。『四つの署名』事件当時、キャンバーウェル地区はサリー州に属していた。メアリー・モースタン嬢が住んでいる、セシル・フォレスター夫人宅のあるローワーキャンバーウェルも、キャンバーウェル地区内にある。

  • テセウス:ミーノータウロス退治などの冒険譚で知られ、ソポクレースの『コローノスのオイディプース』では憐み深い賢知の王として描かれる。ヘーラクレースほどではないが、大岩を持ち上げるほど怪力の持ち主。プルータルコスの『英雄伝』では古代ローマの建国の父ロームルスと共に、アテーナイを建国した偉大な人物として紹介されている。また、『テセウスの船』はパラドックスの一つであり、『テセウスのパラドックス』とも呼ばれる。ある物体において、それを構成するパーツが全て置き換えられたとき、過去のそれと現在のそれは「同じそれ」だと言えるのか否か、という問題(同一性の問題)をさす。

  • ワトソンの矛盾:ワトソンはアフガン従軍の際に怪我をしているが、その部位は脚とも肩とも記されている。また、『最後の事件』でワトソンはモリアーティを「知らない」と言っているが、その前日譚であるはずの『恐怖の谷』では「有名な科学的犯罪者」と述べている。コナン・ドイルが設定忘れてたんじゃ

  • フリーデリケとビリーとポーロックが同一人物:フリーデリケ・ヴィルヘルミーネ・プルンペ・フォン・オルロックの名前の由来は、映画『吸血鬼ノスフェラトゥ』『ジェキル博士とハイド』監督のF・W・ムルナウの本名フリードリヒ・ヴィルヘルム・プルンペ。フリードリヒの英語読みがフレデリックで、これが今作モリアーティのファーストネーム。フレデリックの愛称はフレッドで、ポーロックのファーストネームもフレッド。Orlock(オルロック)の頭にPlumpe(プルンペ)の頭文字Pを足すとPorlock(ポーロック)となる。また、ヴィルヘルム(ウィリアム)の愛称はビリーである。

【追記】
作者の木下森人先生にいくつか裏話をお教えいただけたので、補足いたします。
(先生のお言葉を引用させていただいてます!)

  • フロイトの妹アンナがメイドなのは創作だが、「あの子は自分が気に入ったものを喧伝したがるタチでして」という台詞は、彼女が「広報の父」エドワード・バーネイズの母という事実を意識している。

  • 結城新十郎を直心影流の使い手にしたのは、彼と相棒の花廼屋因果、勝海舟を結びつけるミッシングリンクとしてぴったりだったから。勝は幕府のち新政府の要人で、新十郎は幕臣の子、因果は旧薩摩藩士。この三名が直心影流の同門でもおかしくない。あとバリツの独自解釈としてもちょうどよかった。

  • スタビンズがモーグリをシオニー君と呼ぶのは、自分がドリトルに『スタビンズ君』と大人あつかいされてうれしかったから。ただモーグリにはもともと姓がなかったので出身地のジャングルの名前を与えた。

  • ホームズをシャーロキアンの定説と違うUCL出身にしたのは、最初に探偵事務所を開業したモンタギュー街が、大学の目と鼻の先に位置するから。学生時代の下宿で卒業後もそのまま仕事を始めたという想定。

  • 第二章はサブプライム住宅ローン危機が元ネタ。モーゲージ債の仕組みを単純化しつつアレンジ。モリアーティの天才性を表現するために、一世紀以上未来のバブルを意図的に引き起こさせてみた。そして作中にもあるとおり、上手くやり過ぎた。圧倒的暴力は論理に勝るのである。

  • サブプライム住宅ローン危機についてはマイケル・ルイス『世紀の空売り』および映画版の『マネー・ショート 華麗なる大逆転』がおすすめ。さらに同じ元ネタでより洗練された内容の支倉凍砂『WORLD END ECONOMiCA』もいいよ。
    (※こちらにリンク貼っておきます! by遅読)

  • 英題の『Through the Reichenbach Falls』は『鏡の国のアリス』(原題:Through the Looking-Glass, and What Alice Found There)から。なお英語版は機械翻訳駆使したので精度は保証しないが、英語でしか仕込めないネタも仕込んでる。例えば章タイトルは説明するまでもなく正典のオマージュだが、「動物語通訳」にはさらに意味を込めてる。英語版は「The Animal Interpreter」で、Animalには「野生の本能」「獣性」のニュアンスもある。ようするに第三章の展開そのもの。
    (※英語版リンク貼っておきます! by遅読)

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