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【選挙ウォッチャー】 新潟県知事選2018・選挙戦略中間レポート。

今回の新潟県知事選、実際に現地に入り、展開されている選挙を活動を実際に見てみると、選挙戦略にあまりに差があり過ぎて、本当は原発再稼働を狙っている自民党の花角英世さんが圧倒的に有利であると言わざるを得ません。池田千賀子さんの陣営は、あまりにも選挙戦略を立てられていないので、僕が書く1本のレポートで世の中が変わるほど甘くないとは思いますが、選挙が終わった後にまとめるのでは不親切すぎると批判を受けそうなので、急遽、選挙戦略中間レポートという形で無料公開させていただくことにしました。今回の新潟県知事選は、「confess」の共同プロジェクトにより、皆さんからのカンパによって宿泊費&交通費を捻出することができましたので、無料公開が約束されております。


■ ポスターで負けている池田千賀子さん

現地に入り、まず驚いたのが「ポスターのデザイン」がクソすぎることです。このレポートを熱心に読んでいる人たちは政治や選挙に興味を持つマイノリティーの皆さん。悲しいことに、最も多いのは自民党を支持している人ではなく、「選挙に行かない人」ということになり、その次に多いのが「一応は選挙に行くけど、その時のノリで良さげな人に投票する人」です。最初から自民党に投票する人や、最初から共産党に投票する人は、どんな候補が立っても投票先は変わらないので、選挙で訴えるべきは「一応は投票に行くけど、その時のノリで良さげな人に投票する人」になります。そして、そういう人たちが誰に投票するかを決める際、一番の決め手となるのが「ポスターのデザイン」です。なので、選挙に「美人」が立候補すると、それだけで当選してしまうことは珍しくありません。もっと成熟した国家なら、きっとそんなことは起こらずに政策を読み込んで決めるんでしょうけど、日本では今なお多くの方が「フィーリング」で決めているということを忘れてはなりません。
そのような観点で見た時に、花角英世さんは「元新潟県副知事」という肩書きを引っさげ、QRコードを配し、「県民信頼度ナンバーワン」の根拠はさっぱりわかりませんが、とにかく信頼されている感を自称し、本当に良い人なのかどうかはさておき、なんとなく立派そうに見えます。対する池田千賀子さんのデザインは原発をなくしたい気持ちこそ伝わってきますが、この人がどれだけ立派な人であるかの裏付けがポスターには書かれていません。フィーリングで投票する人は「なんとなく良さげ」な人に投票するわけですから、このポスターを見比べた時に花角英世さんに投票してしまうのは言うまでもありません。つまり、最も重要なポスターのデザインさえ、これだけ戦略が考えられていないのですから、それ以外の部分でも戦略が考えられていないのがよくわかります。


■ 池田千賀子さんの言葉を無効化する戦術

柏崎刈羽原発の再稼働を中止するべきだと主張する池田千賀子さんに対し、花角英世さんはどのように返しているかと言うと、「新潟県の問題は原発だけではない」としています。確かに、原発問題は大きな争点ですが、実は、日頃のプロパガンダが効いていて、多くの人が「原発を再稼働しないと電気代が高いまま」だと思っています。トータルコストで考えた時には明らかに原発を再稼働した方が電気代は高いのですが、いろいろなカラクリで安く見せられていることに気づいている人は少数派で、今なお多くの人が原発の再稼働が「地域経済を活性化する」と錯覚しているのです。そもそも新潟県民の人たちが最も心配しているのは原発問題ではなく、地域経済の問題です。花角英世さんは、具体的に何をして地域を活発にするのかという話はしていませんが、自民党お得意の「国と連携して」という言葉で、何か良い感じのことをしてくれそうな期待感を演出しています。そして、「原発の問題だけが重要ですか?」とたびたび問うのです。これは名護市長選の辺野古基地問題を問うスタイルに似ていて、あまりに原発問題や基地問題に固執してしまうと、市民や県民のニーズから離れてしまうのです。なので、池田千賀子さんは花角英世さんの「原発問題無効化」に対抗しなければなりません。では、どうすれば対抗できるのか。現在、池田千賀子さんが演説の冒頭から原発の問題を語っていますが、やはり原発問題はメインディッシュに持って行くべきです。つまり、街頭演説のほとんどを地域経済の話など、地元に根ざした話を中心にして、演説の最後の最後に「そしてやっぱり原発の再稼働問題です。これは切っても切り離せない問題ですよね」と言って、切っても切り離せない問題を切り離そうとしている花角英世さんの言葉に返す必要があるのです。原発の話は、最初から最後まで語るのではなく、最後に一言だけ決め手のように話す方が有効です。


■ 「女性知事の誕生を」というテーマは控えた方がいい

女性が輝く社会にすることは大切ですし、もっと女性がリーダーになるべきだと僕は思います。なので、池田千賀子さんの「女性を知事にしよう」という意見に個人的には賛成なのですが、このテーマは選挙にネガティブに働くことがあるということだけは伝えておかなければなりません。残念ながら、日本は成熟した国ではありません。人権さえ蔑ろにされる国であり、ヘイトスピーチを繰り返すアホが議員になったりする国であり、女性にだけ体当たりしてくるアホが人通りの多い場所を歩く国であり、男女の平等が守られていないという意味では世界の国々で下から数えた方が早い国でもあります。これは日本人の中に「男尊女卑」が根付いてしまっていて、女性の地位を向上させることに、まだまだ抵抗感があるからだと考えています。花角英世さんを応援するジジィが「女性の知事なんていらない」と発言して炎上していますが、世の中の偉そうなジジィどもは、麻生太郎さんの「セクハラ罪というものはない」に象徴されるように、女性をまだまだ認めていないのです。こんな状況は一刻も早く変えなければならないのですが、この国のマジョリティーが「女性だからって無条件に知事にできるかよ!」と思っているのだとすると、このキャッチフレーズはマイナスに作用します。このテーマを語る時には「ただ女性だから知事にするべきだ」と主張していると受け取られるのが最悪中の最悪なので、「どうして女性知事だと良いのか」というメリットを語らなければなりません。その時に「もっと女性が活躍すべきだから」ではなく、女性目線だからこそ地域の問題に目を向けられるという話をしなければなりません。例えば、オジサン社会では車を輸出したら儲かると考え、TPPに賛成してしまいましたが、主婦は車が売れることより、毎日食べるお米が安全かどうかも分からないような国産ではなくなり、農家のお父さんが生活できなくなる方が心配だと訴えれば、男性より女性の方が生活に根ざした政策を打ち出してもらえるのではないかという期待感が生まれます。無条件に「女性をもっと偉いポストにつけるべきだ」と言ってしまうのは、今の日本では乱暴すぎるのです。


■ 共産党っぽさをなるべく消し、立憲民主党っぽさを演出する

池田千賀子さんは「野党共闘」の候補です。共産党にも推されていますが、立憲民主党にも推されています。共産党の方々には申し訳ないですが、世の中の「共産党アレルギー」は深刻で、花角英世さんのフォロワーを見ても、そのほとんどがネトウヨになっています。つまり、共産党というだけでブツブツができてしまうのではないかというくらいの極度の共産党アレルギーの方々が花角英世さんを応援しているのです。ここで参考にしたいのが「野党共闘」のパターンで選挙に勝った市川市長選の再選挙です。自民・公明から推薦されていた坂下茂樹さんが最下位に終わり、立憲民主党や共産党に推されていた村越祐民さんが勝った選挙。1回目の選挙では共産党や新社会党の方々が大集結し、どこでもプラカードを掲げてしまう「サヨク臭」が出てしまい、当選に必要な25%を超えることができませんでした。2回目の選挙では、トンマナを立憲民主党に寄せ、共産党っぽさを排除したところ、ライバル候補が政策協定を結んで高橋亮平さんや小泉文人を取り込んだにもかかわらず、誰とも政策協定を結ばなかった村越祐民さんが勝ったのです。やはり、「野党共闘」で戦う場合には、どれだけ「サヨク臭」を消すことができるかが勝負となります。一応、断っておきますが、僕は「共産党=左翼」だと言いたいわけではありません。ネトウヨが持っている「サヨク」のイメージを選挙に持ってくると、厳しい戦いを強いられることになると言いたいのです。


■ 花と一緒に写真を撮ってSNSに載せる必要がある

花角英世さんが「花角」という名前だからなのでしょうか。気になったのは、演説をする時に隣に立っている女性が謎のひまわりを持っていることです。僕のような何でも穿った目で見ている人間からすると「怖えぇよ!」と思うのですが、もしかすると新潟のおじいさんやおばあさんは、そんな謎のひまわりを見せられても「もうすぐ夏だねぇ!」ぐらいに思うのでしょう。とにかく花を使って爽やかさを演出していることは間違いないと思います。しかし、うっすらハゲたオジサンとひまわりを並べるより、池田千賀子さんと花を並べた方が、よっぽど絵になると思います。こういうカルトめいた「謎の花」みたいなものは、とっとと無効化した方がいいと思うので、池田千賀子さんも地元で栽培されているような名産の花などがあったら、アピールしつつ、SNSに「池田千賀子さんと花」の写真を載せた方がいいのではないかと思います。これで票を獲得できるわけではありませんが、選挙とは常に相手の動向を見て、さまざまな対処をしていくものであり、常に相手の手を無効化していくことを考えなければなりません。デマを仕掛けられても、そのデマを無効化していくにはどうしたらいいかを考えていく。正しいことを言っていれば投票してくれるわけではないのです。


■ SNSが圧倒的に足りない

今回、若者の多くは花角英世さんに投票することになると思います。これもまた日頃からのプロパガンダが有効に機能しているからなのですが、それ以前に、池田千賀子さんは若者票を獲得する動きを見せていません。池田千賀子さんは、もっとスマホでツーショットをたくさん撮られるべきです。スマホを持っている人がいたら、自分からお願いしてでもツーショットの写真を撮り、それを拡散してもらうべきです。地上戦で確実に票を獲得している花角英世さんに対抗するために、主に空中戦で戦わざるを得ない池田千賀子さんがSNSを駆使しない手はないのです。池田千賀子さんが地元のおじいさんやおばあさんとどれだけ握手をしても、花角英世さんに勝つのは難しいのではないかと思います。

なぜなら、花角英世さんは「良い感じのポンコツジジィ感」を出しながら、人たらし的に握手をしているので、キリッとした雰囲気を持つ真面目な池田千賀子さんが花角英世さんのような味のある(=票の取れる)握手をするところを想像できないからです。人には「向き不向き」がありますから、池田千賀子さんはなるべくSNSを活用し、ツーショット作戦を展開していく。とにかく若者層を取り込まなければ始まりません。若者を見つけたら、とにかく声をかけてツーショットを撮るぐらいのことをしていかないと勝負にならないと見ています。


■ 選挙ウォッチャーの分析&考察

選挙というのは「選挙戦略」が非常に重要です。政策を訴えるだけで勝てるのであれば、今頃、この国はとっくに良くなっているに違いありません。しかし、政策で上回る候補が勝てないから、この国はどんどんおかしくなってしまうのです。それはつまり、良い政策を掲げている候補が「選挙戦略」を立てることができず、選挙を科学している自民党に勝てていないから。自民党より知恵を使い、あらゆる戦略を立て、どうすれば有権者に言葉が届くのかを真剣に考えなければなりません。まだマイクが使える明るい時間帯に連合新潟のオジサンたちのために集会に参加している場合ではないのです。連合新潟のオジサンたちも選挙で勝たせたいと思っているなら時間帯を考えろという話です。どいつもこいつも支えている奴がポンコツすぎるのです。今回の新潟県知事選は、とても強い危機感を持って見守っている人たちがたくさんいます。こうした人たちの期待を裏切らないようにするには、とにかく「考える」ことが大切であり、少なくともライバル候補よりもたくさん考えていなければなりません。名護市長選の二の舞を見たくはないのです。僕が外野からレポートを書いたぐらいで何かが変わるわけではありませんが、面白い選挙になることを期待しています。[了]

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