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【勝手に読書感想部】告白:湊かなえ

[はじめに]
一部内容にネタバレ含みますので、まだ読んでいない方はご注意ください。


さすがイヤミスの女王。
本当に後味が悪く、イヤに気分になりました。笑
だけどこの不快感がなんとも心地よく、ずっと余韻を味わってしまう。
そんな素晴らしい作品でした。
昔映画で見たけど、ストーリー忘れかけてたので普通に新鮮な気持ちで楽しめました。

ストーリー

中学教師でシングルマザーの森口が、自分の娘を殺した修哉と直樹、2人の生徒に復讐するストーリー。
直樹に対しては当初の森口の狙い通り、じわりじわりと復讐の鎖を締め付け徐々に追い詰めて心を壊していく。
修哉の方は、そんな鎖は物ともせず、むしろその状況を楽しんでいるくらい、飄々と学校に通っていた。

自分の中で印象的だったのは、3人の母親像。
直樹の母、修哉の母、そして森口悠子。

直樹の母

息子を歪んだ愛情で守ろうとした結果モンペ化、最終的に息子に殺される。
直樹は、両親と歳の離れた2人の姉に囲まれごく普通に愛情を持って育てられたという印象だけど、この家族の関係の中にはやっぱりちょっとした闇があった。森口の復讐によってこの闇が広がり最悪の結末を迎えるのだった。
直樹は自分の殻から抜け出し、自分の罪を受け入れようと母親に全てを告白したのに、母親は息子の罪を受け入れることができなかった。
直樹を殺して自分も死のうと持ちかけた際、直樹のことを「失敗」と言ってしまう。
母親は息子が引きこもりで不登校になっていることを家族の誰にも相談することができなかった。
息子が殺人犯だという事実を認めたくない、息子を守りたい、という感情が結果的に息子も自分も追い詰めてしまったのだと思う。
誰かに相談できていれば、と悔やまれる、悲しい親子の結末だった。

修哉の母

修哉の母は、素晴らしい才能を持ちながら平凡な男性と結婚・出産し1度は自分の夢を諦めるも、子供への虐待が引き金となり離婚。

修哉は、幼い頃から母親からあなたは優秀だと言われて育ち、それを信じて疑わなかった。周りの人間を馬鹿にして下に見ていた。
捨てられてもずっと母の影を追っていた。
どうやったら母に認められ褒められ抱きしめてもらえるかを必死で考えていた。
行きついた結論が猟奇的な犯罪を犯すことでメディアに取り上げられ母が迎えにきてくれる、ということだった。自分の天才的な発明品を用いて担任の娘を殺すこと。
ある意味この人が一番ピュアだ。
この母親像は、修哉の視点からしか描かれていないけど、過去に自分が捨てた息子のことはもはや眼中にない感じが明らかに読み取れる。才能に溢れ奔放な人生、自分と同じく才能を持った男性との幸せを掴みかけたところで、修哉の手によって殺されてしまう。
描写は描かれていないけど、この時の修哉の絶望感って想像すると本当にエグい。

森口悠子

幼い娘を殺され冷酷に復讐を成し遂げた森口。
彼女の語り口は一貫して感情が無いというか、人間らしさを感じられませんでした。
直接手を下した直樹の方は森口のねらい通り勝手に壊れてくれたけど、修哉は一筋縄ではいかなかった。
自分の望む形で修哉を壊すために、彼の立ち上げたサイトをこまめにチェックしたり、復讐を再構築したり、、、ものすごい執念だ。
せっかく娘の父親である桜宮が、教師として立ち直るチャンスを与えてくれたのに、森口は娘を殺された母親として何としてでも復讐を成し遂げるという生き方を選んだ。
ラストの森口からの修哉への電話、最後の1行に人間の脅威を感じ、背筋が凍りました。


三者三様におぞましさがあり、それぞれに歪んだ愛情を感じました。
この愛情ががもつれ、あらゆる悲劇の引き金になってる。皮肉なストーリーです。

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