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【勝手に読書感想部】かがみの孤城:辻村深月

[はじめに]
一部内容にネタバレ含みますので、まだ読んでいない方はご注意ください。


最初はよくある中高生向けのファンタジー的な小説なのかなーって思いながら読み始めました。

主人公の安西こころは、やわらかな心を持った中学生の女の子。
ものすごく繊細で、些細なことで傷付いてしまう。

いや、些細なことではない。
中学に入って間もなくクラスの中心的な女子からいじめのターゲットとなり、不登校になってしまう。

学校生活の中で、トイレに行くときとか、移動教室、休憩時間もひとりぼっち。
本当に経験者にしかわからないような苦痛や恥ずかしさ、寂しさに共感して胸が痛くなりました。

鏡の中のお城で、“願いの部屋”に入る鍵をみつけたら、願いを叶えてくれるって聞いた時に、
自分をいじめた人間を「消してほしい」という願いを心に思い描いたこころがとても悲しかった。

誰かが仲良く話している姿をみて、自分の悪口を言っているんじゃないか?と不安になったり、
なんてことない会話の中での相手の言葉遣いや、相手の仕草で傷ついてしまったり…。
人と接することで簡単にボロボロに傷付いてしまう。
そんなこころが、鏡の孤城で出会った仲間たちと関係を築く中で少しずつ成長し、前を向けるようになっていきます。

このお城に集められたのは、スバル、アキ、マサムネ、ウレシノ、リオン、フウカ、そしてこころ。
それぞれの理由で学校に通えなくなってしまった7人。
こころが皆と打ち解けて仲良くなっていく姿にホッとしながら読んでました。

ストーリー序盤から印象的だったには、こころの感情に寄り添って理解してくれるフリースクールの喜多嶋先生。
中盤こころに会いに家を訪ねてきてくれた際に、「こころちゃんは毎日、闘ってるでしょう?」と言ってくれる。
なかなか自分の心中を打ち明けられる大人が周りにいない中で、こころの心強い味方になってくれる先生でした。
喜多嶋先生が手土産に紅茶を持ってきてくれたシーンで「この先生が大人になったアキだったらいいな」って読みながら思っていました。
願いを叶えた後、城は消えてここで過ごした記憶も、仲間のことも忘れてしまったこころだけど、2年生の新学期に勇気をだして登校します。
オープニングの「転校生」の伏線回収もとても秀逸で涙がでました。

「私たちは助け合える」
今、学校に行けなくてもがいてる人、行っててもつらい思いをしている人にはぜひ読んでほしいです。
今は苦しいかもしれないけど、諦めないで大人になってほしいなって感じさせてくれる、ステキな作品でした。

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