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【勝手に読書感想部】名前探しの放課後:辻村深月

[作品紹介]

かわいい子に告白されて付き合って、飽きたらサクッとフッちゃって・・・モテるけど、どこか冷めた高校生のいつかは、なぜか3ヶ月前にタイムスリップしていた。
鮮明に思い描かれる記憶
「今から3ヶ月後、終業式の夜に同級生の―――が自殺する」
その同級生を探しだし、自殺を阻止するために同じ中学出身のあすなや親友の秀人らと編成された「名前探しの放課後」プロジェクト。


[感想]

ジャンルで言うと、青春SFミステリー?といった感じでしょうか。
私は、朝のスキマ時間、仕事の合間、夜寝る前といった感じで、小刻みに時間を作って読書に当てている感じなのです。
何時間も没入して一気に読めないことのほうが多いので、本を開くと「えっと、どこまで読んだんだっけ?」「展開どうなってたっけ?」と数ページ戻っておさらいしないと物語の中に帰ってこれないんです。いつもは。

だけど、この「名前探しの放課後」についてはなぜか、ページを開いた瞬間から物語の世界観にすぐに溶け込める。
理由はきっと、物語の一行一行がしっかりと厚みを持っているから?
加えて作品自体に不思議なウェルカム感というか、読者を受け入れる寛容さを感じました。

ゴールというか目的の地点が決まってて、その期間でどれだけ状況を良い方向に持っていけるか。
そしてその期間の中でそれぞれの登場人物がどれだけ成長できるかを見届けるのが、この作品を楽しめるポイントなのかなって思いました。
・・・最後まで読み終えるまでは。


*以下ネタバレ含みますので、まだ読まれていな方はご注意ください。


無事、河野の自殺を阻止して、何事もなく3学期に突入。
だけど、何かよく分かんない違和感がずっと胸にありました。

Xデーを過ぎたのになんでこの話まだ続いてんだろ?

終章「石のスープ」からは、今までの動向を覆す、全く別の展開へ。
急に別の話になったみたいに、しかしこれまでくすぶっていた違和感をものすごい勢いで回収していきました。
「あれが起きた」と言ういつかの言葉を合図に、メンバーが一斉に動き出す。何故かいじめ首謀者の友春といじめられっ子の高野が一緒にいる。
え?ええ??ってなって、読み進めながら胸がドクドクと鼓動を打つ。
早く続きが読みたい、読まなきゃ。
結論、あすなと一緒にずっと騙されていた読者の私・・・笑

3ヶ月の間ずっと演技してたってすごくないですか?
しかも全く話もしたことのない相手のために、時間とお金を犠牲にして。
それを可能にさせるくらい、あすなと関わる前から、ホントはいつかはずっとあすなのことが好きだったんだね。そしてそれを理解していつかを助けた秀人
恋と友情の描写が青春っぽくてグッときましたね。
この世代ならではの勢いと突破力、やわらかな心を持ってこそ成し遂げることができたんだろうなと。

ラストの1文で、ようやく2人の「名前探し」が完結する。
すごくキレイな終わり方だなって思いました。

それにしても、本作は『ぼくのメジャースプーン』のスピンオフだったんですね!いろんな方の作品紹介や感想を読んでて知りました。
先に読んどけばもっと楽しめたのかと思うと、ちょっと後悔・・・。
エピローグの、秀人が「力を使った」ってくだり。
この度のいつかのタイムスリップには秀人が絡んでるってことですよね?きっと。
『ぼくのメジャースプーン』早急に読まなきゃ・・・笑


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