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【勝手に読書感想部】鳥籠の小娘:千早茜 (著)・宇野亞喜良 (イラスト)
[作品紹介]
大人のフェアリーテイル。
村の片隅でひとり鳥籠を作り続ける少女の物語。
少女の作る鳥籠には幸福が宿ると言われており、村人たちはその鳥籠を貰って家に飾り、お金の代わりに、少女の家の前に食べ物やお菓子を置いていきました。
[感想]
宇野亞喜良さんの専売特許的な「笑わない少女」のイラストが凄く魅力的で物語の世界観にぴったりでした。
奇妙なんだけどそそられる、そして普通に美しい!
まさに、大人のための絵本って感じでした。
中でも、おとな心を揺さぶる、印象に残ったフレーズがありました。
わたしはこの鳥籠のようにからっぽでいたいの。草花や空の色も、朝の澄んだ空気も夜の湿り気も、からっぽだから入ってくるの。
わたしの指が、竹のしなり具合や小さなささくれを感じられるのも、からっぽだからよ
生きてると自分の「からっぽ」さに不安になるし、「何者かになりたい」「何者かであらなきゃ」と焦りがちです。
この本の趣旨とは少しずれるかも知れませんが、何かを受け止るためには、そして本当の意味で自由でいるためには、からっぽでいていいんだって感じました。
持たないことを選んで生きていくことは、日常から与えられる様々な事象をありのまま受け入れていけるということ。
本当の意味での「からっぽ」の美しさを教えてもらったような気がします。