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【勝手に読書感想部】オーダーメイド殺人クラブ:辻村深月
[作品紹介]
「私を、殺してくれない?」
中学2年生の「リア充」女子のアンは、クラスの中でもイケてない部類に属する非モテ「昆虫系」の徳川にそう持ちかける。
教室での席は隣同士だが全く会話を交わした事のなかった2人が、被害者と少年Aとなって、世の中に大きなショックを与えるセンセーショナルな事件を計画する。
[感想]
皮肉な話ですが、「死」を強く意識しているからこそ「生」に真剣に向き合える。
「降りる」ことを決めているから辛い現実になんとかしがみついていられる。
人生の終着地点を決めてからの方が、アンの行動は活き活きと描かれていたし、何より自分の最高の死のシチュエーションを徳川と2人で計画している時間に、アンは1番「生きてる」ことを実感できていたように思います。
*以下ネタバレ含みますので、まだ読まれていな方はご注意ください。
アンが抱えている人間関係の問題・・・
昨日まで仲良く過ごしていたグループの子から突然外されて、クラス中から無視される。親も教師も自分の味方ではない。
移動教室や体育の着替えの時にひとりぼっち、の辛さは実際に経験した人じゃないときっと理解できないと思います。
心が柔らかい、この年代の子には本当に耐えられない・・・
こんな毎日が永遠に続くって思っているから、「降りる」って期限を設けないとやっていけなかっただろうと思います。
そんなアンにとって、自分を殺してくれる徳川は救世主で、矛盾してるけど生きる希望になっていたように感じました。
徳川は、アンに殺人計画を持ちかけられる前から、ずっとアンのことが好きだった・・・それが分かると、今までの徳川の発言や行動が全てその気持ちから来ていたことが理解できて、なんかかわいかったです。
(何度も死に対する本気度が低いとなじられたり、河瀬のことを大嫌いと言ったり、一緒にいる時もあえて大きく距離をとったり・・・)
2人の「余生」に希望が見えるようなラストだったので、(作中の重苦しい空気と、死の描写の生々しさですごく読み進めるのが辛かったけど)途中でドロップせずに最後まで読んでよかったです。