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【勝手に読書感想部】白鳥とコウモリ:東野圭吾
[あらすじ]
遺体で発見されたのは弁護士の白石。
正義感が強く誠実な仕事ぶりで、人から恨みを買うような人間ではないと誰もが口を揃える。
そんな白石がどうして殺されなければならなかったのか?
その答えは30年以上前に愛知で起きた事件まで遡る。
[ネタバレと感想]
*以下ネタバレ含みますので、まだ読まれていな方はご注意ください。
東野圭吾作家生活35周年記念作品とのことで、
なるほど東野先生らしさが詰まった作品だと感じました。
重たくて救いがない真相が待っているってわかっているのに、それでも続きを読みたい。
読み進めていく中で次から次へと、新しい事実が明るみになり、真相に近づいていく。
手に取るのを躊躇するくらい、ものすごく分厚い本だったのですが、展開が気になりすぎて、あっという間に読了しました。
事件が起きると、必ず加害者側の家族は、加害者本人と同等に罰を受ける。
親ならその責任を少なからず問われるのもやむなしと思うけど、親が犯した罪、それも自分が生まれる前の罪に対しても、家族が背負わないといけないのかな?
本当に理不尽で胸が苦しくなりました。
ネットや世間の歪んだ正義感に胸焼けがしますね。
こういった加害者家族に対する誹謗中傷や排除の動きは単に小説の中の話だけではない。今この現実に起きていることだと思えばこそ、より一層胸が痛みました。
本来なら和真自身が罪を犯したわけじゃないんだから、謝る必要もないはずですもんね。ましてや被害者でもなんでもない人たちから非難され攻撃されるなんて・・・
そもそも、人は自分が犯した罪でしか裁かれるべきじゃない。
誰か罪を肩代わりすることで、自分の罪を償うことなんてできないと思います。
その分、真犯人の本当の動機を聞いた時は、「は?なにそれ」ってなりましたね。
急に肩や腕の力がガクッと抜けて、ここまで読んできた緊張感が剥がれるというか。。。
そんな目的のために、白石も倉木も命懸けてこの子を守ろうとしたのかと思うと虚しくて救いがないように感じたのです。
「白鳥とコウモリ」そして「被害者遺族と加害者家族」
相容れない存在であっても、同じ目的に向かって手を繋ぐこともある。
タイトルの回収に背筋が伸びました。
最後には白鳥とコウモリの立場が逆転してしまった美令と和真。
今度は美令の方が茨の道を歩む事になるのかと思うと少し胸が苦しくなったけど、また手を繋げる日が来ると信じられる、希望が持てるようなエンディングだったのでちょっと救われました。