イクラ丼だな!
個人的に庶民的で、世間的には豪勢さのある、とあるメニューを思い付いた、というか思い出した。
それは、イクラ丼。
僕がまだ岩手にいた子どもの頃、親戚で漁師の叔父さんが、殻付きのホタテや、瓶詰めのウニなどの海産物をどーんと持ってきてくれることがあった。その中で、いつも僕が一番アガッたのが、イクラだった。
インスタントコーヒーの大瓶(たぶんブレンディ)が2〜3本に、満タンの醤油漬けイクラをもらう。
「早く食べちゃわないとわるくなるからね」
そう親にも言われるので何の遠慮も要らない。普通のお茶碗のご飯に、コーヒー瓶からスプーンでイクラをドベドベと好きなだけかけて食べる。僕にとってイクラとは、あまり珍しいものではなく、あれば毎日あるだけ食べられる。そんな存在だった。
人生最後の日の食事と言われて、選ぶものが質素めなものや、わりとありふれたメニューになるのは、きっとその人にとって、身近なもの、思い入れのあるもの、リアリティーのあるものを食べたいと思うからな気がする。で、きっと様々なご馳走を知っているだろう著名人がそれを答えると、そこに発生するギャップがカッコ良いのだ。
だから、僕が質素で庶民的なものを選ぶのは、なんか面白くないと思った。ギャップが無い。だけど、思い浮かぶのは、ゆで卵とか、煮卵とか、珍しくてゆで卵の天麩羅とか、そんなだ。
振り返って考えてみた結果が、イクラ丼。これが丁度いい。
僕が、イクラというものがこんなに高級品なのだと知らなかった頃の、家庭の味、思い出のメニュー。
なんだか釣り合いがとれた!という気がしたのでした。
醤油漬けのイクラを、ドベドベかけて。欲張るなら少しワサビ。
あとは、やっぱりシチュエイション次第。
不治の病か、隕石か、地球のコアが止まったのか、死刑囚なのか...etc
それによって変わるね。特に体調だね。
元気に魚卵を食べられる、そんな最後の日でありますように。