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変わりゆく精神医療-単剤化の現実-
最近、ネットで「精神病院は薬漬け」という言説を目にすることがあります。
しかし、それは一昔前の話であり、現在の精神医療の実態とは異なります。この記事では、現代の精神科治療の実態を分かりやすく説明し、誤解を解いていきます。
入院時に強い薬を使うのは一時的な措置
確かに、統合失調症や双極性障害、うつ病などの急性期においては、興奮や不穏状態を抑えるために鎮静薬や抗精神病薬を使用することがあります。しかし、これはあくまで一時的な措置であり、症状が落ち着けば減薬や適切な薬剤選択が行われます。現代の精神医療では、必要以上に多剤を処方することは避けられる傾向にあります。私は心理士として救急病棟でこの様子を見守っていますが、優秀な薬物療法を行う医師は、疾患レベルでの心の問題をあたかも外科手術のように取り除きます。そして、インフォームドコンセントを辛抱強く続けながら患者さんに合った薬に絞り込んでいくのです。
精神疾患の治療は「単剤化」が基本
過去には精神疾患の治療で多剤併用が一般的でしたが、現在は「単剤化」が推奨されています。特に近年の治療では、レキサルティ(ブレクスピプラゾール)やアリピプラゾール(エビリファイ)などの非定型抗精神病薬を少量で使用することが増えています。
また、新しい薬剤として**ロナセンテープ(ブロナンセリン)**が登場し、貼るだけで薬の管理ができるため、服薬の負担を減らす工夫もなされています。
服薬の継続が再発を防ぐ
統合失調症や双極性障害、うつ病などの疾患は、薬物療法を適切に継続することで再発リスクを大きく下げることができます。「薬をやめたい」という気持ちは理解できますが、医師と相談しながら適切な量を維持することが大切です。現在は副作用が少なく、生活の質を保ちながら継続しやすい薬が増えています。
単剤化による明るい未来
もちろん、精神疾患だけではなく全ての疾患はストレスと結びついていますので、その薬を使えば立ち所に全ての精神疾患が治ると言うわけではありません。また、治療の経過の長い方は重症化してしまい結果として多めの薬を内服している方もいらっしゃいます。しかし、近年の精神医療の進歩により、例えば統合失調症や双極性障害、うつ病の治療においても、例えば、朝一粒の薬を飲むことで、会社員が生活の質を落とすことなく仕事に通うことができたり、少量の内服により地域で当たり前のように暮らせるようになる患者さんもいらっしゃることは確かです。適切な治療と薬の管理によって、多くの人が自分らしい人生を送ることが可能になっているのです。
精神疾患に関する誤解を減らし、より良い理解が広がることを願っています。