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聴くだけで和む「あったか音楽」

知る人ぞ知るヴィヴァルディの「四季」の奥深さ

寒い冬の日、冷たい風にさらされながらも、家に帰れば温かい部屋でほっと一息。そんな時間にぴったりの音楽があります。それが、ヴィヴァルディの《四季》から「冬」をお届けしましょう。

「モダン・ヴァイオリンによる演奏」       
 参考音源:Chloe Chua & Singapore symphony Orchestra

ヴィヴァルディの「四季」と言えば音楽の授業でいやいや覚えた人も多いと思います。詰込み教育の弊害。あの時は、大人も子供も必死だったのです。

いざ大人になってみると「歴史」や「古典」などの奥深さに触れる機会も多くなり「こんなに面白かったのか!もっと勉強しておけば良かった!」と思うようなトピックも多いですよね。「音楽」の授業も同じです。

ヴィヴァルディの「四季」は、季節の情景を巧みに描写し、私たちの心に豊かさを与えてくれる魅力があります。実際、この協奏曲は名曲揃いで、名前は知らないけど映画やTVやCMで「聴いたことある!」という方も多いでしょう。

今回は、その中でも「冬」に焦点を当ててみましょう。

冬の情景描写と現代の暮らし

ヴィヴァルディの「冬」は、第一楽章で凍てつく寒さの中、氷の上を歩く様子や凍えそうな風が描かれています。これは、現代の日常生活にも通じるところがあり、例えば「朝の通勤途中で凍った道に気をつける」ような場面を思い浮かべると、より親しみが湧くかもしれません。

第二楽章では、暖炉の前でほっと一息つくような、心が和む音楽へと変わります。これは、現代の私たちがカフェで温かい飲み物を楽しみながらくつろぐ時間に似ています。ヴィヴァルディが生きた18世紀のヴェネツィアでは、すでにカフェ文化が根付いており、音楽と共に冬のひとときを楽しんでいたことでしょう。

氷の描写とスケートの歴史

「冬」の音楽は、氷の上をすべるような旋律が特徴的です。ヨーロッパでは、すでに冬の氷上でスケートを楽しむ文化が広まっていました。オランダなどでは、氷上を駆け抜けるようなスピードスケートが人気であり、ヴィヴァルディの音楽がこうした生活風景に影響を受けた可能性もあります。


ピーテル・ブリューゲル「雪の中の狩人」美術史美術館(ウィーン)


「冬」を聴くと、当時のバロックヴァイオリンによる音色の違いにも注目できます。ナチュラルな羊腸弦を使用していたバロック時代の楽器は、現代のモダンヴァイオリンと比べて柔らかく温かみのある音が特徴です。聴き比べることで、同じ曲でも異なる雰囲気を楽しむことができます。

「バロック・ヴァイオリンによる演奏」
音源:Cynthia Miller Freivogel and the Early Music ensemble Voices of Music


聴くことで温まる音楽の魅力

バロック・ヴァイオリンとモダン・ヴァイオリンでヴィヴァルディの協奏曲集「四季」より「冬」を聴いていただきました。いかがでしたか?バロックとモダンの違いはまた別の記事でご紹介したいと思います。

もう一つ雑学を…。実は弦楽器のピチカートはパチパチと木がはぜる暖炉の音を描写したものです。バロック時代にこのような擬態音が用いられるのはとても珍しい例です。このような音色にも耳を傾けて頂けると新しい学びがありそうですね。

冬の寒さを感じるほど、音楽の温かさは一層心に染み渡ります。ヴィヴァルディの「冬」を聴きながら、温かい部屋で心を癒してみてはいかがでしょうか。

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