教師が不登校の生徒に悩んでいるときに読んでほしい本⑮先生や保護者が知っておくと役立つ、今どきのゲーム、スマホの世界 ~前編~
私が子どもに禁止していたスマホとゲームを結局買ったわけ
今どきの子ども社会では、携帯電話、スイッチ、プレイステーションはほぼほぼみんな持っています。持っていない子どもの方が少数派なのは間違いないでしょう。外に出かけるときはスイッチ、家の中ではプレイステーション。これらで遊ぶときに、友だちとの通話で携帯電話が使われています。もはや、子どもの三種の神器です。
私の子ども時代は、ゲームを買ってもらったのは小学校高学年のころ、プレイ時間は一時間と決められていました。そして携帯で通話しながらゲームをすることも、オンラインで対戦することもありませんでした。ゲームに対してそのような経験とイメージを持っていた私は、最新のゲーム事情を全く分かっていなかったことに後になって気付きました。
そして、私自身は高校生のときにゲームをきっぱりとやめ、読書を中心とした勉強をしていたために、ゲームやスマホ、動画などで無駄な時間を過ごすより、我が子にも読書などして欲しい、賢く成長して欲しいという強い思いがありました。親が学者の家庭はテレビすら見ない、という話をどこかの本で知り、それにも影響されていましたので、今思えば、私は極端な親であり過干渉でもあったのです。
さらには、子どもがゲームやスマホに依存するのが怖い、という理由もあり、ゲーム、スマホの類を一切買い与えていませんでした。
しかし、子どもが不登校になって考えた末に、これらを全て買い与えることになりました。
不登校の子どもに、これらのゲーム、携帯電話を買った方がいいと思った最大の理由は、これらを買うことで、子どもが家から出られなくても友だちとのつながりが維持できると感じたからです。
・スイッチを買う
まず最初に購入したのは任天堂のスイッチでした。
子どもは大喜びでした。今まで本当に欲しかったのでしょう。今思えば、今までスイッチを持っていないことで受けてきた、友だちの輪から疎外されてきたことからの解放される、友だちの輪に入れる喜びを意味していたのでした。私の知らないところで、スイッチを持っていないという理由で、遊んでもらえなかった事が何回もあったようです。大人からすれば、ゲーム機を持っていない子がいたら順番でプレーすればいいのに、と思ってしまいますが、順番でプレーすることもしてもらえなかったことが多々あったそうです。
それだけみんな持っていて当たり前になっていたのです。そのことを知らなかった私は、我が子にはかわいそうなことをしてしまった、と反省しました。
スイッチというゲーム機は両サイドのコントローラーを取り外してコントローラーを1つずつ持てば、友達とその場で対戦を楽しむことができます。さらにコントローラーを持って来さえすれば、1つのスイッチ本体を使って大人数で対戦を楽しむこともできるため、今どきの子どもは外で遊びに行く時ですらスイッチを持っていきます。
暑い季節では、最近の猛暑は異常ですから、みんな家に集まってゲームで遊ぶということが多いのです。
だから、スイッチ本体を持っておらず、またコントローラーすら持っていない子どもは、その時点で多くの遊びの機会に参加ができず、大変な寂しい思いをさせられることになります。
私たちの時代でも、ゲームのうまい、へたなどゲームを原因としてできるスクールカーストはありましたので、単純にゲームの機械を持っていないことで、子どもが損をすることの方が大きいと感じ、考えた結果購入したのでした。
私が今非常に後悔しているのは、今どきの子どもの世界を私自身がよく分かっていなかったためにかわいそうな思いをさせてしまったことです。
私の子ども時代は猛暑と言えども、子どもは外で走り回って遊んでいました。今は、夏休みの昼間は、公園に誰一人いないのです。いないということは、クーラーの効いた屋内でゲームをしていると思います。実際、最近の猛暑は本当に暑く、外で過ごすのが危険なレベルですから、ゲームしかやることがない感覚なのです。こういうところにも、大人である自分の過去の経験で、子どもに干渉するのはよくないという教訓がくみ取れます。つくづく、子どもの人生と親の人生は別のもの、と感じますし、今の私は以前のような自分の経験から勝手に子どもが決めるべきことを決めてしまったり、過干渉にならないように特に気を付けています。
さらにスイッチには、オンライン対戦といって各家庭にいながらにして友達と対戦する機能があります。大人の知らないところで、日々オンライン対戦が行われています。その際に私が面白いと感じるのは、子ども同士の会話は携帯電話でおこなわれている点です。LINEのグループ通話を使用して、対戦している子ども同士が通話しっぱなしの状態で、お互いのリアクションや簡単な会話がオンライン上でくり広げられています。時代は変わったものです。
・買ったらすぐ、つながりが復活した。
今のゲームは我々の時代のものと異なり、一つのゲームソフトが遊ばれるスパンがものすごく長く、私の子ども時代によくあった「このゲームには飽きたから、次のソフトが欲しい。」と言われることが、我が子の場合はほとんどありませんでした。
我が子は、ほぼ「スマブラ」(「任天堂スマッシュブラザーズ」の略)1択です。それは、プレイステーションでも同じ状態で、ずっと「フォートナイト」で遊んでいます。なぜ今の子どもは、ゲームのソフトをあまり変えることがないのか、この本を読まれている大人の方は分かりますでしょうか。
それは特定のゲームソフトが、いつでも友だちと出会えるプラットフォームになっているからです。
だからより多くの友だちが遊んでいるゲームをプレイする方が、より多くの友だちに会えて楽しいわけです。そして、ゲームをする友だちグループへの所属感が味わえることもあります。友だちがいるから自分もやるという循環で、特定のゲームへプレイ人口が集中しています。
以前、我が子が不登校になった当初から、家が遠い友だちとはほとんど連絡が取れなくなっていました。やることと言えば、テレビでユーチューブ動画を観るだけでした。
しかし、スイッチ、プレイステーション、携帯電話を購入したとたんに、我が子と友だちとのつながりは、またたくまに再開されていきました。プレイステーションやスイッチ、携帯のLINEなどのオンライン上で多くの友人たちと再会ができ、メッセージ、通話によるコミュニケーションも始まりました。家にいながらにして、ともに楽しく遊ぶ時間を共有できるようになったのです。
さきほど述べたように、今までこれらの機械を買ってこなかった私ですが、やはり購入してよかったのではないかと思いました。
家から出にくかったり、学校の友だちに会えない状態の子どもにとって、オンライン上であれ、このようなつながりが持てることは、やはり大変大きなメリットがありました。
たかがゲームと言えども、友だちと一緒にゲームで遊ぼうと思えば、友だちを誘ったり、誘われたりという付き合いが発生します。不登校でずっと家にいる子どもは、社交性が発達しにくいということを指摘されたりしますが、我が子の友だちとの会話からをちらほら聞いていると、オンライン上でも人間付き合いを学ぶことは少なからず可能だという気がします。
先ほどの誘い誘われもそうですが、プレイ中でもゲームを友だちと長く続けようと思えば、相手を一方的にやっつけてしまっては相手もやる気をなくし、すぐにゲームをやめてしまいます。ときには手加減したり、会話の中で相手の気持ちを探ったりということも必要になりますし、これらのことは日常的に行われていました。
その後、我が子はゲームが終われば、主にLINEを使用してグループ通話をしたり、グループメッセージを読んだりしています。
昔と比べ、今の子どもたちは、学校外での大人数での会話の情報量が非常に多くなっています。だから、もし私が今まで通り携帯電話などの購入を禁止して、オンライン上での会話の機会を全く奪ってしまっていたら、我が子が不登校にならずにずっと学校に通えていたとしても、友だちとの会話に混ざってはいけなかっただろうなと感慨深く思うわけです。
そして、常に子ども同士がオンラインでつながっているこの状況が、現代の子ども社会の中で、もはやデフォルトになっています。そのような今の子どもの世界を、大人である親が良いも悪いもどうとらえようと、もはや避けられないと思います。避ける方がデメリットは大きくなるのです。
それはもはやインフラのようであり、買ってから2年以上たった今では、そこから長年の付き合いによる友情が生まれています。そして、オンラインでよく遊ぶ友だちと、外に出かけることもよくありますし、どこに出かけるかの相談もオンラインで行われていました。
次回は、ゲームの制限機能についてです。